駒子の備忘録

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『ブロードウェイと銃弾』

2018年02月17日 | 観劇記/タイトルは行
 日生劇場、2018年2月16日18時。

 1920年代、禁酒法時代のニューヨーク。劇作家のデビッド(浦井健治)はかねてからの念願どおり自分の戯曲をブロードウェイの舞台にかけることになり、はりきっている。しかしプロデューサーが見つけてきた出資者はマフィアの親玉ニック(ブラザートム)。しかもキンキン声でろくに台詞も言えない愛人オリーブ(平野綾)を主演に据えろと要求し、部下のチーチ(城田優)を監視役として送り込んでくる…
 脚本/ウディ・アレン、オリジナル振付/スーザン・ストローマン、演出/福田雄一。1994年公開のウデ・イアレンの同名映画を自らミュージカル化して2014年ブロードウェイ初演、その日本初上演。全二幕。

 あゆっち目当てで出かけてきました。
 ブロードウェイのネオンサインや看板の美術(松井るみ)に「おお、『ガイズ&ドールズ』の世界みたい」と思っていたら(時代はちょっと違うけど)ナイトクラブでのショーガールのソング&ダンスが始まったので、まさにアデレイドが出てきそうでちょっと笑いました。ベタというか、まあ鉄板ですね。
 てかその前に、城田くんが銀橋(とはここでは呼ばないのかもしれないけれど、オーケストラボックスの手前に道ができていました)が出てきてマシンガンをぶっ飛ばしてタイトルロゴの電飾が点灯、という演出だったんですけれど、ゼヒそこで正面向いてスポット当てて拍手!としてほしかったわ。ハットで顔が見えないままさっさと引っ込んでしまったので残念でしたよ(^^;)。
 あと、原題は『BULLETS OVER BROADWAY』なんだけど、この「OVER」は訳しようがないのかもしれないけれど、「と」ではない気がします。なんかもっと散文調のタイトルをつけてしまってもよかったんじゃないかなあ、損している気がしました。あと、ウラケンと城田くんのダブル主演、凸凹コンビものみたいな売りをしているのかもしれないけれど、もっとショービジネスものだよとかバックステージものだよ、という宣伝の方が客入りが良くなったのではなかろうか…イヤちゃんと入っているなら大きなお世話ですが、集客に苦労しているとの噂を聞かないでもなかったので。
 でも、本当に楽しく観ました。何しろキャストに芸達者しかいないので、ノー・ストレスでソング&ダンスが堪能できるのが楽しい。幕間には、「初日が無事に開いて結婚式が何組か、みたいなハッピーエンドのオチかね?」と楽しくお友達と語らっていたのですが…
 まさかの、こんなコメディで、メインキャストに死人が出ようとは…!とちょっと驚いてしまい、怒涛の大団円にちょっとだけノリきれないで終わってしまったかな、というのが個人的な感想です。イヤこのシニカルさがアメリカン・コメディなんだよ、とか言われれば、まあそうなんでしょうねとしか言えないのですが。
 せめてオリーブは、魚とか海藻とかつけて初日打ち上げパーティーに復活してきてもよかったんじゃないの?と思います。大根女優だけど、殺されるほどではなくない? もちろんチーチ基準では芸術的でないものには死を、なのかもしれないけれど、それがウディ・アレン自身の主張でもある、ということ? でも金で役を買うのは悪とは言い切れないはずだとわかば沙良も体現してたよ?(作品混同) スポンサーがいなければ公演は打てないんだからさ…
 チーチは、芸術に殉じて死んだ、とされても仕方ないのかなと思うのです。ボスの女を殺したんだから報復されて当然だし、他にもいっぱい殺しているからその報い、というのもある。そして自分の作品を残せたからいいんだ、みたいな考え方もできる気がするからです。でもなあ、オリーブはなあ…
 オリーブと言えば、彼女のナンバーは下ネタ的にどうとかより長くて無意味なところがちょっと疲れました。だってソーセージって言ったとたんにもう出オチ感があるわけだからさ。キャラクターとしてこの手のナンバーが必要なのはわかるのでそれはいいんだけど、もっと短くすべきじゃないですかね?と思いました。まあ不愉快だし単純に笑えないんですよね。
 そして、こうなる筋だとわかった上で遡って考えると、デビッドのへっぼこぶり、というか彼の脚本のへっぽこぶりはもっと描いておいてもよかったのでは?と思いました。今、真面目な青年がやっと報われたように見えちゃうじゃん。でも他人の口出しや改変を受け入れちゃうようなへっぼこなんでしょ? 要するに「アーティストじゃない」ってことなんでしょ?
 ヘレン(前田美波里)は「私がつきあってきた男はみんなアーティストでクズ」と言っていたので、デビッドは結局アーティストではなかったからクズでもなくて、一男性としては普通でだからエレン(愛加あゆ)とくっついていい、ってことでこのラストなのかもしれないけれど、私はそもそも特段の理由なく長年の恋人との結婚を渋るようなこんな男はクズだと思いましたし、だからエレンが浮気し返してやったわ、みたいに歌うのに快哉を叫びましたし、なのにあっさり「本気にした?」なんて帰ってきちゃってちょっとガッカリでした。まあでも田舎にでも引っ込んで平々凡々の夫婦の幸せを手に入れればいいよ、あゆっち(の役)が幸せならいいよ。ふたりともアーティストでもボヘミアンでもなかったってことだし(エレンは何で生計を立てている女性だったのでしょう…?)、ここにもアレンっぽいシニカルさが表れているのかもしれませんしね。
 イーデンの保坂知寿ももちろん素晴らしく、ワーナーの鈴木壮麻ももちろん素晴らしく、アンサンブルもみんな女性は可愛くてスタイルが良くて、男性はカッコ良くてバリバリ踊れて、とにかく楽しかったです。お衣装もよかった。オリジナルのサントラとかがあれば買いたかったなあ。
 そして城田くんは私はロミオとかトートとか観ていますが、初めてお芝居がいいなと思いました。本当にこういうギャングに見えました。アドリブっぽいくだりもあるのかな? 沸かせていましたね。
 ウラケンも本当になんでもできる人ですよね。本当にみんな達者で楽しかったです。このメンツに入るあゆっち、やっぱりすごいよ! ますますのご活躍をお祈りしています。





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