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『ローマから日本が見える』(読書メモ)

「ローマ人の物語」でおなじみの塩野七生氏が書いた『ローマから日本が見える』(集英社文庫)を読んだ。

塩野さんは、なぜローマにこだわるのか?

「古代ローマはなぜ千年も続いたのか?」という疑問を十代の頃に抱いたからだという。50年を越えて追求できるテーマを持てることは、とても幸せなことだ。

古代ローマが千年も続いた理由として、二つのことが印象に残った。

第1に、「敗者も同化する政策」。

戦争で負けた国も、自分たちの仲間として迎え入れ、自国民と差別しない。王様を選ぶときにも、生まれや家柄など気にしない能力主義をとる。あのカエサルも、敗者の国の出身である。

第2に、長い時間をかけて「少しずつ改革を積み上げていく」手法。

じっくりと変革を進めていくスタイルは、ローマ人がもともと農耕民族だったこととも関係しているらしい。彼らは、一つ一つの課題を優先順位にしたがってクリアし、「組織として動く国」を作っていった。

心に残ったのは、カエサルによる次の言葉。

「どんなに悪い事例とされていることでも、それが始められたそもそものきっかけは立派なものであった」

悪の根源のように言われている「官僚の天下り」や「道路公団」も、当初は、「官民一体による国際競争力強化」「日本全国の道路ネットワークの構築」という立派な目的があった、という説明に納得した。

善が時間を経るにしたがって悪に変わっていく。その原因は環境変化である。

「大切なのはまず自分たちが置かれている状況を正確に把握した上で、次に現在のシステムのどこが現状に適合しなくなっているのかを見る。そうしていく中で「捨てるべきカード」と「残すべきカード」が見えてくるのではないかと、私は考えるのです」

という塩野氏の言葉は、個人や組織の学習を考える上でも参考になる。
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