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道徳心を保つ

多重知能論を唱える認知心理学者ハワード・ガードナーは「ビジネスマンは道徳心を失いやすい」と述べている。

なぜか?

それは、一般的なビジネスの組織において、倫理規範が組み込まれていないからだ。

医師、法律家、建築家といったプロフェッショナル達は、長期間のトレーニングを経て免許が与えられ、道徳基準に沿って行動しないと、職業団体から追放されてしまう。しかし、通常の企業には、そうしたものはない。

では、道徳心を保つためには、どうすればいいのか?

ガードナーはいくつかのアドバイスをしている。

まずは、ときおり時間を取って、自分の使命について深く考え、自分の行動を振り返ることである。ふと立ち止まり、一人になって考えをめぐらす時間を確保することが大切になる。

次に、お手本になる人物から感化を受けたり、反面教師となる人物から教訓を引き出すこと。

そして、忌憚のない意見を述べてくれる社内のアドバイザー、ビジネスとは関係のない親友の意見に耳を傾けること。

要は、適切なアドバイスをしてくれる他者との関係を大切にしながら、振り返るための時間を確保することが、道徳心を維持するために必要となるのだろう。

逆に言うと、忙しすぎて振りかえる時間がなかったり、自分のビジネスに関連する人々とばかり付き合っている人は「危ない」といえる。

ガードナーは、知性を4つに分類している。すなわち、専門技能のような「鍛錬する知性」、多様な情報を体系的にまとめる「総合する知性」、新しいアイデアや革新を起こす「創造する知性」、他者を理解し関係を築く「尊重する知性」である。

このうち、道徳心は「尊重する知性」をより拡大したものだという。

真のプロフェッショナルとは、この尊重する知性が発達している人のことだと思った。

出所:Howard Gardner「ビジネスマンは道徳心を失いやすい」Diamond Harvard Business Review, January2008, 120-128.

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