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北の心の開拓記  [小松正明ブログ]

 日々の暮らしの中には、きらりと輝く希望の物語があるはず。生涯学習的生き方の実践のつもりです。

掛川の「材料支給型公共事業」のその後

2025-06-30 23:33:48 | Weblog

 

 先日の掛川訪問。

 めまいが起きる前には元気に市役所の元後輩たちを相手に熱心な意見交換ができました。

 そんな話題の一つが「材料支給型公共事業」です。

 私がいた20年前の掛川では、行政にお金がないということもあって、地元からの道路の舗装要望に対して業者による施工をしてあげることができませんでした。

 そこで「生コンを地域に提供して、それを地元の人たちが自分たちで均して整えて」地域の道路をコンクリート舗装してゆくという取組が行われていました。

 大学の先生などはこれを"材料支給型公共事業"と呼んでいましたが、地域の協力によって地域の環境が整えられてゆく素晴らしい取り組みだと当時の私は大きな感動を覚えたものです。

 しかしそれは20年前の話です。

 今でもこんなことが行われているのだろうかと、地域共同を担当する部署を訪れて「今でもこれは行われていますか」と訊いてみました。

 すると「はい、今でもやっていますよ」とのこと。

 私はすっかり嬉しくなりました。さすがは掛川、民度は衰えていませんでした。

 当時の施工を見学した時の思い出では、今日はここを施工するというところに地域の男性が20人ほど集まってきて、道路の端に型枠の棒を置きその中に金属メッシュを敷いて待っています。

 そこに生コン車がやってきて、バックで施工箇所に生コンを落とし、それをその場で均したり一輪車で運んだりして全体に行き渡らせて、型枠の厚さに均すとコテで表面を仕上げ、最後にほうき目をつけて完成という感じでした。

 地域には必ずコンクリートを均したりコテで仕上げたりすることが得意な人が表れて作業をリードしてきちんと施工を仕上げるのでした。

 次の生コンが来るまでは休憩時間でこういう場に出てきた人のことを「けぶ役」と言うんですよ、と教えられました。

「けぶ役ってどうしてそういうんですか?」と訊くと「煙草を吸うので煙(=けぶ)役」とでもいうんでしょうかね、という答えでした。

 地域の共同作業はこうして行われるのだと大変興味深く感じたものです。


      ◆


 そんな思い出を語っていると、「いやあ小松さん、最近は少し様子が変わってきましたよ」と教えられました。

「え?どういうこと?」

 するとその担当者は、「小松さんがおられたころは確かにどこもみな自分たちで施工したものですが、今は地区によっては『自分たちでは施工できない』と言って、生コンは受け取るんですが、そこから先の施工は業者を頼むというところが出てきたんです」と言うではありませんか。

「えー?こういう地域を維持管理するノウハウとかスキルなんて、農村地帯の掛川なら地域の伝統として受け継がれているのじゃないの?」
「小松さん、代替わりが進んで人口もへりつつあって、そういう良き伝統がだんだんに廃れつつあることを感じます」

 
 さすがにまだ全面的に行政に頼るということはないのですが、地域の人たちに地域を維持管理する作業ノウハウやスキルが失われつつあるというのはとても残念です。

 人口減少というけれど、それは頭数が減ってゆくということに加えて地域にノウハウやスキルを持った人たちが消えて行くということなのだ、と強く感じました。

 であればこそ逆に、一人ひとりがより強い気持ちで地域を支える気持ちとノウハウを身に着けるような取り組みが必要になってくるような気もします。

 都会ではすっかり消え失せた「自分たちのことは自分たちで」という精神がいまだに何とか息づいている地方都市ですが、その未来は明るいものではありません。

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