NHK大阪のハイビジョンドラマとして1999年に製作された作品だが、ほぼ全編フィックス主体のワンシーンワンカットで、ほとんど引いたサイズ。
テレビ画面で見せるつもりがあったのだろうかと思わせるような撮り方。
なお、画面にフィルムチェンジ用の印が出るので、撮影はハイビジョンでもフィルム変換したものなのだろうか。
第53回カンヌ国際映画祭「ある視点部門」正式招待作品 。
会社を人員整理で馘首になった男(水橋研二)が特に何をするでもなく風俗に行ったり、自転車に乗ったり、風俗嬢(
林由美香)にプレゼントの下着を買ったりといった淡々を通り越してナンセンスに接近した情景が綴られる。
強盗や殺人?も描かれるのだが、すべてドラマチックのチックを排除した描き方。
脚本岩松了。
歳がよくわからない、28歳だと名乗って若く見えると言われるのだが、(水橋研二は出演時24歳)
屋上で覆面した女が、殺人を犯して服役したようなことを言うのだが、それにしては若すぎる。
またブランコに乗りながらそう言う女がワンカットの中でフレームアウトしてまたブランコがフレームインすると女の姿が消えているといった奇妙なシーンがあったりする。
カットの構成、俳優の動かし方、オフの音声の使い方など完成した技法。
冒頭、海の中を赤いふにゃふにゃした赤い物体がゆらゆらしているのでタコか何かと思ったら後で女性ものの下着なのがわかる。何度も出てくる黒い覆面に対応しているのだろう。
よくNHKで通ったなと思わせるところはある。
演出の高橋陽一郎はこの前に「水の中の八月」このあと「オードリー」とかを演出している。
上映した国立映画アーカイブは満席。めったに見られない作品だからだろう。