prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「バベル」

2007年06月04日 | 映画
ちょっと大風呂敷の広げすぎ、って感じはする。テーマも含めグリフィスの「イントレランス」ばり、というか。
同じ地球上に住む人間、というくくり方は理屈の上ではともかく実感とするのはいささかムリがあって、大きく三つのパートに分かれてはいるが、そのうちの一つ扱いになっているアメリカ=メキシコが地続きであっても国境と法律という人為的で抽象的な方法で断絶していて、最も善意のおばさんを追いこむあたりの不条理感が手ごたえがあった。

モロッコの警察と、アメリカ=メキシコ国境警備隊が、何かというと銃をいつでもぶっ放せるよう身構え、実際に発砲するのに対して、日本の警察は銃に手をかけさえしない。
そのヌルい(?)国であるところの日本発の銃がコトの始まり、というのはアイロニー狙いなのかどうか、ちょっと今みたいに日本でも銃の発砲事件が多くなると判断に困るところ。

菊池凛子がディスコに入っていくとアースウィンド&ファイアの大音響がふっと聾唖者役の主観に従って無音になるのが悪夢的なリアリティがあって(「プライベート・ライアン」の音響処理を思い出した)、渋谷の映画館で見たのだが現実の渋谷の街自体が現実離れしたおもちゃの街のように感じられるような感覚の顛倒があった。

「キル・ビル」の栗山千明もだが、ああいうキツい感じの、三白眼がかって見えるのがあちらでは印象が強いのかな。
(☆☆☆★)