写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

大工仕事

2019年09月27日 | 木工・細工・DIY

 20年前に大工さんに頼んで、居間の南側に広さが10畳のウッドデッキを作ってもらっていた。床板の材質はレッドシダーという耐食性のある2*6材である。なにぶん雨ざらしなので腐食を避けることは難しく、ここ数年は部分的に補修するなどしてしのいでいた。

 ところが先日、床板を支えている9cmの角材である大引きが数か所腐食していて、床の上を歩くと、ふわふわする箇所が見つかった。ウッドデッキの表面だけを見れば、特段傷んでいるようには見えないが、その裏側では腐食が進行していることが分かった。

 床下にもぐって点検した結果、このまま放置していては危険であると判断し、20年ぶりに作り直すことにした。幸い、外周の柱は外気に近いせいか健在で、そのまま使えそうである。

 作り直すといっても、DIYでやることにした。全ての床板を取り外すと、長さが5mある大引きが現れた。5本中、4本は取り替えないといけないようである。その足でホームセンターに行き、木材売り場を見て回った。防虫防腐剤を浸み込ませた部材が販売されている。少し割高になるがこれを使って作ることにした。

 床板を取り外そうとするが、ネジ山がつぶれているものが多く、取り外すだけで丸2日かかった。今日からは大引きの撤去であるが、再利用できる部分を残しながらの切断作業が、少し難しいかもしれない。それを終えると木材を買いに行き、本格的な大工工事が始まる。

 いつまでに完成させなければいけないという時間の制約はない。晴れた日が1週間ばかりあれば完成にこぎつけることが出来ると見積もっている。ちょっとやっては休憩だ。奥さんに「お父さんの仕事は休憩が多いわね」と言われながらも、少しずつ前に進んでいる。5年前にやったフエンス設置工事に次ぐ、我が人生で2番目に大きなDIYが始まった。


キャンプの気分

2019年09月18日 | 生活・ニュース

 納戸である物を探しているとき、何やら意味ありげな段ボール箱を見つけた。「何が入っているのだろう」と思いながら、探し物はそっちのけで、その段ボール箱を開けてみた。

 お宝とは言えないが、10年前に買い、いつかやってみようと思っていた品物の一式が入っていた。キャンプやピクニックをしたとき、野外でコーヒーを沸かして飲むための道具である。鍋やヤカンのセットと一緒に、携帯用の小型のカセットガスコンロが出てきた。

 懐かしくなり早速庭に出て、コーヒーを沸かしてみることにした。まずは折り畳み式のガスコンロの五徳と台座の足を引き延ばし、カセットガスボンベを接続する。

 扁平なヤカンを乗せてガスの栓を少し開けたところで、圧電点火装置を押すと「カチッ」という小気味よい音を出してバーナーから青い炎が出始める。ものの数分もすると、やかんの注ぎ口から勢いよく蒸気が吹き始める。

 火の上にやかんを置くと湯が沸くというごく当たり前のことが、屋外でキャンプ用品を使ってやってみると、なんだか急に楽しくなってきた。挽きたてのコーヒーをドリップして奥さんと飲んでみた。

 家の中で、コーヒーメーカーで淹れたコーヒーを飲むのとは一味違っておいしく感じるのは、初秋の爽やかな風のせいか。そういえば、庭であれだけ猛々しくはびこっていた雑草も、気がつかぬ間に真夏の威力は見られなくなっている。今年初めて収穫が期待できると、奥さんこだわりのみかんの実は、お尻がうっすらと黄色に変わり始めている。

 山から秋の便りが届くころ、このキャンプセットを持ち出して、今度は山の名水でおいしいコーヒーを沸かして飲んでみたいと思っている。いや待てよ、そんなことより、探し物はなんだったっけ? 最近はこんなことが多くなってきたぞ。


父との遭遇

2019年09月16日 | 木工・細工・DIY

 ガレージミラーが見えにくくなっているので取り替えることにした。買ってきたものを既設の金具に取り付けようとするが、構造が少し違うため改造しなければならない。

 買ってきた厚さが2mmある金具に、直径6mmのボルトを通すための穴を開ける必要がある。私が持っているドリルビットでは、一番太いものでも5mmのものしか持っていない。さてどうしたものかと思っているとき、ふとあることを思い出した。

 父が使っていた道具箱の中に、7mmのドリルビットがあった。父が使っていたころから少なくとも50年間、使われることなく工具箱の中で眠っていたものを、納屋から取り出してみた。

 光ったところはなく、全体的に錆びてはいるが、指先で歯に触ってみると手応えはある。「よし、これを使ってみよう」と思い、電動ドリルに取り付けて挑戦してみた。少し時間はかかったものの、何事もなく無事に穴を開けることが出来た。

 何よりも驚いたことは、古くて錆びた50年前のドリルビットで、鉄の板に穴を開けることが出来たことである。ドリルビットの材質は、高速度鋼(high-speed steel)というもので「ハイス」とも呼ばれる。基本的には今も昔も変わらぬ材質であろう。

 おかげで、ガレージミラーを取り付けることが出来たが、「そんな古いものを使って、よく穴が開いたなあ」と、父が後ろの方で笑いながら話しかけてくれたように感じた。錆びて使い物になりそうもない工具が、どっこい良い仕事をしてくれた。

 私も「もう年ですから」なんて後ろ向きなことを言うことは止めよう。「よし、やってみましょう」、これで行けば、古い人間だけれど、まだまだ使い道はありそうだ。

  


丸い月

2019年09月14日 | 季節・自然・植物

 昨夜(13日)、一縷の望みを抱きながら広島カープ対巨人戦をテレビで見ていた。カープは先発した九里が本調子ではないのに対して、巨人の先発・山口は、バッタバッタと三振を取っていき、その差は歴然としている。4回を終えて3対1と巨人がリードしていた。

 今シーズンから巨人に移籍した丸選手は相変わらず調子がよく、打率は3割を超え、ホームランも26本打ち、巨人優勝に向かっての立役者の1人として大活躍をしている。ホームランを打った時など、巨人のチームメイトと笑顔でハイタッチをしている姿を見ると、なぜか切なくなってくる。

 まるで、付き合っていた彼女が自分を振って、新しい恋人と結婚して幸せいっぱいの生活をしているのを垣間見るような気分とは、こんな気持ちのことかと思うほどである。人は悲しくなった時や、せつなくなった時には、何故か月や星を観たくなる。

 時まさしく13日、「中秋の名月」であった。名月を写真に撮ってみたくなった。今や巨人に行ってしまった丸は、呼べど叫べど帰っては来ない。丸は丸でも、丸い中秋の名月を手中に収めてみたい気持ちになった。試合が5対1になり、カープの敗色が濃くなった夜の9時、雲のひとかけらもない東南の空に、こうこうと月が照っている。

 デジカメのダイアルをautoからmanualにし、シャッタースピードを1/125に、絞りをf/8に、isoは400にし、望遠をいっぱいに効かせて撮影した。望遠を効かすと、ほんの少しの手振れで、月は画面からすぐに外れて遠くへ消えてしまう。まるで、逃げ回る丸選手を追っかけているかのように感じる。

 フェンスの上にデジカメを置いて手で抑え込み、息を止めてやっと納得のいく1枚を撮ることが出来た。満月のせいか、クレーターが半月の時ほどははっきりと映っていないが、まあ良しとしよう。最近は、丸いものを見ると、せつなくなってくる。秋だからでしょうかねえ。今夜は丸い月を見て大きく一声吠えてみよう。「逃げた女は追わないぞっ!」と。


シルバーサービス

2019年09月13日 | 生活・ニュース

 ここ数年通っている町の理髪店へ、10時前に出かけた。開店間もない時間というのに、すでに7人ばかりが待っている。「2時間ばかり待ってもらうようになりますが」といわれ、他の店に行ってみることにした。

 以前何度か行ったことのある駅前のチェーン店に向かった。席の数も多く、きれいな店であるが、散髪をしてもらっている客は3人だけで、待っている客はいない。入るとすぐに「どうぞこの席に」と案内されるや散髪が始まった。

「髪は洗いますか?」といわれ「お願いします」と答えると、まずは髪を切り始める。それが終わると別の店員が顔を剃ってくれる。そのあと「あちらの方へ」と言われて席を代わると、また別の店員が髪を洗ってくれる。これらの仕事すべてが分業で手際よい。

 髪を切ってもらうとき、鏡の前に置いてある小さな紙のメッセージを読んだ。「シルバーサービス 〇〇歳以上の方200円引き」と書いてあるが、めがねをはずしているので〇〇という数字が60なのか80なのか読み取れない。途中で聞くわけにもいかずに散髪は全て終わり、支払いをする段になった。

 「1728円頂きます」と言われて支払ったが、シルバーサービスを受けたのかどうかを問わないまま家に帰った。ネットでこのチェーン店の料金を調べてみた。散髪と顔剃りで1500円、洗髪すればプラス300円と書いてある。

 そうすると私は1800円であるが、シルバーサービスの200円引きで1600円。それに消費税が8%の128円上乗せされて1728円であったことがやっと理解できた。どうやらシルバーサービスは60歳以上に適用されるようである。

 常識で考えてもシルバーといえば60以上の人のことで、80以上の人といえば、散髪に行く必要のない人が多いので、そんな人へのサービスなんてないに違いない。あるとすれば「入れ歯割引き」くらいだろうか。久しぶりにシルバーサービスという恩恵を受けた上、肩までもんでもらい、いい気分になった一日であった。