駒子の備忘録

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宝塚歌劇団花組『元禄バロックロック/The Fascination!』

2022年02月05日 | 観劇記/タイトルか行
 宝塚大劇場、2021年11月6日13時(初日)、7日11時、30日13時、18時(新公)。
 東京宝塚劇場、2022年1月4日11時、2月1日18時半。

 花咲き乱れる国際都市、エド。我々の知る日本とよく似た個の国では、海外のさまざまな最先端科学を取り入れた百花繚乱のバロック文化が形成されていた。幕府を筆頭に市民たちもハイカラな南蛮文化に夢中で、一方で義や忠、武士道といったものは忘れ去られ、合理性の名の下に金や権力のみが重視される世界になっていた。元赤穂藩士のクロノスケ(柚香光)はある日偶然にも時を戻せる時計の発明に成功し、時を戻すいかさまで賭場で大儲け。だが何故か女性を相手にすると誤作動して上手くいかない。そんなクロノスケを見て楽しそうに笑う賭場の主・キラ(星風まどか)。キラのきらめく笑顔にクロノスケは心をざわめかせるが…
 作・演出/谷貴矢、作曲・編曲/太田健、多田里紗。架空歴史物の忠臣蔵ファンタジー。

 初日の感想はこちら
 その後の感想も、だいたいはここに書いたとおりですね。
 東京まで来ても台詞の「口車に騙される」「精算をつける」という誤用(正しい慣用表現は「口車に乗せられる」「決着をつける」)が修正されていないのは残念でした。歌劇団は可及的速やかに脚本に校閲を入れてください、みっともないです恥ずかしいです。
 あとは、クロノスケとキラにだけ見られましたが、ナチュラル芝居というかテレビ芝居というか素っぽくしようとする芝居というか、要するに声が小さく早口になるアレはなんだったんでしょうか?という疑問が残りました。今まで観たことがない例なので、わざとやっているんだと思うし演出の指示もあったのかなと思うのですが、声がマイクに乗りきっていなくて聞こえないし、大劇場サイズではまったく伝わらない演技で意味不明でした。役がひとり言のように、本心のようにぼそっと言う、という演技、芝居に至れていない謎仕草でした。いいと思ってやっているなら早急に改めていただきたいです。
 クロノスケがキラの両肩に両手を置いて、その手を握ったり開いたりする仕草も謎だったなあ…何を表現しているのかさっぱりわかりませんでした。普通に肩を抱けばよくない? あるいは掌をそのまま肩に置けばいい。何故手首を置いて掌を浮かせるのか? だから掌のしどころがなくなっちゃうんでしょ? それでただグーパーしてるとか…悪目立ちするんですよ。感染防止で接触を避けている…とかでは全然ないじゃん、他ではベタベタ密着してるんだからさ。なんで誰も何も言わないんだろう…
 …と、細かいことで気になることはいくつかありましたが、おおむねは楽しい、よくできたラブロマンスだったと思っています。タイムリープものとしても、キラの髪型の変化含め何周か繰り返しているのをひとつながりにして観せているのだ、という構成もいい。忠義のための死より建設的な和解を、というテーマもいい。ただし何度も言いますがそれは国のためなどではなく、あくまで民のため、己たちの幸せのため、という視点はあってほしいですが。ツナヨシ(音くり寿)は為政者ではあってもそういう視点を持った名君だと思いますよ、民のために国があるのではなく国のために民があるのだと考えるような残念な現代日本の政治家たちに自分を重ねるのはやめましょうねタカヤ…

 大劇場新公も観られたので、以下簡単に感想を。てか東京新公も友会が良席を当ててくれていたのでホント楽しみにしてたんだけどなー…進化を観たかった、残念です。
 らいとは今月号の「歌劇」でチャームポイントについて自分でも「身長ですかね(笑)」と回答しちゃうお茶目さん(笑)ですが、タッパがあってデーハーなお衣装が映えて、センター力がたいしたものでした。出番の多い主人公で集中力を保つのが大変そうで、あっぷあっぷしているきらいがなきにしもあらずでしたが、その一生懸命さがクロノスケの優しさやひたむきさ、根が真面目な感じにつながって、気持ちのいい好青年っぷり、主役っぷりになっていたと思います。歌もまっすぐに歌えていました、これからがさらに楽しみですね。
 あわちゃんは逆にちっちゃくて、まどかのお衣装に埋もれて見えるようなところがありましたが、可愛くはっちゃけていて頼もしかったです。なんか口が四角に開くんですよね、カワイイ! 好き!! 私は星空ではなく美羽派です!!!
 そしておおおぉナニこのワルヒゲイケオジ素敵ヤバい惚れる…!ってなったのがコウズケノスケのだいや。よかった! きみの新公主演もきっと観る!! カエデが都姫ここちゃん、美人! ツバキが稀奈ゆいちゃん、声がよかった!
 タクミノカミは天城れいんくん、こちらもプリンスっぽくてお役にぴったりでした。
 クラノスケは芹尚くんで、上手いし手堅いけど華はなかったかな…でもリクの星空ちゃんは役作りを工夫していて好感を持ちました。こういう役どころの経験、大事!
 ヨシヤスのたおしゅんも華があったなー。そしてツナヨシは愛蘭みこちゃん、こちらも可愛くて歌えてパンチあって絶品! ケイショウインは私が大好き咲乃深音ちゃんで、しっとり美しかったです。
 鞠花姐さんのところのアヤメ、三空凛花ちゃんがさすがハキハキと美しく、和海しょうのところのヒサミチ、涼葉まれくんも歌が良くてダンスだけじゃないのね!と開眼しました。 あ、らいとのところのヨミウリの遼美来くんも可愛かったです。


 レビュー・アニバーサリーは作・演出/中村一徳。
 綺麗で華やかで楽しかったけれど、やはり長くてやや間延びしていましたかね…往年の名曲をスターが歌い銀橋を渡る、というのに頼りすぎな気がしました。誘えば観るし楽しんでくれるけれど何度観せてもスターの顔や名前を覚える気がいっさいない、という知人を同伴したときに、やや退屈している気配が感じられて、そりゃそうだよなこのターン意味不明だもんな、と思ったのです。お芝居仕立ての場面が後半にもうひとつあってもよかったと思います。
 ただ、銀橋はよそのショーもこれくらい使え、組子もこれくらい出せ、とは思いましたね。どなたかのツイートで組子を出し過ぎ、知らない生徒も多かったみたいなことを言っているのを見かけたんですけれど、そらアンタがこの組を全然観ておらず組ファンでなく組子を知らないだけやろ、と思いましたね。組ファンなら全員の名前と何故ここに出せてもらえているかの説明ができたと思います。普通に納得の人選、ピックアップですよ。腹立ったなーアレには…
 私は「ピアノ・ファンタジィ」場面の再演なんかもとても意義があることだと考えていて、こういうことは今後も折に触れてやっていくといい、と思いました。観劇したOGが軒並みここの感想をインスタなんかで語っていたのも微笑ましかったです。
 でもマイティーの大羽根もエトワールの素敵ドレスも結局最後まで叶いませんでしたね…それは非常に残念です。反省せーよ劇団…
 今回も東京中盤に長期の公演中止期間があって、生徒さんは本当に大変でしたでしょうが(太った人も痩せた人もいた…)、明日がいよいよ千秋楽ですね。帝国劇場『笑う男』が開場後に初日中止となったように、幕が上がるまで、いや降りるまで油断ができない世の中ですが、引き続き健康と安全第一にがんばってください。無事の上演を祈っています…! そして星組と宙組の少しも早い初日を…!!



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