今月のバッハのカンタータはBWV96。歌詞の中に「へぇー」と思わせるものがあった。「in unverletzter Keuschheit」。ミサの「ex Maria virgine」と同じような内容。で、一つ目の「へぇー」=「unverletzter」(無傷の)。これって、おとっつぁんがどっかの馬の骨に向かって「てめー、くぬやろー、うちっとこのでーじな娘を傷物にしやがって」の用法と共通(意味は逆だが)。二つ目の「へぇー」=「Keuschheit」。これはちょっとびっくり。この言葉、女性にも使うんだ。私が初めにこの言葉を見たのはパルシファル(ヴァーグナー)のテキスト。クンドリーがクリングゾルに向かって「Haha! Bist du keusch?」(ははー!あんた童貞?)とあざけるところ。そう、ここの訳は「童貞」だった。日本語で「童貞」と言ったら通常は男のことをいう。だから「keusch」は男に使うのだと思ってた……ら、今回の歌詞。そしたら、これ、もともとはカトリックの修道女を指す言葉だそうだ。そう言えば、なんかの曲のタイトルで「童貞マリア」というのがあったっけ。そう考えると、パルシファルの別の箇所で、この言葉を男について使ってるのが変に思えてくる(Haha! – dort nach den keuschen Rittern?~はは!あの童貞の騎士どもをかい?)。ちなみに、「keusch」はドイツ語学校では教えてくれなかった。そういえば、「童貞」も小学校では教えてくれなかった。