鈍想愚感

何にでも興味を持つ一介の市井人。40年間をサラリーマンとして過ごしてきた経験を元に身の回りの出来事を勝手気ままに切る

新日石の株主総会の社長挨拶で突然、会場内に静寂が広がった

2010-01-29 | Weblog
 過日、東京・内幸町の帝国ホテルで開かれた新日本石油の臨時株主総会に出席した。2FUの宴会場フロアーの孔雀の間に600人くらいはつめかけた中で、4月1日に新日鉱ホールディングスと共同株式移転により、新たに「JXホールディングス」設立の了承を得よう、というものだった。新日石の西尾進路社長が新会社の定款まで詳しく説明し、了解を求めた。肝心の新会社の経営計画は現在作成中ということで、ちょっとがっかりしたが、今後グローバルに石油などエネルギー資源を確保していくうえで、経営基盤の強化は必要との説明は説得力十分だった。
 質疑応答に入り、株主の関心はもっぱら配当にあり、半期10円だった配当を8円に引き下げることに対する疑問に質問は集中し、それに対応した役員報酬のカットはあるのか、と激しくつめよった。配当の減少分は28億円で、役員報酬はいくらで、カット分はいくらなのだ、との質問には会場から拍手が出るほどだった。あとは社名の理由とか、ガソリンスタンドに対する価格政策や、石油精製設備廃棄、エネルギー需要の見通しなどについての質問が出た。
 最後に議長としての精彩がないことを指摘する質問が出て、西尾社長が「貴重なご意見として承っておきます」と引き取り、約2時間で質問が出尽くした。会社側から仕掛けたのではなく、自然と質問が出尽くした形で質疑応答が終わったのは好感が持てた。
 続いて西尾社長が株主にお礼の言葉を述べているなかで、「日本石油というブランドが明治3年以来122年続いてきた……」と言ったあと、会場内に突然、静寂が広がった。マイクでも故障したのかな、と思って壇上を見入ると、西尾社長は手元のディスプレイを眺めたまま、うつもうて沈黙している。30秒くらい沈黙が続いてから、やおらハンカチを取り出し、メガネを取って、涙をぬぐい始めた。それまで株主の厳しい質問にも冷静沈着な応答ぶりを見せていた人とは思えないウエットで、感傷的な側面を垣間見せてくれた。
 おそらく感きわまって、思わず涙が出てしまったのだろう。122年続いた日本石油のブランドが消えてなくなってしまうことに対する悔しさと責任の入り混じった思いが噴出したのかもしれない。今回の新日鉱との合併が難産で、ここまで持ってくるのに人知れぬ苦労があったことも与かっているのかもしれない。また、日本石油OBのなかにブランドげ消えてしまうことに直接残念な気持ちをぶつけてくる向きもあったかもしれない。
 永年にわたって愛着を持って親しんできたブランドがこれで消えてしまう万感の思いが頭をよぎっての涙だったのだろう。そうした思いを察してか、会場からは期せずして激励するための拍手が起きた。
 それに気を取り直してか、まだ涙声が残るなか、用意された原稿を読み進んで、株主総会は無事に終了した。
 ビジネス一本やりではない日本の企業経営の一端が見えた株主総会であった。米国人にしてみれば、感傷的になっていては経営などできない、と一笑にふされたことだろう。
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