自然日誌 たかつき

自然についての問わず語りです。

築地のネズミ

2018年10月15日 | がんこおやじ
報道によれば築地の終了に伴い、おびただしい数のネズミが「溢れて」近所に迷惑をかけているという。近所の人たちは当然、「迷惑千万なこと」と眉をひそめている。
 もっともなことだが、ちょっとネズミの立場に立ってみてはどうだろうか。この「ネズミ」はドブネズミとクマネズミが主体だと思われる。どちらも人の生活空間に入り込んで繁栄している。
その動物がネズミであって、クマやシカでないことはわかるし、ウサギでないこともわかる。単純に大きい動物が人家に潜り込むことはできないからだ。でもリスでもモモンガでもないのはなぜだろう。いくつかの理由があるが、最大のものは臆病であり、次に食べ物が違うことであろう。野生動物にとって人は恐ろしいものだから、警戒心がある動物は人の生活空間には入りたがらない。また人馴れする動物であっても、ドングリを食べたり、木の葉を食べたりするのであれば、人家に潜り込むことに利点がない。
その点、これらのネズミは人がいることに耐性があり、雑食性で、栄養価の高い食べ物を好む。だから、人家は理想的な環境となる。思えば、人は常に栄養豊富な食べ物をもたらしてくれる。そういう環境に入り込んだのがドブネズミとクマネズミであり、そのほかのたくさんのネズミのほとんどは「そんな恐ろしいところ」には決して入り込まない。
 築地は人家ではなく、それ以上に食物が豊富で、人がいるのは昼間だけだから、おそらくこれらのネズミにとっては申し分ない生活環境だったと思われる。そこで、80年もの間、世代を重ねてきた。その環境が突然破壊されたら、逃げ惑ってなんとか新天地を探すのは、生きようとする動物として当然のことである。
だからこれらのネズミを守れというのではないし、違う店に入るのを許容しようというのではもない。ただ、ありえないことが起きたと言って右往左往するのではなく、これは当然想定されたことであり、ネズミからすれば築地の閉鎖は「迷惑千万なこと」であるということを想像する客観性は持った方がいいと思う。
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