自然日誌 たかつき

自然についての問わず語りです。

キキョウ

2020年08月28日 | 標本


 多数の山田壽雄の作品の中でも、これはとりわけすばらしいものだと思います。この作品の場合、なんといっても花のすばらしさでしょう。左向きの花は中心部が暗くなっていて奥行きが表現されています。そして外側は明るくしてありますが、山田の目は一番明るいのは花びらが外側に開くあたりで、先端では再び少し暗くなることを正しく捉えています。そしてくっきりした正中部分のくぼみの影の部分との関係も実に巧みに表現しています。花はのっぺらぼうではなく、葉脈のように細い脈が複雑にありますが、これも正しく描いてあります。これが強すぎると花の印象を変えてしまうので、「描いてないように描く」という高度な表現に成功しています。この一つの花の中で光が複雑に動きまわっているようです。その微妙な膨らみが明暗で表現されています。
 キキョウの蕾は風船のようですが、花弁の切れ込みになる部分がふわりと盛り上がっていますが、それが色の濃淡で巧みに描いてあります。
 そう考えると山田壽雄はデッサン力以上に光の扱いにすぐれていたのかもしれません。このことは線画にした時に影をどうつけるかに関係するので、また改めて取り上げるかもしれません。

コメント
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