拝島正子のブログ

をとこもすなるぶろぐといふものを、をんなもしてみむとてするなり

昔に合わせたり、今に合わせたり(シュッツの新旧版)

2015-08-30 11:39:42 | 音楽
某合唱団で、シュッツの”Troestet mein Volk”の歌詞の一部が、新旧版で違ってることが問題になっている。自分なりに整理してみた。まず、「荒野で呼ばわる声がする」の「荒野」。以下、新しいものから過去に遡る。新版=”Wuesten”、旧版(1648)=”Wueste”、ルター聖書1915年版=”Wueste”、シュッツ生前に発刊された楽譜=”Wuesten”、ルター聖書1545年オリジナル=”Wuesten”ということで、昔は”n”がついていたが後にとれた。が、新版ではそれを元に戻して付けた、ということらしい。現代ドイツ語では単数三格だから”n”がつかない”Wueste”が正しい。もう一つは、「でこぼこをまっすぐにする」の「まっすぐ」。新版=”schlicht”、旧版(1648)=”schlecht”、ルター聖書1915年版=”schlicht”、シュッツ生前に発刊された楽譜=”schlecht”、ルター聖書1545年オリジナル=”schlecht”ということで、こっちはかつて”schlecht”だったが、意味を考えて”schlicht”に変えたということらしい。ただし、現代でも、”schlecht”を”schlicht”の意味で使うことがあるので(独和大辞典)、”schlecht”が誤りとは言えない。面白いのは、「荒野」については昔に戻したのに、「まっすぐ」については現代に合わせたところだ。なにがなんでも旧版を変えてやるって感じがしないでもない。

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