国立映画アーカイブで開催中の企画上映「東宝の90年 モダンと革新の映画史(1)」 での小特集の石田民三監督。解説書によると彼の代表作らしいが、なるほどそれらしい完成度。
1938年製作。
森本薫の戯曲から山本紫郎が脚色、全編お茶屋から一歩も出ず、登場人物はすべて女(珍しい)という、演劇的なリミットが明確な映画。
外に幕末の西軍が迫っているのもセリフと半鐘の音で暗示される。
そのためかえってお茶屋自体が多分に閉じた世界であることが端的に出た。
監督自身がお茶屋通いをしていた経験を生かしたというが、時あたかも舞妓の労働としての劣悪さがネットで告発されたタイミングでの鑑賞になった。
お茶屋のセット(美術 加東安英)が日本家屋の構造を生かして吹き抜けで奥行きを出し、人物配置と構図も見事、ときおり挟まれるパンやトラックアップが映画的センスを見せる。
ただ上映前のアナウンスにもあったようにプリントの状態のせいかセリフがいささか聞き取りにくく、英語字幕を読むところが多かった。
演出助手に市川崑の名前が見える。