prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「柳生一族の陰謀」

2004年01月10日 | 映画
テレビでとびとびに見てはいたのだが、まとめて劇場で見たのは初めて。今の目で見ると、チャンバラシーンがリアリズムとも様式的ともつかなくてあまりぱっとせず、ほとんど冗談みたいな萬屋錦之介の大芝居が見ものになる。上の権力抗争が下の犠牲を強いる図式は深作欣ニの体質でもあるだろうし、それ以前に実録やくざもののパターンだが、時代劇でやるとまわりくどい感じ。当時の大作には違いないのだろうが、20年以上経つと、それ以前の時代劇と比べてしまうからさほどスケールは感じない。
(☆☆★★★)


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「バッド・ボーイズ2  2バッド」

2004年01月09日 | 映画
出だしのKKKの集会で格好よく主役二人が乗り込んでいるのに、バックアップする警官隊の通信機が故障して使えないというだらしなさにがっくり、続きをまじめに見る気がなくなる。

だいたい、ここでの新しいネタって遺体に麻薬を詰め込んで密輸するというごく有名な手だけではないか。それをもろに見せる悪趣味。平気でよその国に乗り込んでワルモンを退治するのはこのプロデューサー×監督らしい無神経+アメリカ覇権主義ぶり。キューバみたいな共産国家には何してもいいのだという意識がありあり。ドンパチだけ派手にしても、ちーっともスカッとしない。

撮影はイラン出身のアミール・モクリ。「ブルースチール」を見た後、「パシフィック・ハイツ」を見て画調、特にビームが入ってくるライティングが似ているなと思ったら、両方ともこの人が撮影監督なのであれまと思って名前を覚えたのだが、ここでもラスト近くそれらしい画があるが、監督のせいか特に個性を発揮するでもなく、MTV感覚にまとめている。
(☆☆★★)


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「ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS」

2004年01月09日 | 映画
初めの方の管制室のシーンで電子機器にコーヒーカップを乗せているもので(こぼしたらどうすんだ!)終わりまで見ていられるか心配になった割には、まあ見られる出来。一番いいのは時間が短い(1時間30分)こと。しかし小美人がテレポートを使っているのかどうやっているのかわからないままあちこちに突然登場したり、メカゴジラがゴジラを釣り下げて飛んでいる筈がいつの間にか上に抱えていたり、キーがついているのかどうかわからないまま停めてあったバイクを発進させたり、細かいところ、特につなぎが雑な演出。機械にやたら感情移入するキャラクターというのはありうるとは思うのだが、描写としてはまるで説得力がない。

小美人は初代みたいに双児ではないのに双児みたいに見える。メイクのせいもあるのだろうが、東宝シンデレラ(このネーミングなんとかならない?)のタイプって似てくるのではないか。関係ないけど、サラ専ビーナスっていうのもありましたね。松竹が「サラリーマン専科」シリーズ化をもくろんでいた時のヒロインの呼称。助けてくれって言いたくなるセンス。

「モスラ」では巣をかけただけで破壊しなかった国会議事堂を破壊したのは結構。どうせなら、中に議員が詰まっているところをぶっ壊せばもっと良かった。

カメーバなんて知名度の低い怪獣(ガメラと間違えさせるつもりか?)の死体の謎の登場とか、モスラの幼虫の目が怒ると赤くなる(「ナウシカ」の王蟲)とか、変なところでオタク風のところあり。
(☆☆★)


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「ボウリング・フォー・コロンバイン」

2004年01月08日 | 映画
ヤマ場のチャールトン・ヘストンへのインタビューで、銃で死んだ少女の写真をかざすカットはカメラの位置からして明らかに別撮り。別にドキュメンタリーで“作意”を入れてはいけないなどとは思わないが、ちょっとその作意がわかりやす過ぎる、というか俗耳に通りやすい形になっているのが気になる。世評ほどには感心せず。アメリカに対する反感に乗っかって評価された観。
銀行で景品に銃をくれる、というのはギャグでも考えられないような話。
(後註・審査段階を編集でカットしているという)
(☆☆☆)


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「こちら葛飾区亀有公園前派出所 THE MOVIE2 UFO襲来! トルネード大作戦」

2004年01月08日 | 映画
日本映画史上もっとも長い題名ではないか、コレ。トルネードのCGから逆算して作ったみたいなストーリー。特につまらなくもなく、面白くもなくってとこが、スペクタクルを除くと原作と味わいが似ている。
(☆☆★★★)


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「マトリックス・レボリューションズ」

2004年01月07日 | 映画
前ニ作でさんざん広げてきた大風呂敷を畳みようがなくなってへなへなになった一編。お話、「リローデッド」とつながっていないのではないか。ここで描かれた世界って、結局ヴァーチャル・リアリティ(古いな)なの? なんなの? この戦いに負けたらどうなるっていうの? 知りたければ謎本か何か読めっていうんじゃないだろうな。ひとりよがりもいいところ。
(☆☆★★★)


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「劇場版 あたしンち」

2004年01月05日 | 映画
母とみかんとの人格が入れ替わってしまうというお話なのだが、そうなると母の無敵ぶりがあまり見られなくなるのが物足りない。最近のアニメにありがちなやたらと影をつけたり画像処理をしたりしない、シンプルでかわいい画でまとめているのはいい。
子供連れの客層が主体だったのは意外。かといって、どの客層向けなのかというとよくわからないのだが。子供たちは喜んで見ていた。
(☆☆★★★)


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「コール」

2004年01月04日 | 映画
犯人の動機の設定が途中から辻褄が合わなくなる。本筋以外の4件の犯行の動機は何だったのか。
三人の犯人がばらばらの場所にいて携帯の連絡だけで辛うじてつながっており、それが途切れると人質の女の子が危ないという設定はいいが、そこで満足してしまったみたいで、メールは使えるというのは犯人側とすると不用心すぎるし、携帯の電池がなくなるとか水に落としたらどうなるといった細かいツイストも欲しい。まあ退屈はしないが、ちゃんとした小品を作るのがアメリカ映画は下手になった。

クライマックスでセスナ機を強引に高速道路に着陸させて自動車事故まで起こすのは無理に見せ場を作っている観で、子供を助けるためだったら他のドライバーが事故で命を落としてもいいのかと疑問を持たせる。医者のやることなのだから、なおのこと。
(☆☆★★)


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「いつかA列車に乗って」

2004年01月02日 | 映画
まったく何の予備知識もなしに見たので、舞台劇の映画化かと思った。最初から最後までジャズバーの中で展開するからだ。そしたら、半世紀前の内田吐夢監督・灘千造脚本の「たそがれ酒場」のリメークというから驚き。

いつの時代の話なのかはっきりさせていないが、セットだけでなく、ストーリーの上でも娘に金を借りに来る母親とか、筆をいったん折った画家がまた描き出すとか古めかしい調子が目立っているのが、古き良きジャズのムードと合っている。オリジナルでは歌手の出世物語なのが、サックス奏者兼作曲家に変えて(このあたり監督の自己投影か)、加藤大治郎(剛の息子)が演じている。実際に吹けると強い。

むやみとカメラワークに凝らず、限られた空間を映像分割して見せる演出は、クラシックで堂にいったもの(監督第一作)。出てくるミュージシャンたちが本物のフィーリングを持っているのが、見ていてはっきりわかる。映画畑の人ではなく音楽畑の監督(荒木とよひさ)だから、むしろ今風の作り方にとらわれないのかもしれない。単一のストーリーで貫徹する作りではなく、さまざまな人物が出入りするのを一種ノンシャランに追っていくのが、ジャズの即興と合っている。

脚色の中島信昭って、「トラック野郎」とかを書いていた人で、なんでまた急に出てきたのだろう。不思議な出自の映画。
(☆☆☆★)


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