のらやま生活向上委員会 suginofarm

自然と時間を、都市と生命を、地域と環境を、家族と生きがいを分かち合うために、農業を楽しめる農家になりたいと考えています

この形 わが家の印 コヤのカギ

2010年08月06日 | わが家の時時
対馬ツアー報告、第5段。

一泊目にお世話になったKさんは米と原木シイタケの生産農家。
こちらが屋敷の前景。
母屋のうらにシイタケの乾燥施設があります。

            

正面が母屋。前庭に面して菜園があります。
害獣に備えてご多分にもれずネットで野菜も畑も囲まれています。
右側にみえる小さな建物がコヤと呼ばれる納屋。
普段使わない家財道具を入れたり米蔵にもなっているようです。

             

視点をかえるとこんなふう。
高床式で、赤い瓦屋根がKさんのコヤ。
右側の黒い瓦屋根はお隣のイエのコヤ。
イエの大事なものを入れておくコヤを
お隣同士、なぜ並べているのだろうと、集落の中を歩いてみると…

             

             

あります、あります。辻にめんして、通りに面して並んでいます。

             

こちらは舟志という集落のコヤ群。小さな小川に沿って並んでいました。

             

こちらは鰐浦という集落のコヤ群。
漁港に面して集落中のコヤが集められているふうでした。

たとえば、盗難などは心配ないのだろうかと聞いたところ、
皆顔見知りだし、外の人間はすぐにわかる。
それぞれのコヤのカギの形が違っていて、
そのカギの継承がイエの主の証明だとか(タイトル写真)。

対馬では米を貯蔵するのは籾付きが常識とか。

             

モミガラ付きなら米が呼吸しているので湿気の問題がないということなのか、
生きている米だからいつでも種もみになるという飢饉対策なのか、
それとも一度に大量に持ち出せないという海賊対策なのか、
いずれにせよ、本土?では「今擦り米」と呼ばれて
たいへん評価される米のモミ付き貯蔵。
対馬のお米は皆「今擦り米」。
すでに島民の皆さんは付加価値のついたお米を食べています。

            

Kさんのもう一つの生業が原木シイタケ栽培。
シイタケ栽培の発祥の地が対馬だとか。
現在でも気候条件等がシイタケ栽培にあっていて本土の市場でも高い評価といいます。
こちらもヤマネコブランド。

            

山猫の米は売りたし米はなし

2010年08月05日 | わが家の時時
今回の対馬ツアー、本来の目的は
ツシマヤマネコと共生する地域起こしの事業モニター。
そこで、第一晩目は「佐護ヤマネコ稲作研究会」メンバーとの意見交換会。

             

ヤマネコの餌は野ネズミ等の小動物。
それを確保するためには稲作が維持されていることが大事。
ならば環境にやさしい稲作を実現して
地域の活性化とヤマネコの保護を目指そうという研究会。

             

対馬随一の米どころ、北西部の佐護地区の米農家を中心に
地区内にある野生生物保護センターに出入りする若者たちが
有機米づくりに取り組み始めました。

             

いま流行りの佐渡のトキ米や豊岡のコウノトリ米のように
付加価値をつけて稲作経営を安定させたいというもくろみですが、
話を聞いて行くうちにそれほど単純な話でもないようで…

現状は島内の米の自給率は低く、
お世話になった農家の生産した米はすべて島内の消費者へ直接届けているといいます。
島民が付加価値をつけた高価なお米を購入する余裕はなく、
一方で、島外向けに志ある消費者に送る米の余裕もない。
付加価値のついた米を島外に送り出し、
安価な米を島内に持ち込むというのは本末転倒ではないか。
とはいえ、いまのままでは稲作経営も厳しいというのです。

なにかアドバイスをと言われても困りましたが、米を買ってもらうことではなく
そういう米をつくっているところを訪ねてもらうことで地域経済を安定させるために、
とにかく情報発信してみたらどうかと。

観光客を呼び込むことは、当然、彼らも気付いているポイントです。
お世話になったKさん宅でも料理の得意な奥さんが農家民宿を始めたいとかで、
われわれが農家民宿のモニターだったわけです。
晩御飯の食卓は地場のお魚料理のフルコース。
見たこともない聞いたこともない小骨の多い魚でしたが、
煮つけはたいへん美味しいものでした。
対馬では普通の魚ということ。
やはり現地にいって食べるから美味しいのでしょうねえ。
でもいつもあんなに大判振舞していたら民宿でも赤字出しちゃいますよ。


影黒くうなぎも登る大暑かな

2010年08月04日 | わが家の時時
「熱中症にご注意ください」
と、連日、テレビ、ラジオからアナウンスされています。
雨は降りません。南風も連日吹いています。

ホームセンターの農業資材の一角に
ちょっとした人だかりができていました。
「テレビで紹介されました」と看板がかかっています。
寒冷紗という作物にあたる日射量を調整する網目のシートです。

テレビではヨシズよりも安価で、
カーテンのように開け閉めが可能と紹介されたようです。
わが家でもさっそく応用してみました。
たしかに、斜めに張った遮光率90%のシートは
ヨシズよりも木陰に近い涼しさを提供してくれる?
これも慣れてしまえばそれほどでもないのかもしれませんが。

            

こんな太陽の恵みを受けて
稲も1週間ぐらい収穫が早まるかもと言われ始めました。
水温が上がらないよう用水は連日かけ流し状態ですが、
日中はお湯のようです。

            

勢いのないナシの木の実は小さいまま日焼けしてきました。
糖度は上がっているようです。
幸水でも糖度14,5度はありそうです。
この週末から収穫が始まり、旧盆中から最盛期がはじまる勢いですが、
このまま暑さが続くと最盛期が遅れる可能性もあります。
なにしろナシは秋の果物ですから、涼しさを感じてから熟すものです。

ヤマネコの山はイノシシに蹴散らされ

2010年08月03日 | わが家の時時
対馬ツアー報告第三段。

対馬は昔大陸とつながっていたことを示す
貴重な動植物が生息・生育していたり、
渡り鳥の中継基地として珍しい野鳥を観察できるようです。
中でも、ツシマヤマネコは種の保存法に基づく
「国内希少野生動植物種」として指定され、
環境省・長崎県がその保護・普及啓発活動を行っています。

ツシマヤマネコは現在、100頭前後の生息数と推定され、
南部の下島で生息する痕跡は確認されなくなっているといいます。
今回のツアーの中では、
野生のヤマネコが見られるかもという夜間探索イベントも企画されましたが、
残念ながら実現しませんでした。

              

胴長短足、尾が太くて長い、耳の先が丸い、額に縦じまがある
という特徴があるといいますが、イエネコとの見分けが難しく、
耳の後ろに白い斑点があるというのが最大の特徴のようです。
対馬北部にある対馬野生生物保護センターでは
繁殖保護対象の生きたヤマネコをガラス越しから見ることができました。

             

これはたまたま見つけたツシマテンの死がい。
すわ!ヤマネコとドキドキしたのですが、
こちらは珍しくはないのだそうです。

             

現在の対馬でもっとも頭を痛めているのは、このイノシシ。
これもたまたま早朝、里に近い山の中の道路際で見つけました。
人の姿をみても逃げるわけでもなく、
一度は向かってくるようなしぐさも見られました。
車中でしたので安心してカメラを向けましたが、
歩いていて出くわしたなら怖かったかもしれません。

資格を得てイノシシを狩猟すると
一匹いくらという形で買い取ってもらえるのですが、
イノシシの繁殖力にはとてもかなわないようです。
イノシシの肉を現地で食べさせてもらい、
美味しいものでしたのでお土産にしました。

              

そしてこれがむらの畑。
最北端、鰐浦集落周辺の自家用菜園のようでした。
四方も上空も網で覆われています。
野生生物と人間の関係が常識と真逆です。
自然の最前線で暮らす苦労が思い知らされます。

離島であることから
島内にはタヌキ・キツネ・ウサギなどは見られないのですが、
実はイノシシもほんの20年ぐらい前まではいなかったといいます。
それは藩政時代に全ての島民が参加して
島の端から囲いを作りながらイノシシを駆除し、
ついには絶滅させたという歴史があったようです。

それが、誰かが狩猟用にでも持ち込んだのではといわれ、
天敵もいないためか一気に繁殖し、このありさま。
昔の人の適切な判断・行動と現代人の自分勝手な行動の違いを
まざまざと見せつけられたようです。

感動でき稼げてカッコイイ脳業

2010年08月02日 | 農のあれこれ
3K農業といえば「きつい・汚い・危険」が通り相場。
これからの農業ならぬ「脳業」は
「感動できる・稼げる・カッコイイ」の3Kなんだそうです。

耕作放棄地を活用して45ha以上に規模拡大、
小松菜の年間作付面積が120haの生産規模は全国一、
それを支えるスタッフは60代以上が中心の160人のパート・アルバイト、
さらに非農家出身の新規就農希望者を社員に採用して
明日の農業経営者として育成したい。

そんな農業生産法人「ナガホリ」に
市内の農業関係プロジェクトチームが視察するというので
同行させてもらいました。
当日はNHKの取材班も入っていて、
ヒアリングを受けた高齢のパートスタッフの皆さんは少々緊張気味。

それでも
「お休みは自由。好きな時間にきて、好きな時間に帰れる。
それでいて孫にお小遣いを上げられるような仕事をさせてもらっている」
と、現状を満足されている様子。

大面積の畑で大人数の収穫作業というと作業スケジュール調整が大変では
と社長のNさんに伺うと、すべて社員に管理を任せているとのこと。
経営者としては、パートスタッフの能率給の管理の方がたいへんといいます。

時給は作業能率と質から偏差値をだして決定。
新入りや年配者だから時給が低いということはなく、
しかも現金払い。
これが働きがいにつながっているのではと話していました。


場所は埼玉県上尾市。
首都圏のベッドタウンで大規模生産農業を実現する利点を
Nさんは3点上げています。
①定年退職者を雇うことにより労賃を安くできる
②農地、特に耕作放棄地が多く、地代も安くできる
③大消費地の市場への運搬費を安くできる

同じことを群馬県でやろうとすれば
運搬費は余計にかかるし、農地も余裕がないので地代は高くなる。
従業員に外国人研修生を雇おうものなら
現状の倍以上の人件費がかかる…

             

こんな合理的経営である一方で、
小松菜収穫専用の鎌を県内の鍛冶屋に製作させ、
各自、「マイ鎌」を持たせています。
柄の部分の色違いなどで判断しているようです。

             

上の写真はずらりと並んでいる鎌の研ぐ作業台。
作業のしやすさを考えて、社長自らが材料を購入するところから
自作したといいます。
もしかしたら、こういう心遣いが事業成功の秘訣かもしれません。

高齢な従業員のほとんどは非農家。
だから単純な農作業も興味持って取り組んでいるとか。
しかし、これからは後継者のいない農家が自分の農地を提供し、
労働力としても、体が動けなくなるまでの間、
従業員として働くなんていう事態も起こりうるのでは。

楽あればしっぺ返しもある生の理

2010年08月01日 | 夏の梨畑
収穫前のこの時期、忙しくならないうちにと
子どもが小さい頃はよく海へ連れて行ったりしていました。

だいたいそうことをすると、
出荷の準備が遅れたり、園内の管理に目が届かなかったり
よくないこと、つまりはしっぺ返しがありました。
ここしばらくはそういう家族サービスが必要なくなったので
粛々と農作業にいそしんでいました。

ところが今年は、ここ数日のブログで紹介しているように
先週末、3日ほど家を留守にしておりました。
後継者君もいるので大丈夫だろうと。

でもやはり、しっぺ返しがありました。
ハダニの出現です。
猛暑が続いて乾燥していましたから危ないなとは感じていました。

たった三日で多発ゲリラ状態に。
致し方ありません。殺ダニ剤を散布することにします。

              

ハダニというのは葉について葉を枯らしてしまいます。
主に葉の裏側につくのは雨・水に弱いからです。
暑くても連日、夕立でもあるとそんなに広がらないはずですが、
今年はなかなか雨も降りません。

              

小さなムシで、視力の弱くなると確認しにくいのですが、
指先で葉の表面を擦ると、
ハダニがつぶされてハダニの体液が線を描きますので、
薬で退治できたかどうかもそれで確認しています。