prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「ダークナイト」

2008年09月27日 | 映画
すでに伝説となったような演技を見せるヒース・レジャーのジョーカーが、次々と警察や検察といった法と秩序の番人の先手をとって、秩序そのものを崩壊させて混乱=カオスに叩き込み、事実より情報と疑心暗鬼の方に踊らされる群集心理を煽る、その手口の巧妙で多彩なこと。あれよあれよという感じに二転三転する、その振り回し方自体がジョーカーの、また映画の手口になっている展開。

バットマンは「正義」の側に立っているようであくまで法と秩序の外に立っているので、混乱をもたらす側と目されてしまう。舞台はゴッサム・シティというより普通のアメリカの都市の感じ。
しかし、アウトサイダーだからこそ、混乱にとらわれずに外から「正義」を守護できる騎士になれるというラストに至るまでのロジックの積み上げが見事。

世界観やアクションなど、奇想天外のようで現実にありうる範囲を外さないリアリズムを通していて、それだけに「現実」が崩壊していくような感覚が生々しくて不気味。暗い、といえば、ティム・バートン版の「バットマン」の暗さは個人的なコンプレックスの上に立っていたのに対して、ここでは世界の方が崩壊に瀕している。日本ではそれほどでもなかったが、これがメガヒットする世の中に対応しているのだろう。

十年くらい前にはキレた悪役ばかりの印象だったゲイリー・オールドマンの実直な警察官役がはまっていて、こっちが地みたいに思えてしまう。どっちも芝居なのだろうけれど。

冒頭に「プリズンブレイク2、3」のマホーン捜査官ことウィリアム・フィクナーが出てくるが、ずいぶんな扱い。
マフィア役にジュリア・ロバーツの兄貴のエリック・ロバーツ。前はジュリア・ロバーツの方がエリックの妹と言われていたが。
(☆☆☆★★★)


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