11月24日に開催された「GI利根沼田シンポジウム」をオンライン取材したのでリポートします。
GI は 産地ならではの特性を持つものが産地名を独占的に名乗れる認証制度です。
地名を保護することにより、原産地の保護、品質保証を行ない、ブランド力の向上にもつながる制度で、官能検査もしっかりと行われています。
ヨーロッパのワインの原産地呼称制度は馴染みがあるかと思いますが、EUのワイン法にあるワインの地理的表示GI(ジーアイ)Geographical Indication制度が、2013年に初めて日本でも山梨県のワインで指定されました(GI Yamanashi)。
ワインで認証されているGIは、山梨のほか、北海道、山形、長野、大阪で、山梨と山形と長野は日本酒もGI認定されています。
日本酒のGIも年々増え、現在では10。
群馬県の「GI利根沼田」は、日本酒の6番目のGIになります。
利根沼田は群馬県北部に位置し、雄⼤な河岸段丘によって育まれた地域です。
利根が利根郡で、沼田が沼田市になるかと思いますが、この地域には利根川の原水があり、水が豊富で、米が育ちやすい気候風土であり、酒を造る人も揃い、すべてが酒造に整っているとのこと。
それぞれのGI認定製品には土地の特性があり、GI利根沼田の認定酒は、
アルコール感のキレがよく、アルコール感を感じない透明感のある味わいが特徴といいます。
[GI利根沼⽥の特徴]
1)⽶の産地・品種を特定
五百万⽯/雪ほたか/コシヒカリ
2)採⽔地と加⼯を特定
3)酵⺟を特定
群⾺KAZE酵⺟/群⾺G2酵⺟/蔵付き酵⺟
4)ビンテージ表記を規程
5)官能的特徴
⾊沢:透明感のある淡いゴールド
香り:果実様の⾹り、杏仁⾖腐様の風味、つきたての餅、⻘草や新緑を連想させる⾹り
味わい:⽶特有のまろやかな旨味や⽢み、爽やかな酸味、コクを与える苦み、透明感がある味わい
現在、GI利根沼田で認定されているのは4蔵の7アイテムで、GI利根沼田の認証シールが貼られます。
シンポジウムでは日本ソムリエ協会の田崎真也会長が臨席し、GI利根沼田認定の7酒と食のペアリングについて紹介しました。
大利根酒造:「左大臣 こしひかり 純米酒」
蔵の裏の田んぼのコシヒカリを使い、米の味わいを活かした純米酒で、つきたての餅、白桃、ライチ、杏仁豆腐の香りがあり、まろやかで透明感のある味わい。まるでごはんを食べているかのよう、といわれるそうです。
永井酒造:
「MIZUBASHO 雪ほたか AWA SAKE」
瓶内二次発酵で造った5気圧の発泡サケ。
「MIZUBASHO 雪ほたか 純米大吟醸」
献上米で、幻の米といわれる雪ほたか100%を使った純米大吟醸。ヴィンテージ表記しており、今年は過去10年で最高の出来だそうです。
「MIZUBASHO 雪ほたか Dessert Sake」
貴醸酒をアレンジし、米のうまみを味わえるデザート酒。ショートケーキ、チョコレート、アイスクリームに合い、フォアグラに合わせても。
土田酒造:
「シン・ツチダ(コシヒカリ)」
食べる米のみで、ほとんど削らず(8割)、蔵に棲みつく菌(乳酸菌、酵母)のみで発酵させる造りで、ローカル色を出すことを目指す蔵。
コシヒカリは米のうまみを重視し、酸の骨格があり、重層的な味わいが特徴。
「シン・ツチダ(雪ほたか)」
雪ほたかは甘い米なので、甘さ、まろやかさ、ふくよかさがあり、菌由来の酸が特徴。
どちらも「地元を凝縮した酒」と蔵元。
永井本家:「トネニシキ コシヒカリ90」
沼田になるべく近い米を使い、地元の米屋で90%の精米歩合。香り豊かで、酸味もあるが気にならずに飲め、常温でもお燗でも楽しめるとのこと。
ラベルも地元の会社に依頼。地域と共生していくという考えで酒造りに取り組んでいます。
永井酒造/土田酒造/永井本家/大利根酒造
4蔵は明治の頃から研究会を行なってきた、いわば昔からの同志のような関係で、お互いに切磋琢磨してきた間柄といいます。
「GI認定を機に、プレミアム酒の新しい価値観の提供をしていきたい。
また、自然の中で色々なことも、例えば、利根の酒蔵ツーリズム団体などと一緒に活動していけたら」と、大利根酒造の阿部倫典さん。
それは楽しそう!
今回のGI利根沼田の認定7酒は、7本をセットにしたものが88セット先行販売されます。
セット価格は66,000円(税込み)※2021年11月24日から予約開始
現段階では、このセット商品でしか発売されていませんが、年明け2022年1月6日からは単体で各蔵で発売するそうです。
※セット品の注文問い合わせは各蔵へ
各蔵や認定酒の詳細が知りたい場合は、Facebookページにかなり細かく紹介されていますので、参考にしてください。
GI利根沼田 Facebookページ → コチラ
シンポジウムをオンライン取材した私ですが、事前にサンプルを送っていただいたので試飲できました(1種類のみ)。
「シン・ツチダ(コシヒカリ)」 土田酒造
ワイングラスのフランチャコルタ用グラスに注ぎ、やや低めの室温で。
香りはご飯!お米からつくられているので、お米を炊いたご飯の香りがしても不思議ではないですが、実際には、なかなか出合えないですよね。
ふっくらとしたお米、ごはんのうま味を感じました。日本酒度-20と、数字だけ見ると甘いはずですが、肩透かしを食らうほど甘さは控えめでした。
米由来の甘みとうまみ、蔵由来の酵母から来る酸味のバランスが取れているからなのでしょう。
温度は常温(晩秋から冬の季節の)とお燗で試しました。
お燗をすると香りと風味が強くなり、かなりのクセが出てきます。パワフルな肉料理に赤ワイン的に合わせる場合にはいいでしょうけれど、個人的にはお燗をしたものよりも常温の方がタッチがソフトで、好みでした。
今回紹介された4蔵の中で、私が知っているのは水芭蕉ブランドの永井酒造のみ。
でも、この取材でほかの3蔵のことや、彼らが団結して行なっている活動のことを知ることができました。
試飲した土田酒造の認定酒も気に入りましたし、蔵に棲む酵母を使うというスタイルも好ましいと思ったので、今後はここの蔵の他の酒も飲んでみたいと思いました。
何かに興味を持つようになるキッカケって、いろいろとありますね。
「GI」は、少し前まではあまり馴染みのないものだったかもしれませんが、認証数がどんどん増えてくると、また実際に飲む体験をすることで、だんだんと身近なものに感じられるようになってくるのかもしれません。