のらやま生活向上委員会 suginofarm

自然と時間を、都市と生命を、地域と環境を、家族と生きがいを分かち合うために、農業を楽しめる農家になりたいと考えています

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2006年02月19日 | 農のあれこれ
「共存のための文明論」という宣伝コピーに釣られて『ジャンケン文明論』(李御寧、新潮新書111、05.4)を手に取りました。

西洋型の近代文明は二項対立の「コイン投げ文明」であって衝突を生み、弱肉強食、先制攻撃優勢の社会を作ってきたが、東洋には誰も勝たない誰も負けない、相互依存、相互牽制の「三すくみ」モデルが生きている。自然には絶対的に強い支配者はいない。互いに持ちつ持たれつの共生関係で結ばれて、相補と調和を保っているという自然観がある。いわば「ジャンケン文明」。春は夏に、夏は秋に、秋は冬に、冬は春に負けて季節はめぐる。陰と陽は対立を超えて補完しあう。そこには勝ちも負けもない。

たとえば、二宮金次郎の「勤労」「分度」「推譲」の報徳仕法。「勤労」とは金を儲けて豊かになろうとする欲望で、「天道」とは対をなしている人道。「分度」とは欲望の限界を知り、コントロールする天道と人道の融合。「推譲」は蓄えた富の余分を世のためにつくし、他とわけあうこと。これらは互いに相補関係をなし、バランスをとりながら循環する。富の欲望は「分度」によって蓄積からシェアにかわっていく。万物は個ではなく、相互関係によって意味を持つ。差異(相違)は葛藤対立ではなく、変化と融合を通じて「生々発展」する物になる。それが土や農作物や人の中にある「徳」‥。実際、彼の実践は多くの村や人々を豊かにした。

さらに著者は、島国で縮み志向の日本はグー、大陸と島の両意性を持つ韓半島はチョキ、地理的広がりと古来からの寛容の徳から中国をパーと読み替えて、3国がイデオロギーを超えて共存する壮大なジャンケン関係の構築を提示。そのためには、他者に対して常に弱さがあることが大切という、ジャンケンの発想が不可欠といいます。


この新書の本文は次から次へと著者の博識が展開され理解しにくいところもありますが、常に三すくみ状態の農業の現場に身を置いているせいか、なんとなく納得させられてしまいました。

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