goo

『部長の大晩年』(読書メモ)

城山三郎著『部長の大晩年』新潮文庫

この本は、異端と呼ばれながらも、俳句の世界で高い評価を受けた永田耕衣の評伝である。三菱系の大会社でナンバー3の部長に出世した彼だが、基本的に仕事よりも俳句を愛していた。

55才で定年退職した後、97歳まで生きた耕衣の生活の中心は「俳句」。仕事ばかりやってきて退職した後は何をしたらいいかわからない会社人間・仕事人間が多い中(たぶん僕もその一人だが)、一生打ち込める「自分の世界」を持っていた耕衣の人生はうらやましい限りである。

しかし、気になったのは、耕衣が俳句に熱中するあまり、家族をほったらかしにしていたこと。「会社から帰ると俳句、休みの日も俳句」であった。

仕事と生活のバランスをとる「ワークライフバランス」の重要性が指摘されているが、仕事と家庭を両立させる「ワークファミリーバランス」という概念もあるらしい。

耕衣は、ワークライフバランスはとれていたが、ワークファミリーバランスについては問題があったようだ。そのことを、本人も後悔していたと書かれている。

ワーク・ライフ・ファミリー・バランスをとることは難しい、と思った。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )