駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

『翻案劇サロメ』

2010年04月22日 | 観劇記/タイトルさ行
 東京グローブ座、2009年10月20日ソワレ。

 いまだ日本全国は統一されておらず、小国が諍いを繰り返していた時代。この国もまた東国と睨み合っていた。この国の王(上條恒彦)は、かつての王であった自身の兄を滅ぼし、王位と妃(江波杏子)を奪った。妃には先王との間に美しい姫(篠井英介)がひとりいる。王はその姫にも秋波まがいの視線を送り、妃の心中は穏やかではない。そんな中、修験者(森山開次)が現れた…原作/オスカー・ワイルド、上演台本・演出/鈴木勝秀、詞章/橋本治、音楽/池上眞吾。全1幕。

 堪能しました。多分おそらく生まれて初めて読んだ戯曲がこの作品だったかと記憶しているのですが、「翻案」と言ってもセリフはほぼ原作そのままだったかと思います。ただ登場人物に名前がなく、装束から言って舞台は日本とされているのかも?という程度。

 王様と王妃様はばっちり。

 そして私はこれまで篠井英介の「女形」というものが今ひとつよくわかっていなかったのですが(『トーチソング・トリロジー』はあんなに感動しましたが、しかしあれはゲイの役だったのです)、この姫は本当に姫に、少女に見えた。そしてたとえば宝塚歌劇の男役が演じる男が実際の男ではないように、女形が演じる女もまた実際の女とは違うのだ、という感じがすごくして、とてもおもしろかったです。

 それにしてもこの物語は、登場人物はこれだけだし、とてもシンプルなお話なんだけれど、深くておもしろい。
 預言者は神の使いとして確かに正しいことを言っているのかもしれない。しかし王妃に不倫の罪があったとしても、姫には何の罪もない。だから姫を退けた報いとして、首を求められても文句は言えないのです。しかし恐怖した王は姫の処刑を命じて、幕は下りる。そのことこそがこの国の災いを呼ぶことなのであろう、という予感を残して…
 いつの世も女は罪なくして死、罪なき女を死なせる国は滅ぶのだ。そうでない国は、世は、いつできるのか?という悲痛な問いを感じました。
 そう、一点だけ。ラストのセリフは「あの女を殺せ」となっていましたが、「あの女の首をはねよ」ではなかったかな?
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« あき『オリンポス』(一迅社ZE... | トップ | 『ガス人間第1号』 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

観劇記/タイトルさ行」カテゴリの最新記事