prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「丑三つの村」

2020年12月21日 | 映画
「八つ墓村」のヒントになった昭和13年の津山二十八人殺しの実話を扱った西村望原作の映画化。

ロケ地になった村が実に不穏な雰囲気でスケール感もあるのだが、映画の内容が内容だから貸してくれる村などなかったのが、近くダムに沈むからというので使用できたという裏話(プロデューサーの奥山和由のインタビュー本「黙示録」より)がなんだか可笑しい。

出てくる女優たちが田中美佐子、五月みどり、池波志乃、大場久美子と綺麗どころばかりで、映画だからには違いないが、「北の国から」の富良野みたいにあんなに美人ばかりの村があるかとツッコミ入れたくはなる。

監督が日活ロマンポルノ出身の田中登だからだろう、セックス描写がロマンポルノ調というか、アダルトビデオ以前の疑似描写。
指とか銃口を口に含んで唾液でぬらぬらしたところをアップにして濡れた性器を暗示するという方法など古式豊かですらある。

古尾谷雅人はロマンポルノで田中登監督の「女教師」や「人妻集団暴行致死事件」などで危険な感じを出していたところの延長上の出演なのだろうが、割りと優しい感じで狂気がかったところは狙いなのかどうなのかあまり感じられない。

戦前のことで、結核で兵役につけないというのが男失格、非国民と見なされる重圧があったのだろうが、あまり実感は出ない。難しいところ。

古尾谷の生前のインタビューで地下足袋にゲートルというのはすごく動きやすい、スニーカーなどよりずっと動きやすいと語っていたのが印象的だった。
おそらく舗装していない地面、戦場での動きやすさとつながってくることなのだろうが、なかなかそういう感じは画面見ている分には伝わらない。

夏八木勲扮する有力者が銃弾を防ごうと何枚も畳を立てるのだがそのたびに弾は畳を突き抜けてしまう、しかしついに夏八木に当たることはない。一番殺したい奴を追い詰めても殺しきれない、というあたりに先の戦争における天皇の存在を暗示している気配もある。

クライマックスの殺戮に次ぐ殺戮はトビー門口による特殊効果(音波で弾着のスイッチを入れて銃を撃つのと服に穴が空いて血が噴き出すのをシンクロさせる)が採用されているのが大げさに言うなら歴史的意義。
門口はこの映画の製作の翌1984年にモデルガンの不正改造で銃刀法違反に問われて以後、活動を停止した。残念。警察がわざとのように(ではなく、わざと)見せしめ的に取締っているのだろう。






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