今日10月24日は、暦の上で霜が降り始める「霜降」にあたり、害虫を駆除するため松に「菰巻き」(こもまき)をする作業が、各地の公園でおこなわれた。
菰巻きは、江戸時代から大名庭園で行われてきたとされる害虫駆除法で、松の木を食い荒らすマツカレハの幼虫を除去する方法のひとつである。マツカレハの幼虫は冬になると地上に降り、枯れ葉の中などで越冬する習性を持つ。この季節、マツの幹の地上2mほどの高さに、菰を巻きつけておくと、幹づたいに下りてきた幼虫が、越冬のために菰に潜りこむ。
春先に、弧の中で越冬したマツカレハの幼虫を菰ともども焼却し、マツカレハの駆除をする。ところが、最近になって、この「菰巻き」を中止するところが多くなってきたという。その理由は、マツカレハの天敵となるヤニサシガメなども越冬場所が共通していることが多く、共々に燃やされてしまうことになるからだという。
兵庫県立大学環境人間学部の新穂千賀子らが2002年から5年間かけて姫路城で行った調査がある。これによれば菰巻きに捕まったマツカレハはわずかで、対して害虫の天敵となるクモやヤニサシガメが大多数を占め、害虫駆除の効果はほとんど無いことが分かった。
むしろ逆効果であることを証明したので、姫路城では2015年から中止したという。皇居外苑や京都御苑では、新穂らによる研究の20年以上前から、同じ理由で菰巻きは行われていない。
毎年この季節になると、テレビで「菰巻き」の作業を、晩秋の風物詩として放映するのを見て「ああ、もう直ぐ寒い冬がやってくるのだなあ」と思っていた。しかし、菰を巻いて害虫を駆除するという根拠が薄弱となり、昔ながらの晩秋の風物詩も科学的な理屈には勝てず、これからは見られなくなっていくのを寂しい思いで見ている。