写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

世 襲

2008年09月30日 | 生活・ニュース
 麻生内閣丸が濃霧の中を出帆した。出帆前、まだ岸壁に係留している時に、早くも乗組員の一人が下船してしまった。前途は多難、見通しはあまり明るくなさそうだ。

 麻生総理はご存じの通りあの吉田総理の孫である。現在の国会議員の内約半数が2世・3世議員だという。

 新内閣の大臣18人中11人もが、国会議員の2世3世議員、県会議員を含めば13人もが世襲議員だという。

 私利私欲に走らなかった印象の強い元総理小泉さんにおいてすら引退挨拶の時、「親バカとお思いでしょうが…」とか言って次男坊を後継者として紹介した。

 かくして日本の国会は近い将来、総理をはじめ2世3世の議員ばかりとなり、北朝鮮の最高指導者が世襲だなんて笑ってはおれない状況になりそうだ。

 選挙というものは地盤・看板・かばんと言って、人脈・知名度・金がものをいうと聞く。

 そんなものに気を取られ、その土地で生まれた訳でも育った訳でもない世襲のおぼっちゃまに投票する選挙民も、そろそろ目を覚まさなければいけない。

 そんなおぼっちゃまに、1円でも安い品を求めて、スーパーを駆け巡る国民の目線とやらが理解できるとは到底思えない。

 選ぶ判断基準はいたって簡単。世襲が悪いのではなく実力のある人を選べばいいだけである。政治が悪い、世襲が多いと嘆く前に、選挙民がほんの少し賢くなれば済む話である。
  (写真は、きっちりと世襲している「花水木」)

市民球場

2008年09月29日 | スポーツ・山登り・釣り・遊び
 昨夜(9月28日)の対ヤクルト戦をもって、広島市民球場での最後の公式戦がすべて終わり、半世紀を超える球場の歴史に幕が降りた。

 今朝の中国新聞の第1面トップは「市民球場ありがとう」とある。今年のカープは目下3位で、クライマックスシリーズへ進出できるかどうかで中日と死闘を続けている。

 おかげで連日観客は多く、昨夜の試合では今季最高の30,600人だったという。市民球場は最後の最後になって赤く熱く燃えたぎっている。

 記事の真中に、超満員の市民球場を空から写した写真が載っていた。幅の広い赤い輪の中に土と緑のグラウンドがある。

 球場に行き観戦している時、数字では理解していたが眼で認識できていなかったことが、この写真を見てはっきりと認識できた。

 ホームベースから両翼までと中堅までの距離の違いである。市民球場でのそれぞれは91mと115mである。

 打者が同じ距離のフライを上げても、両翼に打てばホームランになるものが、中堅に打った時には平凡なフライでアウトとなる。

 なぜこんな理不尽な形になっているのか、以前から疑問に感じていた。調べてみると、どうも難しい理屈はないらしい。

 元々、野球は空き地の四角い形状に合わせて行われていて、ダイヤモンドが収まりが良いように一つの角に配置すると、結果として、センターが対角線上になるため、自然、両翼より長くなったという。

 両翼に打っていたら大ホームランだったものを、中堅に打ち上げたばかりに捕られた大きなフライを恨んだ打者は、この球場の形をどう思ってきたのだろうか。

 いま新しく作られている球場は、両翼が100m、中堅が122mで、市民球場より一回り広くなるものの、中堅の方が広いという伝統的な形は変わらない。

 カープは来年、新しい酒を新しい革袋に入れるように、新しい野球を新しい球場で見せてくれることだろう。

 時代は変わる。何もなかった時代を共に過ごしてきた郷愁にも似た気持ちで、今、私も市民球場に「ありがとう」を言う。
  (写真は、中国新聞掲載の「最後の市民球場」;私がコンパスで両翼までの同心円を書き加えてみました)

リモートサポート

2008年09月27日 | パソコン
 新しいパソコンに、デジカメで写した写真を取り込む作業をしていた。前日までは何の問題もなく今まで通り取り込むことができていた。

 その日、いつものように取り込んだが、写真が表示されず四角い枠が並んでいるだけであった。

 いろいろやってみるが解決できない。何度も挑戦してみたが画像が出てこない。思い余ってメーカーである富士通のサポートセンターに電話をした。

 最近のメーカーのサポートシステムは進歩している。フリーダイアルすれば、少し待ち時間はかかるものの、親切丁寧に何でも相談に乗ってくれる。

 10分待ってやっとつながった。若い女性の声で応答してくれる。トラブルの内容を説明すると、富士通のホームページにある「リモートサポート」という項目をクリックするよう指示があった。

 リモートサポートとは、メーカーのサポート担当者がインターネットを介して、相談者のパソコン画面を遠隔で同時に見ながら、電話で操作案内をする。

 相談者は自分の画面に、操作箇所を直接表示してもらいながら教えてもらえるので、難しいパソコン用語がわからなくても、安心して利用できるものである。

 指示されたとおりにクリックしていくと、突然私のパソコンの画面に赤い矢印が出てきた。電話からの声を聞きながら赤い矢印が示すとおりにクリックすると、いつの間にか画像が出るようになっていた。

 まるでパソコンの先生が、背後から赤い指示棒を持って教えてくれているようなものである。

 これはいい。「ありがとうございました」と、何度もお礼を言って電話を切った。今時のパソコンには、こんな裏技が組み込まれている。

 これからは大した問題はなくてもサポートセンターに電話を入れて、何か指導を受けてみたくなるような、多分美人の優しい先生の教え方であった。
(写真は、チョー便利なパソコン「サポートシステム」)

夏草や

2008年09月26日 | 季節・自然・植物
 暑い夏には、外での仕事は何もできない。その間に草茫々となる裏庭に、今年は雑草対策の黒いシートを敷きつめた。

 おかげで庭に草は生えることはなかったが、見た感じ味気なさは残る。菜園にはこのシートを敷くわけにはいかない。

 植えておいたキュウリ・ゴーヤ・ナス・ピーマン・トマトなどの夏野菜は、雑草と厳しい生存競争をしながら育ってくれた。

 その夏野菜も、彼岸を過ぎればそろそろ終わりを告げてくる。これを頂いたおかげで夏を元気に過ごすこともできたと感謝している。

 お礼を言おうと思い菜園に出てみるが、雑草に覆われて肝心の野菜は見分けがつかない。寿命を終えようとする野菜に比べて、雑草の勢いは未だ盛んだ。

 あきれた顔で見ている背中から「お父さん、草を抜いて下さいよ。もらった白菜の苗を植えたいから」と、指示が飛ぶ。

 長靴を履き軍手をして、雑草と枯れかかった夏野菜に挑んだ。大きな束にして抜こうとするが、これは手ごわい。さながら運動会の綱引きだ。

 「よいしょ」と、誰に言うともなく気合いを入れる。疲れてその言葉すら出なくなった頃、ようやく短い2列の畝の黒い土が見えるようになった。

 「夏草や つわものどもが 夢の跡」と詠われているが、我が家の雑草の中ではどんな戦いがあったのだろう。

 毎夜聞こえている虫の声。その主たちは今日から一体どこへ引っ越しか。指示を受けた仕事の3割が、大汗をかきながら無事終了した。あとは明日にしよう。

 今は秋の七草が咲き揃う頃、七草も見た目には雑草。雑草とひとくくりにしては風情がなさすぎる。草を抜き終わると、やがて寒露。

 部屋の中でじっとしていても季節は巡る。毎年同じことが目の前を通り過ぎていく。昨年に比べて、雑草を引き抜く力だけが衰えている。 
  (写真は、1日目の菜園の収穫「夏草の山」)

またか~

2008年09月25日 | エッセイ・本・映画・音楽・絵画
 準備を進めていた自費出版書「散歩嫌いなハートリー」が出来上がったと、頼んでいた印刷会社から連絡があった。

 私にとって3冊目のエッセイ集である。急ぎ行ってみると、今まで出したものと全く同じ装丁だが、題名が異なるものが期待通りに製本されている。

 開いてみると、前2冊と違って文字が大きく読みやすい。文字の大きさを9ポイントから10ポイントに上げた効果が十分に出ている。

 2007年の1年間、ブログに書き留めてきた228編の短いエッセイを350ページの本にしたものである。

 ブログを開いてみれば同じ内容のものを読むことはできるが、本の形にしてみると全体が一覧できると共に、読みたいところを見つけることが簡単だ。

 すべてを自分が書いていながら、そばに置いておくと読み返すことも時々ある。その都度、内容的にも文章的にも反省すべきことが出てきて勉強になる。

 さてこの本、これまでと同じように岩国市室の木町にある「フタバ図書」にお願いして置いてもらうことになっている。

 いつも有名作家の書いた本の隣に並べてもらうことが恥ずかしくもうれしい。初恋の相手との初デートのようだ。毎度面映ゆい気はするが、ここは厚かましくどんと行くしかない。

 発売日は10月1日、大安の日と決まった。秋の夜長、「読んであげてもいいよ」と言う奇特な方がおられましたら、フタバ図書までご足労ください。

 積み重ねてある「散歩嫌いなハートリー」のそばには、手製の宣伝カードを立てていますので、これを目当てに手に取ってみてください。

 パーカー51の万年筆で書いた手製の栞を今回も1枚ずつ挟めていますので、どうぞご活用ください。

 「また出したのか~」。虫の声の合間からそんな声も聞こえます。勝手ですが、ここはじっと我慢をお願いいたします。
(写真は、出来上がり発売を待つ「散歩嫌いなハートリー」)