自然日誌 たかつき

自然についての問わず語りです。

重なり

2020年08月27日 | 標本

ヒヨドリジョウゴの山田の原図のことを書きました。もう少し書きたいことがあるので、あえて再登場させます。


茎と葉や、手前の葉と奥の葉が重なったまま描かれています。これはとても重要なことのように思えます。手前に葉があって奥に茎があれば、重ならないように葉の前後で茎を切らないといけないはずです。しかし、そうすると必ず茎に不連続感が生じます。図の中央左で葉がかさなっています。実際に見ているものは前後関係はわかっているのだから、手前を先に描いて、奥のものは後で重ならないように描けばよいはずです。それをあえてしないのは、「勢い」だと思います。
 茎にしても、奥の葉にしても、それはそれで存在しており、それを見ている描き手にはその輪郭は途切れさせないで描くべきものなのです。私はかなりの確信を持って、山田の筆の速度は速かったと思います。そうでないと(もたもたしていると)植物が生きている時の凜とした感じを線で表せません。ただ、速く線を引くと、細い茎の2本目を一定の幅で引くのはきわめて難しいことです。私はそれをこともなげに実現している山田の筆力に天才性を感じないではいられません。

コメント
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