拝島正子のブログ

をとこもすなるぶろぐといふものを、をんなもしてみむとてするなり

トーンキュンストラー

2015-08-30 18:44:50 | 音楽
佐渡裕さんはウィーンのトーンキュンストラー管弦楽団の指揮者になるんで題名のない音楽会を降板(番組では例によって「卒業」と言ってる)するんですかね。「トーンキュンストラー」ってカタカナで表記すると変な名前と思っちゃうけど(名牝「ジェンティルドンナ」の名前を変だとけちをつけるがごとし)、「キュンストラー」(Kuenstler)は芸術家一般のことで、それに「トーン」(Ton=音)が付いた普通名詞。だから変じゃない。ただ、私も誤解してた。音の芸術家だから音楽家のことだろう……と思ったら、主に作曲家のことを指すようだ(因みに、「ジェンティルドンナ」は、”gentil”な”donna”で「貴婦人」)。いずれにせよ普通名詞だから、ウィーンのオーケストラに限らない。検索すると”Tonkuenstler-Verbandどこどこ”(どこどこの作曲家連盟)っていうのが複数ヒットする。

昔に合わせたり、今に合わせたり(シュッツの新旧版)

2015-08-30 11:39:42 | 音楽
某合唱団で、シュッツの”Troestet mein Volk”の歌詞の一部が、新旧版で違ってることが問題になっている。自分なりに整理してみた。まず、「荒野で呼ばわる声がする」の「荒野」。以下、新しいものから過去に遡る。新版=”Wuesten”、旧版(1648)=”Wueste”、ルター聖書1915年版=”Wueste”、シュッツ生前に発刊された楽譜=”Wuesten”、ルター聖書1545年オリジナル=”Wuesten”ということで、昔は”n”がついていたが後にとれた。が、新版ではそれを元に戻して付けた、ということらしい。現代ドイツ語では単数三格だから”n”がつかない”Wueste”が正しい。もう一つは、「でこぼこをまっすぐにする」の「まっすぐ」。新版=”schlicht”、旧版(1648)=”schlecht”、ルター聖書1915年版=”schlicht”、シュッツ生前に発刊された楽譜=”schlecht”、ルター聖書1545年オリジナル=”schlecht”ということで、こっちはかつて”schlecht”だったが、意味を考えて”schlicht”に変えたということらしい。ただし、現代でも、”schlecht”を”schlicht”の意味で使うことがあるので(独和大辞典)、”schlecht”が誤りとは言えない。面白いのは、「荒野」については昔に戻したのに、「まっすぐ」については現代に合わせたところだ。なにがなんでも旧版を変えてやるって感じがしないでもない。