ワインな ささやき

ワインジャーナリスト “綿引まゆみ” (Mayumi Watabiki) の公式ブログ

ボルドーワイン界の大物ベルナール・マグレ氏に会う

2016-03-02 21:55:39 | ワイン&酒
実際に会ってみると、それまでの予想と印象が全然違う人っていませんか?
私もつい先月、それを実感しました。

それは、フランスのボルドーワイン界のドンともいえる Bernard Magrez ベルナール・マグレ氏

グラーヴのシャトー・パプ・クレマンをはじめ、ボルドーに4つのシャトーを所有し、世界各地でもワイン事業を積極的に展開するマグレ氏のことを、非常にアグレッシブな人物だと思ってきました。

が、先月初めてお目にかかる機会がありまして、やはり人は実際に会ってみないとわからない、と思ったのです。



Bernard Magrez

マグレ氏はボルドー生まれのボルドー育ち
彼の父は工業関係の仕事に従事しており、ワインとは関係がありませんでした。

13歳で仕事を始め、家を出された時に、「自分の人生、なにをしよう?」と考えたと言います。
16歳で学校をやめ、19歳でボルドーの仕事に就き、21歳でワインの学位を取得すると、ポートワインを扱う小さな会社を3人で立ち上げました。
ポート以外にウイスキー、テキーラ、カクテルなども扱い、ボルドーではワイン以外のものが珍しかったことから成功を収め、10年で大きな会社に成長しました。

ワインへの転換のきっかけは、1978年にスペインのリオハのワイン会社を購入したこと。安かったから、というのが理由だそうです。
それはすでに売却し、今はプリオラートやバレンシアなどの事業に取り組んでいます。

これらの成功で得た資産を元に、マグレ氏はボルドーのシャトーを購入していきます。



現在は、Chateau Pape Clement(Grand Cru Classe of Graves)のほか、Chateau La Tour Carnet(Grand Cru Classe of 1885 Medoc)、Chateau Fombrauge(Grand Cru Classe of Saint-Emilion )、Clos Haut-Peyraguey(First Grand Cru Classe in 1855, Sauternes)の4シャトーを所有しています。

4シャトーはいずれもグラン・クリュ・クラッセ
マグレ氏はグラン・クリュ・クラッセのプロジェクトに関与し(1995年)、プロジェクトの定着(2000年)に尽力したとのこと。

ボルドー以外では、ラングドック=ルションやプロヴァンス、国外では、スペイン、ポルトガル、チリ、アルゼンチン、ユーゴスラビアなど、世界8カ国、41カ所に畑やシャトーを所有しています。

「イタリアにも進出したいし、あと一つ、二つのグラン・クリュ・クラッセを取得したい」とマグレ氏。
やはりアグレッシブ?

でも、「世界の色々な人、色々なワインを深く知りたい。ワインはステイタスと言われるが、ワインは人と人をつなぐものだと思う。だから、他の人にもワインそのものを深く知ってもらいたい」 と穏やかに語ります。

そんなマグレ氏にお年を尋ねると、この3月で80歳を迎えるそうです!

今は世界へ目を向けている。ボルドーの競争が厳しくなってきているからね。これまでも自分の足で世界のワインを見てきた。もちろん、フランス各地にもいいワインはたくさんある。今後注目したいのはウルグアイで、テロワールが素晴らしい!5~10年後には非常に良い産地になるだろう」と言います。
80歳という年齢をまったく感じさせない発言です。

今回一緒に来日した娘のセシルさんによると、彼らのプロジェクトとしては、ワインのことを総合的に知りたいと思っている多くの消費者のために、所有する4つのシャトーでの結婚式や宿泊、ガストローノミーといったアクティビティも用意しているそうです。

「ワインは専門的で難しいと思われがちだけど、ワインとともに楽しむことが大事」とセシルさん。
シャトーのレストランで提供される料理は、フレンチの巨匠ジョエル・ロブション氏とコラボしており、ミシュランの三ツ星も獲得したとか?


左から)輸入元のロラン社長、ジョエル・ロブション氏、セシルさん、マグレ氏



マグレ氏は美術関係のメセナ活動も行なっており、収集した美術品をシャトーに飾ったり、
また、がん患者のための医療センター(2カ所)の運営支援タイやカンボジア難民の孤児への人道的支援なども行なっています。

「人としてどういう人生を歩むかを考えている。苦しんでいる人に救いの手を差しのべるのは当たり前のこと。皆と喜びを分かち合いたい」

一代でワインビジネスを築き上げ、大成功を収めてきたマグレ氏ですが、少年時代から苦労してきたこともあるのでしょう、さまざまな弱者へのあたたかな愛情がにじみ出ているように感じました。




80歳を迎えるというのに、まだまだエネルギッシュなマグレ氏。
でも、いい年齢の積み重ね方をされて穏やかなお顔をされています。
そんなマグレ氏に、今この時に会えて僥倖でした。





そうそう、このすぐ後に南仏のモンペリエで開催される「Vinisud」に行く予定だった私は、セシルさんに予定を尋ねたところ、「ブースを出し、父が行く」ということでしたので、マグレ氏をの再会を楽しみに何度か足を運びました。が、会えずじまいでした。残念!

またいつか

(ワイン輸入元:ピーロートジャパン)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする