prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
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「闇の子供たち」

2008年09月23日 | 映画
ラストで唐突に江口洋介扮する新聞記者の「隠された過去」が暗示的に浮かび上がってくるのだけれど、それまでの行動や性格づけにこれといった対応する伏線がないのでひどく唐突な印象を受ける。意外性でまとめる話ではないと思うのだが。
普通の新聞記者なら、ああいう動機がなくてもあまりにひどい社会問題に対してなんとかしたいとするだろうし、そうでないと困る。

宮崎あおい扮するNGOが「どうせ自分探しだろ」と新聞記者に揶揄されるところがあるが、そう言う記者にせよ基本的には部外者で、どちらも本当に日本とタイに横たわる、命の値段にまで多寡がつけられる貧富の差の構造的問題にどの程度コミットできるかは疑問で、そういう限界は映画自体にも当然あるのだが、欠点としてあげつらうことではないだろう。
ただ当事者であり、一方的な加害者とばかり決め付けられない、子供の心臓移植を望む鈴木砂羽と佐藤浩市の夫婦のドラマはもっと見たかった。

阪本順治監督の旧作「トカレフ」に、誘拐された子供の死体がゴミ袋に入れられて捨てられている場面があったが、今回ではエイズにかかった子供が自分の力でゴミ袋を破って外に出てくる。しかしその目に映るのは本来なら生命の象徴である太陽でなく、そのネガともいえる月(月の映像が冒頭から頻繁に挿入される)で、結局命を長らえることはできない。そこからラストの平和な川で遊ぶ子供たちの映像には願望交じりとはいえやや飛躍がある。

東南アジアでの小児買春については、宮崎勤事件の時から知識としては知っていることが多かったが、小児愛好者たちの醜悪さが映画自体にまで及んでいないのはありがたい。さすがに臓器売買までは画面に出していない。どの程度演じる子供たちがわかっているのか、わからせているのかは気になるが。

タイのバンコク映画祭での上映が中止になったというが、ある意味「靖国」が日本で上映が危ぶまれたのと似ているのかもしれない。外国人に自国の恥部を曝け出されるのは気分がいいものではないだろうが、中止というのは残念。
(☆☆☆★)


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