北の心の開拓記  [小松正明ブログ]

 日々の暮らしの中には、きらりと輝く希望の物語があるはず。生涯学習的生き方の実践のつもりです。

攻めの魅力と守りの魅力

2012-02-22 23:14:08 | Weblog

 私は札幌の滝野すずらん丘陵公園を始めとして、国営公園という大規模公園の建設や維持管理に長く携わってきました。

 こういう公園を作ったり管理したりすると、どうしても利用者は人間であるという現実を考えることが多くなり、人間とは何か、どのようなことを好ましかったり快楽と考え、どのようなことを嫌悪したり忌避しようとするかをひしひしと考えるようになります。

 公園の維持管理では、事業の意義の対外的な説明のためにも、少しでも利用者を増やすことへの要求が強くなり、そのことへの工夫やノウハウを蓄積することになりますが、このことは案外観光や地域振興にも使えることが多いことに気がつきます。

 大きな公園における利用者の現実として、「全体の7割のお客様は、入り口から距離にして数百メートル以内でしか移動しない」ということがあります。

 広い公園を作ると、魅力的な施設を入り口からちょっと遠くに作って、より遠くまで広く公園を使って欲しい、と計画しがちなのですが、それは利用者心理に反していて、利用者は少しでも歩かない方を選択したがっている、というのは公園関係者の間ではよく知られたことがらです。

 珍しい植物などで自然観察の愛好家を呼ぼうと思っても、そういうことが本当に好きでどんどん奥まで歩くのが平気な人は、全体の1割かあるいはそれ以下しかいない、ということも分かります。

 また、公園計画では管理用スペースがとにかくいじめられて、来園者が利用出来る施設ばかり置きたがるのですが、本当に来園者のホスピタリティを考えると、かなりの部分をバックヤードとして管理用に割くべきだ、ということも言えます。

 初期の公園づくりでは、こうしたことが分からずに管理のために必要な面積を不当に少なくして管理担当スタッフとの軋轢を生んだものです。最近は少しは改善したのでしょうかね。


    ※    ※    ※    ※




 こうした公園計画のノウハウの中で感じているのが、「守りの魅力」と「攻めの魅力」という二つの要素のことです。

 「守りの魅力」とは、利用してみて安心出来る備えがあるということで、例えば女性用トイレの数や使いやすさ、駐車場が大量にあって絶対に入れるという安心感、中での案内が親切で迷うようなことがないこと、分からないことがあった時のスタッフの応対が心地よいことなどです。

 これらは、それ自身のために行こうとは思いませんが、誰かを連れて行こうと思うときに安心感が得られるということはあります。

 例えば、きれいな女性用トイレがたくさんあるからあの公園へ行こうとは思いませんが、デートに誘ってもあそこなら安心だ、ということにはなることでしょう。

 そして「攻めの魅力」とは、そこにしかないというオリジナリティや唯一絶対性の魅力のこと。

 ただの観覧車でいいのだったら遊園地はいくつも選べます。しかし、ミッキーやミニーに会いたいと思えばどんなに混んでいようがアトラクションで待たされようがディズニーランドへ行くしかありませんし、マリモを見たいと思えば、阿寒湖畔へ来るしかないわけです。

 太陽は毎日西に沈みますが、それを「世界三大夕日」と位置づければ、まあとりあえず国内で行けるのは釧路しかない、ということになります。

 道の駅スタンプラリーで、全駅のスタンプを制覇しようと思ったら、どんな辺境にある道の駅でも一度は行かなくてはなりません。

 このような、どうしてもそこへ行くしかないという魅力を私は「攻めの魅力」と名付けていて、『わが町の資源を再発見しましょう』などというのは、改めて『ここにしかない唯一の魅力』を探して大いに磨きましょう、という事に他ならないのです。

 そして「守りの魅力」と「攻めの魅力」はこの両輪がバランスしていることが重要で、どちらかが欠けると低い方に評価が固まってしまいます。

 逆に唯一性を打ち出すのが難しいシティホテルになると、アメニティとしてのインターネットやシャワートイレの有無、枕での差別化があっても、それらでも競争にならなければあとは朝食が無料とか、料金が安いと行った価格競争になってしまうのです。

 顧客の不満を解消して、とにかく他にはない魅力を付加するという改善を永遠に続けるのが客商売の基本となります。

 ホテルでも地域の観光振興でも、多かれ少なかれその要素は変わらないことでしょう。

 土地や自然の恵みで優位性を打ち出せないならば、面白くて変わったまちづくりで人を呼ぶことだって可能です。

 掛川のスローライフにはそんな側面もありました。みんな生涯学習とスローライフを知りたくて掛川へ見学に来たのです。本物のまちづくりの工夫は皆が勉強したいコンテンツです。

 攻めと守りの魅力。それぞれの強化に頑張りましょう。 
 

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 湿地のワイズユース | トップ | 釧路での大規模太陽光発電事業 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

Weblog」カテゴリの最新記事