鈍想愚感

何にでも興味を持つ一介の市井人。40年間をサラリーマンとして過ごしてきた経験を元に身の回りの出来事を勝手気ままに切る

エニグマ解明に偉大な功績のあったアラン・チューリングを描いた映画「イミテーション・ゲーム」

2015-03-20 | Weblog

 20日は東京・渋谷で米アカデミー賞の作品賞・監督賞など8部門にノミネートされた「イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密」を観賞した。第2次世界大戦下の英国でナチスの暗号機エニグマの解明にあたった天才数学者、アラン・チューリングの活躍を描いた映画で、いかに悪戦苦闘してエニグマの謎に迫ったのかを自伝的に追っていてなるほどと思わせた。先に英国の探偵シャーロック・ホームズをテレビで演じて芸達者なところを見せたベネディクト・カンバーバッチが主役を演じていて、魅せてくれた。

 「イミテーション・ゲーム」は戦後、アラン・チューリングの家に泥棒が入ったとの通報を受け、刑事がかけつける場面から始まる。駆けつけた刑事に対し、「床の青酸カリの粉末が落ちているから近寄るな」と言って泥棒の被害には触れないチューリングに奇異さを感じた警官は署に帰ってから、チューリングのことを調べまくる。そこからチューリングの幼いころに入り、さらに第2次世界大戦の最中に英国の情報部の要人がドイツ・ナチスの暗号機のエニグマを解明するためのチームに加わるようにチューリングのもとを訪れるシーンに移る。

 そして物語は主にエニグマ解明にための解読チームの悪戦苦闘ぶりを描きながら、戦後のチューリングを追う刑事の追跡ぶりとチューリングの幼少期の生い立ちをかわるがわりに紹介しながら、チューリングの人となりを語っていく手法を取る。それで、チューリングがなぜ同性愛に傾いていったのかを解き明かす。同時にエニグマに立ち向かうためには同じような能力を持つ仲間の協力を得なければならないことを悟り、ケンブリッジ大学卒業のジョーン・クラークと結婚し、仲間の知恵を借りて、チューリング自身が開発した暗号解読機、「クリストファー」をなんとか起動させることに成功する。ただ、エニグマは毎朝6時に新たな暗号を生み出すことから、数時間のうちに解読しないことには有効ではないことを知り、大きな壁にぶち当たる。

 それを打ち破ったのがジョーンの友達がもらしたドイツの通信の癖を知ったのがきっかけでエニグマを解読することに成功する。しかし、それを直ちに作戦本部に伝えることはドイツに軌道修正の機会を与えることになる、として最高幹部だけに知らせることにし、必要最小限の作戦変更をすることだけにして、それを積み上げていって、連合軍の勝利をもたらすことにつなげていった。チューリングのチームのメンバーには兄がバルト海の艦船に乗り組んでいる人もいたが、その艦船がドイツ軍の潜水艦に狙撃される情報も敢えて表にしなかったこともあった。

  チューリングの発明した「クリストファー」は後にコンピューターの走りとなった装置で、チューリングはいまのIT時代の生みの親といってもいいほどの発明を成したことになる。第2次世界大戦を勝利に導いたのもチューリングだ、といってもいいほどだ。しかし、一般にはチューリングの功績はそれほど表立って讃えられたわけではない。チューリング自身は戦後、同性愛者として逮捕されるに至ったし、逮捕後数年で自殺して、この世を去っている。

 もうひとつ見ていて思ったのはチューリングがこれほどまで解明に手こずったエニグマなる暗号機を開発したドイツ科学者の頭脳も素晴らしかったということだ。毎朝6時に新たな暗号を生み出し、それを作戦に生かして欧州を制覇したというのは極めて高度な頭脳と言わざるを得ない。ドイツ人恐るべしではなかろうか。今度はそれを描いた映画をだれか作ってくれにものか。できたらぜひ見たいものだ。ドイツを賛美することはナチスドイツを讃えることになるので、タブーとなっているのかもしれない。

 ともあれ、2013年になってエリザベス女王がチューリングの犯罪の事実を取り消して、改めてその功績を讃えた、というが、果たして天国のチューリングにまで届いたかどうかは明らかではない。映画としては実に面白く、よくできていて、観ていて十分に楽しめた傑作であった。

 

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 欧米の姓名をそのままタイト... | トップ | 日経と講談社が提携して発行... »

コメントを投稿

Weblog」カテゴリの最新記事