昨日中頓別で開催された「天北線軌道跡をかつ利用したロングトレイルの実現可能性」を考えるシンポジウムが開催されました。
ロングトレイルとは「歩くこと」そのものを楽しむ旅のスタイルのこと。
歩く道も、林道や遊歩道はもちろん、あぜ道や田舎道、それらをつなぐための国道だって良いのです。
登山のように苦労してピークハンティングをすることはなく、歩きながら景色や自然、歴史を楽しむのが良いところです。
今回は道内の先駆的な事例として、美幌町・大空町・津別町の三町で連携して進めている「屈斜路カルデラ外輪山トレイル整備について」を取り上げ、美幌地区三町広域観光協議会事務局長の信太真人さんにこの三町が進めているロングトレイル構想とその進捗状況について基調講演をしていただきました。
「屈斜路湖カルデラ外輪山トレイル」(以下「屈斜路湖トレイル」)については、屈斜路湖の外輪山東側の尾根筋を通る22㎞ほどのコースです。
もともとそんなことをやりたいね、という声は地元に以前からあったものの自然破壊を恐れる環境省がなかなか許可しなかったもの。
それが国立公園の魅力を向上して外国人観光客などにも利用してもらおうという政府肝入りの「国立公園満喫プロジェクト」が2016年に始まってからはその態度ががらりと変わって、積極的になってくれたとのこと。実際に実施に向けた合意ができたのは2019年だそうです。
令和元年度には尾根筋のクマザサの試験伐採をしてみたが、三日間でやっと1kmしか進まず、その大変さに心が折れたそう。
並行して先進事例の勉強として長野県の信越トレイル視察研修も行い「当時16市町村が連携し、平成12年からやって20年に開設」と聞いて、時間がかかりそうとは思ったものの感銘を受け、2020年には外輪山コース22㎞を調査しました。
令和2年にコロナ対策助成金を環境省からアドバイスされて、「ハンマーナイフモア」という笹や細い樹木もハンマーでなぎ倒すという高性能の機械が買えて、これで道づくりが格段に進んだ。
令和3年度はまた笹が生い茂ったが機械で道を確保し、モニターツアーを何度も行って、ルートの問題点や良さを確認しあっているとのこと。
少しずつ認知度が上がってきたが、町民にはまだ広く知られておらず、その一方で「いつやるんだ」「早くしてくれ」という声も増えてきた。
令和4年度になって補助金頼みから脱して、三町の行政から150万円が確保できた。
行政界としては三町の枠組みの外の弟子屈町にも土地が入り込んでいて関わりがあるが、そこは美幌町からサポートしてもらっている。
最終的には林野庁などの地主から土地を借り受けて管理することが必要になるが、林野庁は土地を町になら貸したいという意向で、今後の調整が必用。
トレイルルートのモニターツアーをやると、アップダウンはないし、湖の景観は良いし、参加者はその良さを実感するが、一方でやはり「トレイルづくりは自然破壊、やってほしくない」という意見を持つ勢力もあり、そうしたことも今後の調整材料になるだろう。
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信太さんは、何年もモニターツアーを行う中で、広大な笹原の風景や眺望の魅力で、ツアーを商品化して売り始めたら売れる、という感触はもてているのだそう。
エージェントからは「早く売り出してくれ」という声も増えているが、土地の借り受けなど事前の手続きがまだ終わっておらず、実現に向けて調整を急いでいます。
今後の課題としては、「一番はやはり管理体制です。協議会でやってゆくには限界があり、しっかりした団体、会社に委託できるような形が望ましい」と言います。
また信太さんは「屈斜路湖外輪山のトレイル開設時期は令和6年ころを予定している」と言い、「今回天北線の軌道後を試歩してみたが、古い鉄橋や駅関連の施設などが残っており、鉄道ファンのアンテナにうまく引っかかれば大いに人気が出そうと感じた。開設時期ももしかしたら我々よりも早く使えるようになるのではないか」という感想を述べられました。
ただ道を歩くだけ、というロングトレイルの取り組みですが、地域の資源を新たに発見する一つのツールにはなりうるはず。
お年寄りや鉄道ファンなど様々なジャンルの方にこの地域を歩くことの魅力をうまく訴求して、中頓別町を歩いて楽しい町にしてほしいものです。