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『「いっしょに働きたくなる人」の育て方』(読書メモ)

見舘好隆著『「いっしょに働きたくなる人」の育て方』プレジデント社
(ワークス 人と組織 選書)

非正規社員を抱えるサービス企業は多い。しかし、そこでは、十分な教育プログラムがないため、採用したアルバイトがどんどん辞めてしまい、コストアップとサービス低下に陥る、という悪循環がみられるように思う。

本書は、人材育成で定評のあるマクドナルド、スターバックス、コールドストーンの3社を紹介するとともに、そこで働くアルバイトの生の声を分析した本である。非正規社員だけでなく、新人社員を育てる上でのポイントが書かれている。

まず3社は、アルバイトの資格を何段階かに分けることでキャリアステップを明示し、しっかりとした教育プログラムを用意しているところに特徴がある。

例えば、スターバックスの場合、「バリスタ→シフトスーパーバイザー→アシスタントマネジャー」という段階があり、その上に正社員であるストアーマネジャー(店長)がいる。入ったばかりのアルバイトは、本社でのOFFJTや、店でのOFFJT、OJTで、80時間の研修と確認テストを経て、晴れて「バリスタ」になる。

大切だと思ったのは、マニュアルで対応できないことはクレド(企業理念をまとめたもの)に立ち返って考えるという点。それを可能にしているのが、アルバイトを教育するアルバイト達である。マクドナルドでは、新人クルーに日常の業務に関する指導を行うアルバイトを「クルートレーナー」と呼び、専用の教育プログラムが整備されている。

著者の見舘氏は、3社で働くアルバイトの方たちをインタビュー調査し、彼らがどのような経験を経て成長しているかを分析しているが、これが興味深い。

店舗で働く人々に「憧れ」て入社したアルバイトは、職場の人々から「歓迎」され、「徒弟制」の下で「自分と戦い」ながら業務を覚えていく。一人前に近づくにつれて、仕事に「誇り」を持ち、「ライバル」を意識しながら、ときに先輩から「メンタリング」を受ける。一人前になった後は、さらに高い資格を「目標」としてがんばる、という流れでアルバイトは成長していくという。

このように、制度やシステムだけでなく、働く側からの主観的な経験をとらえることは、今後の人材開発において重要になるだろう。

対象となった3社を絶賛しすぎる点がやや気になったが、本書には、非正規社員の人材育成システムを構築するための数多くのヒントが示されていて、その応用範囲はかなり広い、と感じた。
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