駒子の備忘録

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宝塚歌劇宙組『大逆転裁判』

2023年08月08日 | 観劇記/タイトルた行
 梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ、2023年7月20日16時。
 KAAT神奈川芸術劇場、8月5日15時。

 歴史的な開国から数十年。文明開化の大号令のもと、極東の島国に西洋文化の大波が押し寄せる中、司法を学ぶため、大日本帝国から世界の中心と謳われる大英帝国へ赴く若者がいた。彼の名は成歩堂龍ノ介(瑠風輝)、すべては亡き友・亜双義一真(風色日向)の遺志を受け継ぎ、立派な弁護士になるために…
 原作・監修・制作協力/株式会社カプコン、脚本・演出/鈴木圭、作曲・編曲/吉田優子、伊賀美樹子。人気ゲームを原作に2009年から宙組で三度舞台化されてきたシリーズの新作。

 ゲームは触ったこともなく、前3作も生で観たのは3のみで、そのときの感想はこちら
 でも、楽しく観ました。ゲーム(とそのアニメ絵)を上手く舞台化できているんだろうな、というのは感じられましたし、まあリーガルものとして本格的に観るのはアレでも(笑)法廷での証言が重ねられて事件の真相がわかっていって…というのはスリリングで、おもしろく観られたので。
 事件、ストーリーともオリジナルなんですよね? ゆうちゃんさんのメニクソン(汝鳥伶)が大使を務めるゼングファ共和国というのは、前シリーズのヒロインだったれーれの出身国だとかなんだとか…? そういうつながりも描きつつ(今回の主人公は成歩堂龍一の祖先で、その龍一を宝塚歌劇ふうに翻案したお役がかつてのまゆたんのフェニックス・ライトだったんですもんね?)、かつてイギリスの植民地だった小国が独立を果たし、しかしまたも近隣諸国から侵略されそうで、イギリスもそれに加担しそうで…という国際情勢と軍事機密を巡る物語になっていて、なかなかに奥が深いと言えば深く、うならされました。そしてヴィクトリア女王(小春乃さよ。この学年にしてすでにせーこを越えてきた宙組娘役の司法違った至宝なのでは…!?)を演じたおさよちゃんの素晴らしさはもちろん、彼女が過ちを認め、謝罪し、過ちを正し、それが一番大事なことだときっぱりとのたまうさまには現代日本への政治批判、政権批判の視線すら感じられて、どーしたK鈴木…!と震えましたよね…(失礼…)
 そんな外枠がしっかりありつつ、宙組子ののびやかな肢体でゲームキャラがのびのび演じられるんですから、おもしろくないわけがないのでした。じゅっちゃんニーナ(天彩峰里)もオリジナル・キャラクターだそうですが、ゲームにハナからいそうな仕上がりになっていたのも素晴らしかったですね。これもなかなかできないことだと思います。
 バリッとしたフィナーレ付きなのもとても良き、美しいデュエダンもとても良きでした。ここの素晴らしい陰コーラスは楓莉かのちゃんとのこと。別箱公演のフィナーレについてはプログラムに記載がないことがほとんどで、ネタバレを避けているつもりなのかもしれませんが、こうした功績がないものとされてしまうのは問題なので、改善してもらいたいと常々思っていることのひとつです。
 最大の勝因はもちろん主題歌の強さかなとも思うのですが、当時のまゆたんよりもさらに、というか今の全組スター陣を見ても圧倒的に歌が上手いスターのひとりであるもえこが、のびのびと溌剌と楽しげに歌い上げる主題歌がとにかく強い。これこそが勝因でしょう。そしていわゆるキョドっちゃう、常におたおたしていてトラブルに巻き込まれがちな、けれど真面目でまっすぐでひたむきなこの主人公キャラを、もえこがそれこそ等身大ではなく、一皮剥けたスターの余裕すら見せてきっちり体現してみせたところが勝因だと思いました。つまりちょっと前のもえこなら等身大に一生懸命で、それがよかったね、ってなって終わり、だったと思うのです。今は違うもん、役と作品を掌握し凌駕し、地引き網もかくやでファンと観客を鷲づかみにして自分の魅力にたぐり寄せてたもん、たいしたものです。それだけのスペックを持つスターさんだったけれど、ついに開花キタ!感があったと思います。新生宙組の押しも押されぬ三番手スターとして、これからさらに活躍の場を広げてくると思います。イヤー、すごいな楽しみしかないな!
 ヒロインのブッキーも、いわゆるアニメ声とややエキセントリックになりかねない持ち味が、いい感じにハマりかついい感じに修正、矯正もされていて、デュエダンの仕上がりも素晴らしかったですし、宙娘下級生陣もいいぞいいぞ、とたぎりました。
 こってぃがまた一皮も二皮も剥けて余裕綽々の二番手っぷりで、こちらも性格的にはもえこ同様「俺が、俺が」ではなく「私なんて…」タイプだと心配していただけに、躍進っぷりに目を瞠りました。宙組の未来は明るいなあ!
 そしてそしてナニーロですよ! てか主人公が二言目には彼の名を呼びうっとり想いはせるって、どんな裏ヒロイン・キャラなのよ!! そこにまた、主人公以上にどかんとした体格の(補正がまた上手いんだこれが、だってお茶会のゆるふわスッキリほっそりした美しさ、ハンパないんですよこの人!?)ザ・漢!として現れ、でもすでに亡くなっているので回想というか亡霊というかイメージとして現れるので、不思議なインパクトを与え余韻を残して去る…という、なんて美味しいポジションなのか、かつそれがまた上手いんだニクいほどに! 『カルト~』のオークショニアも素晴らしかったけれど、別箱でこういうお役に巡り会える幸運もまたスターの証かと思っています。まさに躍進の時期、宙組の未来はますます明るいなあぁ!
 なっつ、キヨちゃんの上手さ手堅さはもちろん、夏目漱石役の凰海るのくん、グレグソン警部役の鳳城のあんくんも絶品で、そして私がわりと好きな、もっと二の線もやってほしいと願っている嵐之真くんもやっぱりしっかり上手くて、舞台に貢献していました。ヒロコやちっちは可愛い要因だったかもしれないけど、十分でしたね。ちっちはおもしろいところへいけるんじゃないかなあ…そしてどこでもまたいい意味で目立っていい愛未サラちゃん、今後にも期待しかありません。栞菜ひまりちゃんのご卒業は残念でした…お元気で……(ToT)
 原作ゲームファンにも好評なようで、何よりです。また、今回久々にこの企画ができたということは、前回シリーズが成功したという認識を双方が持っているからだとも思うので、それもよかったなと思いました。失敗して一回限りに終わるコラボなんて世にざらにあるわけですしね…
 超絶スタイル揃いでスマートでスタイリッシュで、悪がなく癖がなく悪く言えば薄味で弱い…かもしれない宙組子だからこそ、こういうザッツ2.5にハマるんでしょうし、『FF』も楽しみしかありませんね。まさに「新・生・爆・誕」、SE付きでお願いしたいところですが、まずは全員揃っての本公演お披露目にも、期待しています!!!
















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