北の心の開拓記  [小松正明ブログ]

 日々の暮らしの中には、きらりと輝く希望の物語があるはず。生涯学習的生き方の実践のつもりです。

最北の地で水素はビジネスになるのか

2015-08-24 23:19:33 | Weblog

 今日の日経新聞は大々的に水素関連ビジネスの展望について紙面を割いています。昨年閣議決定された国のエネルギー基本計画でも、水素は電気・熱に次ぐ第三の柱と位置づけられました。

【日経の水素シンポジウム】http://bizgate.nikkei.co.jp/innovation/symposium/

 水素が他のエネルギーに比べて有利な点は、それ自体の燃焼によって二酸化炭素を排出しないという低環境負荷であることと、風や太陽光など様々な一次エネルギーから製造が可能という日本のエネルギーセキュリティ上のメリット、さらには電池に比べると貯めたり運搬することなど取り扱いが容易だということなど。

 日経の紙面では、水素のメリットを活かして産学官が持ち味を発揮して知恵を結集して水素社会を創造する各団体の意見と取り組みが紹介されています。

 石油や天然ガスエネルギーの多くの海外に依存している我が国にとっては技術を結集して水素社会を実現することができれば鬼に金棒の国になれる大きなチャンスと言えるでしょう。

 実際、わが宗谷地域は風が強いことで知られていますがそれを活用した風力発電は効率の高さが自慢。一般的に20%も稼働すればペイすると言われている風力発電で、40%以上の稼働率を出せるのが宗谷の風。風のエネルギーを生かせる最高の土地の一つと言えるでしょう。

 そしてこの風力発電で得た電力ですが、全てを高圧電力として送ることができるわけではないため、余剰電力が発生しそれから水素を発生させれば産地に近いところで水素も得られるというメリットが期待されるのです。


     ◆  
 

 そんな水素ビジネスのの可能性について、先日、道庁主催の水素関連ビジネスに関する勉強会が稚内で開催されたので参加してきました。

 会議では冒頭まず道庁の担当者から道庁における水素関連政策の方向性が説明されました。道内に豊富な再生可能エネルギーや既存の向上などから発生する副生水素などの資源や技術を活かした水素社会の形成を目指すとのこと。

 12月までにビジョンやロードマップを作られると言うことなので、ぜひ積極的なリーダー的役割をお願いしたいところです。

 


 その後、日立製作所の水素関連事業ご担当の方から日立における水素社会実現への取り組みが紹介されました。

 基本的には我が国のエネルギーの課題をブレイクスルーする可能性のある素材として積極的に取り組んでおられるとのことですが、水素にはやはりまだまだ課題も多いのが実情です。

 水素には「発生させる」「貯める」「運ぶ」「使う」というそれぞれの段階があって、成熟していない現在ではそれぞれごとに課題があります。

 発生は水を電気分解することで酸素と水素が得られるのですが、これを貯めて運ぶというところがまだまだ技術開発中。

 日立さんではメチルシクロヘキサン(MCH)という液体の有機素材を使って水素を取り込んだり放出させたりすることに可能性を見いだしています。既に実証実験が行われていて、これを使うには低温の方が有利とのことで、寒い北海道にも向いているとのこと。

 しかし北海道の一番の課題は「使う」という点。それは使う量が少なければコストを安くすることが難しいという点です。

 日本では燃料電池車のための水素ステーションを、東京、名古屋、大阪、福岡の4大都市圏で重点的にモデル地区として設置し、燃料電池車の普及を後押ししたいとしていますが、これはやはり人口が多くて燃料電池車の普及が見込める地域から始めているということにほかなりません。

 日立さんによると、車の燃料電池に使われる水素は純度の高い「純水素」という形にする必要がありこれはどうしても高コストになってしまうのだそう。だから多くの需要があるところで始めないとコストに見合う事業として成立させることが難しいのです。

 では人口が少なくてそれほど需要の見込めない宗谷地域ではどうあるべきか。

 それには「車用の水素ではなく、水素を燃やしてエンジンやタービンの形で発電やエネルギーに変える使い方が現実的でしょう」というのが日立さんのお考え。

 水素って燃焼のエネルギーが小さいため、燃やしてもほとんど力が出ないのですが、「その点は既存の天然ガスや石油に混合させて使うことができ、どれくらいの水素を混ぜても大丈夫か、というところが技術開発の方向性ではないか」とのこと。

 全てが水素だけ、ということにはならないのかもしれませんが、地元の風から電力、そして水素という形にしたときのメリットを宗谷地域が享受できるようになってほしいものです。


          ◆  


 意見交換の場面では様々な質問が出されましたが、私としては水素社会がこの地域にとってどのように稼げる素材になるか、というところに関心がありました。

 水素は冒頭で書いたように、二酸化炭素を出さない低環境負荷という側面と、売れるエネルギーとしての二つの側面がありますが、北海道では二酸化炭素対策という側面よりは北海道が産出して稼げる素材としての水素に着目すべきだと思います。

 しかし売るためには人口規模が多いほどよい、という商売の原理から考えると人口の少ないところは不利。

 電気さえあれば水の電気分解でどこでも水素は作れるのですが、この不利な点を、すぐ近くの余剰電力で安く作れるというメリットで打ち消すことができるでしょうか。

 なんでも都会から始まるというのが悔しいなあ、とも思うところで、エネルギーも地産地消が一番良い、ということになってほしいところです。

  

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