娘たちをテニスのトッププレイヤーにするという将来のプランを決めて、その通りに実行していく父親の実話なわけだが、星一徹と星飛雄馬のような葛藤が一向に現れないのは実際にそうだったのかわからないが、なんだか釈然としない。
早くからテニスだけの生活はさせず、学業もトップをキープすることで社会人としてのバランスをとらせるのはいいけれど、子供の将来を親が全面的に決めることに変わりはない。
結局、子供たちの側の意思がほぼ描かれていない、終始良い子で通していて、テニスプレイヤーとして成功したからいいのか、というのがどうもひっかかる。
コーチを頼んでおいて指導方針に従わなかったり(しかも無報酬)、ディズニーの「シンデレラ」を見せてその教訓を読み取れなかったらもう一度見せようとするとか、どう考えても相当変で困った人なのだけれど、どういうわけか(というか繰り返すが娘たちがテニスで成功したからか)許されてしまう。
ネタバレするが、クライマックスで良いところまで行くが惜敗するのが「ロッキー」みたいにやりきった感じがしないのは娘の独力した意思が描かれていないから。
なんか変な人を変だと認識しないで妙に肯定的に描いていて、エンドタイトルで実物が出てくるとますます本当に変な人だと思わせる。
これで感動しろというのかなあ、と、どうにも座りの悪い気分になった。
原題はKing Richard。実際にリチャードという名前なのだが、シェイクスピアのリチャード三世(あらゆる権謀術数を使ってのしあがるが結局破滅する王様)にひっかけてあるっぽい。
しかし暴君を暴君として見る目がすっぽ抜けている。