のらやま生活向上委員会 suginofarm

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水底を見てきた顔の小鴨かな(丈草)

2008年06月03日 | 農のあれこれ
6月1日は佐倉市内で試みている冬季湛水田を見てきました。

普通の田んぼは秋から冬にかけて田んぼを乾燥させ、
何度か耕起することにより管理しています。
冬季湛水田とは収穫後から再び水を張り、
そのまま翌春の田植えを迎えるという農法です。

冬に田んぼに水を張ることで田んぼの雑草も抑制し
冬の間も田んぼにいろいろな生き物たちが生息し、
田んぼ本来の生態系を取り戻せるといわれています。



伺った冬季湛水田のひとつは
「さくら・市民ネットワーク 食と農部会」という団体が
5年前から取り組んでいる5aの実験田。
食の安全を求める活動から
農薬空中散布を必要としない稲作「不耕起移植栽培」に出会い、
耕さない田圃の会を結成したといいます。



取り組んだはじめての年こそ雑草取りに苦労したそうですが、
翌年からは楽になり、5年目の今年、
田んぼ表面がイトミミズの活躍でトロトロ層が形成され、
雑草はほぼ抑えられているといいます。
たしかに見たところ、まったく雑草の姿は見られませんでした。



肥料も初年度には刈り取り後、水を張る前に
10a当たり100kgのヌカを散布したそうですが、
年々、その量は減らしているといいます。
稲の生長のためのヌカというよりも
地中のイトミミズのエサにするヌカという意味だそうです。



二つ目の冬季湛水田は
耕さない田圃の会の実験田の地主でもあるMさんの田んぼ。
こちらは千葉県印旛沼再生行動計画「みためし行動」
冬季湛水による水質浄化調査対象3年目の90a。

この事業には県中央博物館も調査協力。
生き物たちの総量が多くなり
水質浄化も進んでいるという結果も得ているそうです。



朝日新聞08年3月5日夕刊『しぜんを歩く』でも紹介されています。
地盤がゆるんで農業機械が入れなくなったり、
雑草が増えるのではと心配したが、
作付け2年目の昨年には周辺と変わらない収穫があったといいます。


とはいえ、問題がないとはいえないようです。

ひとつは機械設備の問題。
これまでの田植え機は代掻きをした軟らかい地面に
苗を挿し込んでいました。
水を張っているとはいえ硬い地面には
専用の田植え機が必要のようです。
まだ注文生産の段階という事情もあるのですが、
これまでよりも50万円は高価になりそうとのこと。
その差額はどこかからか助成される?

Mさんはまだ専用機械を導入していなく
田植え前に地表面を浅く耕して既存の田植え機を使ったそうです。

もう一つ、苗もこれまでのような幼苗ではなく
太くて丈夫な苗にするための機械設備が必要。
耕さないからトラクターが不必要になるものの
新規に機械投資するだけの体力が農家に残っているかどうか。

問題の二つ目は利水権の問題。
普通、農業用水としては
春から夏までしか利用する権利がありません。
個々の河川・湖沼で水利権の調整が必要になりそうです。

耕さない田んぼの会では
農業用水ではなく水質浄化・環境対策用水として
印旛沼の水を利用できるよう提案していく考えのようです。


タイトルの写真はMさんが田んぼ除草のために育てているアイガモの雛。
田んぼデヴューまでもう少しだとか。

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