prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「海上48hours 悪夢のバカンス」

2022年07月28日 | 映画
サメ映画、といってもピンは「ジョーズ」から色々あるが、キリのアサイラム製みたいに小学生の空想をまんまCG技術である程度もっともらしく見せられるのを映画館に持ってくるのはさすがにはばかられたみたいで、系統とすると「ロング·バケーション」式の海の中でサメが寄ってきて動きがとれなくなるワン・シチュエーション·スリラー。

キャストはちょっと顔を出すだけの役含めてきっちり7人で、冒頭から呑んで騒いで調子こいたノリで翌朝水上バイクで海に乗り出した5人の若者たちが事故を起こして身動きできなくなったところでサメが寄ってくる。

そこからどう助けを求めるかあの手この手を尽くして見せるのは定番ながらちゃんとやっている。
初めはまるで同情を呼ばないようなキャラも展開につれて次第にある程度感情移入できるように描きこんではいる。

ただサメが本能とか習性ではなく映画の作り手の都合で動いているのが丸出しで、あれだけ人が血を流していればまずそこを襲うだろうと思っていたらそういう優先順位がいい加減で、わざわざかなり遠くまでケガしたわけでもない人間を襲いに行ったかと思うとまた戻ってきて、人間以外にもエサはありそうなのにわざわざ「ジョーズ」よろしく執拗に特定の人間たちや食べられもしない船を狙ったりする。

こうやって比較してみると、「ジョーズ」の演出がいかにサメの(ありえない)意思みたいなものを思わせて不自然に思わせない腕前というのがとんでもなく天才的なものなのかがわかる。

比較するのはヤボ、には違いないが、冒頭から海中をまさぐるようなサメの主観ショットとか、人が泳いでいるつもりで海中から見上げると不器用にじたばたしているようにしか見えないショットとかを多用しているからイヤでも思い出すし、それを利用もしている。

ただ技術の進歩というのは大したもので、海原の大俯瞰というのは昔だったらそうそう撮れなかっただろうが、ドローンを使ったであろう高度から捉えたショットが随所に使われて孤立感を自然に出したし、それがそれなりに効いている。

あまりホメる気はしないが、85分と短いせいもあって退屈はしない。
午後のロードショー向き、というのかな。

ロケ地はマルタ、生き物は傷つけてませんという定番のお断りが出たのかもしれないが確認できず。
サメはCG製か波間を機械で背びれだけ動かしたのか、フルショットに近い獲物を咥えた画はちょっとよかった。