ほぼ完全にテロに巻き込まれた女の子ひとりを追い続けて銃撃犯の姿はぎりぎりまで見えない。テロそのものもほとんど銃声と撃たれた被害者だけで暗示され、視界はほぼ完全に被害者と一体化している。
エンドタイトルで「真実はひとつにあらず」という監督のエリック・ポッペ(つい先日、旧作の「ヒトラーに屈しなかった国王」を見たばかり、あれでも手持ちカメラを多用していた)の言葉が出る。
ここでは被害者視点の大状況がまったく見えなくなっている視界狭窄に陥っている、陥らざるを得なくなっている世界観を観客に体現させたわけだが、おそらくテロリストの世界観も移民や違う人種や価値観の持ち主に対してまた違う形の視野狭窄に陥っているのを暗示している。
もっともまったく途切れないワンカットというのも慣れてくると、あ、そうだったっけとふと思い出すくらいになってしまう。
72分の出来事をリアルタイムの72分ワンカットで描くとしても、そこにあるのは現実の時間ではなくてやはり映画の時間ということ。
撃たれた被害者が死んでいくのに寄り添った腕にとまった蚊を叩かないでじっとそのままにしているあたりの「命」に対して鋭敏になっている感じの出し方が印象的。
それにしてもあんなに都合よく蚊がとまるとは思えず、CGなのだろうがまったくわからない。
ノルウェー連続テロ事件 - wikipedia
「ウトヤ島、7月22日」 - 公式ホームページ
「ウトヤ島、7月22日」 - 映画.com