市川崑の股旅ものというとテレビの「木枯し紋次郎」が有名で、実際この映画を作るための資金作りというつもりで監修を引き受けたらしい。もっともどう考えても紋次郎の方が有名だが。
テレビとATGというまあ相手にする観客の数からすると対極にあるメディアの違いというと、ヒーローがいるかいないかの違いにまとめられるだろう。「股旅」のアンチヒーローぶりは、ニューシネマの影響もあるのだろうか、まことに徹底している。チンピラにもならない若者たち三人のぶざまさ、恰好悪さを徹底しているのはいいけれど、
今見ると、のちの金田一シリーズの風景美の先駆という感じもかなりする。というか、この仕事を通じてシリーズのロケハンを兼ねていたような感じすらする。