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北の心の開拓記  [小松正明ブログ]

 日々の暮らしの中には、きらりと輝く希望の物語があるはず。生涯学習的生き方の実践のつもりです。

「ホワイトカラー消滅」を読みました ~ ぼんやりしたホワイトカラーではなくアドバンスドエッセンシャルワーカーに

2025-03-18 22:07:38 | 本の感想

 

 近未来の労働ってどうなるのでしょうか。

 生成AIがますます進化して、「ホワイトカラーの単純な仕事はAIに取って代わられるよ」と脅かす人がいます。

 半分は本当かもしれませんが、そこまでのこともないような気もします。

 日本経済の未来も含めての将来像を学ぼうと、冨山和彦著「ホワイトカラー消滅 ~ 私たちは働き方をどう変えるべきか」を読みました。

 帯には、「人手不足なのになぜ人が余るのか? 企業支援の第一人者が語る、激変する労働市場」とあります。

 本の冒頭でまず、リクルートワークス研究所が公表した「未来予測2040 労働供給制約社会がやってくる」に触れ、2040年に1100万人の働き手が不足するという衝撃の予測を紹介します。

 人口減少で労働力が激減し、日本では日常の暮らしが守られなくなるという恐れですが、一方でまた、「2035年時点の労働供給市場では約480万人の雇用減少が起きる予測もある」と述べます。

 雇用減少の要因は、デジタル・トランスフォーメーション、生成AIなどによる省力化・効率化によって人間が行う単純作業が消滅するからです。

 著者は労働市場を、「グローバル経済 vs ローカル経済」×「ホワイトカラー vs エッセンシャルワーカー」というくくりで論じるのですが、上記のような効率化はローカルにとってはプラスに作用するが、"深刻なのはグローバル経済の保わあいとカラーだ"と言います。

 つまりは都会のオフィスでパソコンを前に働くビジネスパーソンの大半が必要なくなるのだと。

 そしてローカル経済でも雇用はあれど賃金は相変わらず物価上昇に追いつかない低賃金に置かれる。

 グローバルの人余りとローカルのローカルの人手不足に対応するためには国を挙げて、グローバル経済では世界に対抗して高付加価値ビジネスモデルで戦うしかないし、ローカル経済圏の生産性を大幅に向上するしかない、と著者は言います。

 そうした国を挙げて舵を切るには、社会通念や常識、価値観も大幅に変えなくてはなりません。

 会社も「それ昭和」と言われるような"不適切にもほどがある"ような古い体質を脱して、男女の平等実現だとか年功序列廃止、ジョブ型労働への移行など考えられることは素早く変えなくてはなりません。

 そしてそれができない経営者しかいないような企業であれば、従業員はさっさと退職して、それが実現されている企業に移ればよい。

 そうすることで時代についていけない企業は退出を迫られ、ついて行けるところだけが生き残っていく。

 そのためには日本社会が頑なにこだわっている「雇用を守る」ということからは少し外れるけれども、働き手側はそれを恐れず、さらには働き手の側もリスキリングなどで勉強と能力を高めて、どこからでも引き合いのあるような自分になるべきです。

 エッセンシャルワーカーというと、頭脳労働ができない肉体労働者のイメージがありますが、そうではなくて、高度なスキルを持って社会を支える「アドバンスド・エッセンシャルワーカー」になるべきなのだと。
 
 またホワイトカラーであってもリスキリングなどによって自らの付加価値を高めて「替えの利かない人材」として生きる、あるいは企業なども視野に入れた経営人材として自分を高めて行く。

 わが身に振り替えると、うすぼんやりしたホワイトカラーとして生きてきた自分を恥じる思いもします。

 これからの時代を生きる子供たち、生産年齢世代には厳しい時代と言えそうですが、より前を生きる年寄りには少しでも社会の価値観を変える側に回って、次世代の邪魔をする障壁を取り除いてあげたいところです。

 間違っても「昭和は良かった」を持ち出して、古い概念に固執して社会の変化を妨げる側には回らずにいようと思います。

    
        ◆


 著書の最終章には著者からの「日本再生への20の提言」が列挙されています。

 曰く、①歴史的な大転換期の認識を共有せよ、 ②豊かなローカル、強いグローバルの国を目指せ、 ③人口減少の危機的局面を国と社会の再生の梃子とせよ…、とありますが、その④は、「シン列島改造論のすゝめ」として、「人口8000万人じだいに『多極集住』で『密度の経済性』を実現できる国づくりを、とありました。

 昨日の道総研さんのフォーラムでは人口減少の地域を支える地域経営団体が話題になっていましたが、もっと大きな視点でいうと、「この美しい国土を守り、そこで安全かつ豊かに暮らしてゆくためには辛抱強くコンパクト&ネットワークで中核都市と幹線道路沿いへの集住を進め、それに合わせてハード整備とインフラメンテナンスをサイバー技術・デジタル技術と連動して高効率に行うことが必要となる」というのが著者冨山さんの主張です。

 さて居性が歴史的な特徴である北海道での暮らし方をそのような形にシフトすることに抵抗があるとしたらそれは過去への固執なのか。

 果たしてそれができるのか。

 できなければやはり衰退しかないのか。

 著者は「変わらぬ忍耐は停滞する安定をもたらした」と述べていました。 

 著者の具体的な提案に対する答えを私たちは探して行動を起こさなければいけないという時代認識をもてるでしょうか。

 特に次代を担う若者に読んでほしい一冊です。


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