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駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

宝塚歌劇花組『愛と革命の詩-アンドレア・シェニエ-/Mr.Swing!』

2013年11月23日 | 観劇記/タイトルあ行
 宝塚大劇場、2013年9月5日ソワレ。
 東京宝塚劇場2013年10月17日ソワレ、11月10日ソワレ。

 1789年7月14日、何百年もの間続いた封建制度に陰りが見えはじめ、政情不安を抱えた革命前夜のフランス。王侯貴族の理不尽な仕打ちに民衆の不満と怒りは爆発寸前だったが、貴族たちは不穏な社会情勢を理解しようともせず、旧態依然の生活を守り続けていた。パリ近郊のコワニー伯爵邸でも豪勢な夜会が始まろうとしていた。宴の準備に忙しく立ち働く屋敷の使用人たちのひとり、カルロ・ジェラール(明日海りお)は身分によって差別される不公平な社会に不満を募らせ、ルソーの思想に傾倒していた。一方、ジェラールが秘かに想いを寄せる伯爵令嬢マッダレーナ・ド・コワニー(蘭乃はな)は着せ替え人形のように飾り立てられる日々に虚しさを感じ、真実の愛に巡りあう日を待ちわびていた。そして、貴族社会を痛烈に批判する詩を書きながらも詩人として認められるために貴族たちと交わらなければならない現実に忸怩たる想いを抱えたアンドレア・シェニエ(蘭寿とむ)が夜会に現われる…
 脚本・演出/植田景子、作曲・編曲/吉田優子。ジョルダーノのイタリア・オペラ『アンドレア・シェニエ』を原作としたミュージカル。

 大劇場観劇時の批評はこちら
 批評というか、批判だったのですが。
 東京で改めて観て、話がわかって観るとまあまあ納得できないこともないし、役者の演技がそれぞれ深まって、特にアンドレアがただ泰然自若とふんぞり返って見えることはなくなっていて、ちゃんと迷ったり悩んだりしながら苦しい中にも自らの選択を貫いたのだと見えたので、なんとなくほっとしました。
 それでも牢獄にマッダレーナが現われたときに、「きみには生きていてもらいたい」とか言わせようよ、あっさり受け入れすぎだよ、すぐマッダレーナに論破されてもいいからまずは彼女を止めようよ、それさえあれば諸手を挙げて名作だと言えるのに、と思ったのですが、二度目に観たときに注意深くやりとりを聞いていると、マッダレーナが牢獄に入ってきたときアンドレアは彼女がレグリエ嬢(乙羽映見)の身代わりになったことを知らないでいるので、彼女がどうにかして面会に潜り込んできたものと思ってそれで驚いているんですね。
 それで最後の最後に再会できたことに喜んでいるうちに、彼女が真意や経緯を語り出し、驚き止めようとするんだけれど口を挟む隙がないままに彼女の決心が固いことに気づくので、説得をあきらめ受け入れ、ともに死ぬことで永遠に生きようという決心をするのですね。
 それがもっと伝わりやなるためにもやっぱりもっとていねいな台詞はあった方がいいかとは思いますが、そういうことならこの流れではこれが正しいし、美しいお話です。やっとある程度納得できて見終われてよかったです。
 それでも個人的にはやはりジェラールなどのほうにドラマがあるとは思いますが、同じように景子先生は個人の好みとしてアンドレアを主人公にこの演目を作ることに意味と意義を感じたのでしょうから、そこには口は挟めませんね。単に好みの問題ですからね。
 やはり「大恋愛もの」であるかという点においては少なくともマッダレーナにとってはね、というだけでまゆたんが望むものではなかったのではなかろうかという疑問は残るわけですが、おそらく当のご本人は納得し満足しかつ楽しくやりがいを感じて演じきったのだと思いますし、そこにも口は挟めないので黙りましょう。でも次の作品が、最後の作品が、本当に本当の大恋愛ものだといいなと思っている、とだけは言っておきます。

 というわけでまゆたんはある意味しどころのない役に説得力を持たせてさすがでした。
 蘭ちゃんもザッツ・ヒロインがきっちりできる娘役さんに成長しましたよねえ。でも残るのかなあ、個人的にはちょっと残念。
 本公演初参加のみりおもよく馴染んである種の儲け役でよかったと思います。二番手時代にいい役をいろいろたくさんやっておくのは本当に大切だと思うので。
 ジェラールと同様にドラマを背負うキャラクターだったジュール・モラン(春風弥里)のみーちゃん、惜しまれる卒業ですがこれまた素敵な役をもらってよかったです。暗い情念が似合うって素晴らしい。
 専科枠かよ、という渋い役どころをうまく締めただいもんも素晴らしい、きらりとはお似合いの夫婦役でした。
 アンドレアの弟で貴族に迎合して生きるマリー=ジョゼフ・シェニエ(華形ひかる)のみつるもよかったねこれもドラマのある役でした。恋人役はがりんちゃん、フツーに美しかったけれどどうするつもりなんだ…
 アンドレアの友人たちではキキちゃんよりあきらに目がいったなあ。まりんさん、マイティはきっちりいい仕事していました。タソにユキちゃん、さおたさんもね。
 新公ヒロインのひらめちゃんも大きな役をもらっていましたが、こういうキャラクターのあり方のざらつき感がいかにも景子先生ではある…とは思いました。

 ショー・オルケスタは作・演出/稲葉太地。こちらは単純に楽しかった!
 イントロダクションのヤンさん振り付けのザッツ・花男のスーツ場面、帽子にジャケット・プレイから始まって、青と金のお衣装のプロローグ。
 エトランゼ場面はぶっちゃけ3P場面みたいだったけれどダンスは良かったし、野球の場面は文句なしに楽しくて目が足りない。
 豪華客船の中詰めは歌い継ぎが楽しい。マスカレードの役替わりは柚カレー子ちゃんだけが見られませんでした、残念。
 リズムの場面も静謐な祈りから粋な活気へという流れが美しい。デュエダンは女が去ってフラれた男が肩をすくめて残る珍しいパターンでしたが、これまた粋で素敵でした。
 みーちゃんサヨナラ仕様は涙、涙のあたたかさ。こういうところがいいよねえ、とは思います。卒業時期にいろいろな事情はあっても最後は生徒さんの決断だと思うし、幸多からんことを祈ります。


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