goo

現場の限界

「プロフェッショナルになるためには現場での経験が欠かせない」ということは常識といってもいい。

しかし、現場における学習は万能ではない。福島真人先生によれば、現場における学習には次のような限界もある。

・失敗による学習が積みにくい
・時間的制約がある
・適切な指導が受けられるとは限らない
・あるレベルに到達すると満足してしまう

こうした現場における学習の問題をクリアするため、現場に配属する前に若手をみっちりと研修で鍛える企業も出てきている。

プラント工事や産業機器製造を手がける新日本製鉄系の山九では、従来のOJTでは若手が育たないため、長期研修を義務化している。山九の人材開発担当は次のように語っている。

「親方の背中を見て学ぶにも時間ばかりかかり非効率。親方もチームの仕事を優先しないと納期遅れにもつながり、結局若手が育たない

時間に追われる中で、現場が人材育成機能を失いつつある、といえる。

こうした問題を解決するために、現場と切り離した研修によって基礎力を身につけさせているという。研修の義務化によって、若手エンジニアの技能が向上し、品質や納期が改善したようだ。

同社では、「現場経験から吸収する力」を研修によって養っているといえよう。

この他、塗装機械を手がける旭サナックでも、選抜した新入社員を現場に配置せず、3年間は座学と実技の研修を繰り返す技能塾を設けている。

これからは、研修と現場を有機的につなげて人材を育成していくことが大事になりそうだ。

出所:日経産業新聞2008.9.2、2008.9.30
福島真人『暗黙知の解剖:認知と社会のインターフェイス』金子書房
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )