prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「バス174」

2007年03月24日 | 映画
ブラジルの貧困層の恐るべき悲惨さと、刑務所が国家の暴力装置そのものとして機能しているのを、バスジャック事件のニュース映像とカットバックして描く、作者の意図と主張がはっきりしたドキュメンタリー。
犯人が投降しないのは、刑務所に行く方が恐ろしいからで、犯人の殺し方も不必要な見せしめ的残酷さと隠蔽体質がつきまとう。

直接の関係はないけれど、ペルーの日本大使館人質事件で突入後の特殊部隊が制圧後外からは見えない(もちろんテレビにも映らない)中でテロリストに何をしたか、というのが「お笑い日本の防衛戦略―テロ対策機密情報」で語られているけれど、見せしめのために首を切り落としたり、女性テロリストをレイプしたり、と、それはもう陰惨なもの。
口止めされたので頭がおかしくなった人質もいたとか。

この映画のメイキングで監督が語っているけれど、バスジャックだと四方八方から見ることができるので、密室でコトを済ませるわけにはいかなかった、というのがこの映画の作者が公権力と大メディアとの結びつきに割って入る余地を与えた、と言えそう。

「ダーティハリー2」の私刑警察のモデルは南米に実在した殺人部隊だそうだが、偏見か知らないが南米の警察・軍隊はなんか法が許す範囲を超えてリンチに走る傾向があるよう。
日本だって無縁なわけはないが。


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