prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「水俣曼荼羅」

2023年03月10日 | 映画
曼陀羅とはよくつけたもので、一口に水俣といってもなんと色んな人がいるものかと思う。
患者だけでなくその家族、支援者、医師すべて。

これに対して驚くほかないのがそれに対する国や自治体の、のっぺりした官僚的で画一的な顔で、クライマックスの患者たちの怒りと、相対する役人とのすれ違いっぷりは絶望的なまでに酷い。
役人の態度が役割演技からとことん一ミリも出ない。また初めに判断した医者のメンツも絡んでくる。

前半の水俣病の有機水銀によるマヒは末梢神経ではなく脳に起きていたのではないか、だから患者によって症状がまちまちになったのではないかという(脳の発達デコボコによる発達障害がスペクトラムと言われるくらい多彩多様で分類が難しいのともおそらく近い)説を、許可してくれた患者の脳も解剖して立証する。
スモンにせよ末梢神経だと信じられていて脳そのものの障害だとわかっていなかった。

二本の針を並べて刺してみて一本と誤認するかどうかを調べるとか、襖に映写された脳地図とか、生の脳の断片、本物の脳ミソが意外と緑がかっているなど、実際に目で見える手作り感のある方法で説明したり調べたりするのが小川伸介の「ニッポン国 古屋敷村」の稲の生育の記録みたいなアナログ的なやり方なのが映画で見せるにはかえってわかりやすく、なんだかユーモラス。

脳の実物の標本が意外と濃い緑色。時間が経つとああなるのか。

水俣病の「風化」に、マスコミ特にテレビによる消費社会化が大きく影響している。NHKによるやらせがあったのが告発される。

先日、千葉県立美術館で催された江口寿史展に行ったのだが、水俣の恋愛の舞台としてのイラストがいくつも並んでいるのを見て、公的機関としては水俣病のイメージを払拭したいのだろうなと思った。
終わったことにしたがるのだな。

裁判を強引に幕引きにもっていく。
タテマえの上では三権分立といっても、実際には大きく見れば国家機関、国家権力であって、お仲間ということ。メディアもお仲間という構図が最近あからさまになってきたが、それは告発されてそうなったというより表沙汰になっても兵器と居直って居座っている結果。