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羽生さんのPDCA

昨日に引き続き、『仕事力(青版)』をパラパラ読み返していると、羽生善治さんの記事が目に止まった。「アマチュア時代から今日まで将棋の学び方は変わっていません。そのプロセスはシンプルに四つの段階を経ています」と述べている。

その四つのプロセスとは何か?

少し長くなるが、羽生さんの言葉を引用してみよう。

「最初にするのはアイデアを頭に思い浮かべること。次はこういう手を使って対局しようと新たな発想を考えるのです。
 そして次にそれがうまくいくだろうかとさまざまに検証していきます。盤に向かい、あるいは前例を調べ、自分が考え付いたアイデアを成功させるにはどうすればいいのか、徹底して時間をかけます。(中略)最初のアイデアで戦うためにこの検証のプロセスは非常に大切だと思います。
 そして実践に臨む。ところがどれほど検証して準備していても、相手は思わぬ手を指してくるんですね(笑)。そうなったら直感を信じて進んでいきます。
 対局が終わればまた検証です。相手や自分がどこでミスをしたのか、どの手を打ったからアイデアが生きたのか、あるいは失敗したのか、細部に至るまで明確にします。
 ずっと絶え間なくこの繰り返しで強くなれる。どの段階が抜けても、もろくなりますね。」

まさにPDCAサイクルである。

ただ、羽生さんのPDCAは、「P」に時間をかけるようだ。「アイデアを出す段階」と「アイデアを事前に検証する段階」に分かれている。そして、振り返りと改善である「CA」も徹底的に行っている。もちろん、対局である「D」も真剣勝負だ。

要は、たんにPDCAを回せばよいというわけではなく、それぞれの段階で、集中して全精力を注ぎ込むことが強くなる秘訣なのだろう。「どの段階が抜けても、もろくなりますね」という言葉が重い、と感じた。

出所:朝日新聞社編『仕事力(青版)』朝日文庫
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