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「fashion PLASTIC」ロックマガジン社

2019-10-27 | Plastic考


 この何カ月か、かかりきりになっていたプラスチックの図解本、ようやく脱稿す。やっと一息ついたので閑話休題。

 この企画のきっかけになったのが、ロックマガジン社から1980年に刊行された隔月雑誌「ファッション」第2号の「プラスティック」。このうちの翻訳部分を担当したのだが、あまりに昔のことで、ほとんど記憶がない。唯一鮮明に覚えているのは、モノマーをつなぎあわせるとポリマーになり、がっちり手を組んで離さない、というプラスチックの基礎中の基礎くらい。今では中学でプラスチックの物性について習うそうだが、当時はそんなことは学ばなかったし、ましてや文系なので化学用語はちんぷんかんぷん。辞書と格闘しながら、プラスチックの不思議をひも解いていく作業に、スリリングな高揚感を覚えたことだけは記憶に残っている。

 当時の世の中は、プラスチックの未来についてあまりにも楽観的だった。ポリ塩化ビニル製のレコードのことをヴァイナル(ビニール)と呼び、人類が滅びても、ヴァイナルは音楽を閉じ込めたまま地球に残り続ける、などと、ロマン主義まるだしでプラスチックが賛美されていたっけ。

 それが今や、世界は脱プラスチックに向かってる。でも素材としてのプラスチックに罪はない。プラスチックが夢の素材としてきらきら輝いていた時代を振り返りたくなったとき、ふと思い出したのが40年近く前のこの本だ。幸い引っ越したばかりで、片付け途中の段ボールの中に、それはあった。

 読み返してみても、自分が訳した実感はやっぱりなかったけれど、もう一度プラスチックというテーマに取り組んでみたくなった。そのとき出版社からは別のお題を出されていたのだが、急遽プラスチック企画に変更して、今ようやく最後の作業を終えたしだい。

  再読再勉強

 そして、まったくもって遅ればせながら、ロックマガジン編集長だった阿木譲氏が昨年亡くなっていたことを、つい先日知る。海のものとも山のものともつかない学生を信頼して、次々にハードルの高い翻訳課題を与えてくださったことに感謝するとともに、謹んでご冥福をお祈りいたします。

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