駒子の備忘録

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『やぎゅダン』マイ初日雑感

2021年09月20日 | 日記
 星組大劇場公演『柳生忍法帖/モアー・ダンディズム!』初日翌日を日帰りダブル観劇してきました。いやー、楽しかったなー!
 『SH』『CH』マイ初日ではねちねち語りましたが、『YN』(あ、『柳生忍法帖』のことです(笑))はそういう種類のゴタゴタしたつっこみを書く気はあまりなくて、どこがどう楽しかった!みたいなことを語りたくて、帰りののぞみでポメラを開いています。
 ちなみに『CH』同様、原作は未読。遠征あるあるの、行きののぞみで持参の文庫を読み終えたので、さくっとキャトルで買いましてこれから読みます。舞台でだいたいのお話の流れがわかったから、読みやすそうです。というかオタクがひととおり抑えておくべき書として大昔に読んだことがある気もするのですが、何ひとつ覚えていないので…
 先日観た『ムサシ』で沢庵和尚と柳生宗矩が出てきて、オヤこれは?と思ったものでしたが、今回はみっきぃと朝水パイセンが演じていましたね。そしてこの柳生宗矩が勘当した嫡男が十兵衛、こっちゃんなんですね。実在の人物ではありますが、将軍・家光の小姓を務めていたのに勘気を被って再出仕まで空白の十二年間があるらしく、そこをアレコレ創作されたキャラクターのようです。
 配役とか、人物相関図とかではやたらキャラクター数が多く思えたので、ついていけるかしらんわかるのかしらん…とやや身構えていましたが、客席でバッタリしたお友達(初日から観ていた)に「問題ないよ」と言われたので、ゆったり臨むことにしました。…で、私は全然大丈夫でした(^o^)。
 プロローグ前のいわゆるアバンが気持ち長く、濃く、重い…というか情報まあまあてんこ盛りなんだけれど、ワケわかんなくなっちゃうというほどではないし、その後はおちついて観るとショーアップ度合いもいいしたくさんの組子にたくさんの出番があって、まあスター顔見せ度はその分気持ち割を食っている気もしますが、トータルとしてのバランスも良く、何より十兵衛先生がカッコいい! 大事!! こういうヒーローって意外に魅力を描くことが難しいことがあるけれど、なんせこっちゃんは声がいいし動けるし踊れるしで見惚れます! そしてもちろん脚本、演出が丁寧で、非常に魅力的に描かれていました。
 お話の基本モチーフが復讐なので、原作小説からエログロを抜いているそうですがそれでも凄惨ではある…かもしれないけれど、なるべく健全で健康的な方に持っていこうとする大野先生の意志も感じました。恨みを晴らしたい、というより不正義を正したい、という方に重みがややあるような。愛ちゃん銅伯のお家再興悲願ってのはわからなくもないわけです、ただ手下7人が悪逆非道すぎる。弑逆を楽しんでいるようなところがあるからです。それを成敗したいという物語になっている。総じて、エンタメ活劇として、よくできていると私は思いました。原作漫画のキャラ頼みっぽいところがちょっとありすぎたかなーと感じた『CH』より、宝塚歌劇の作劇としてさすがに上等だとも思いましたね。もちろん最近でいうとものっそい浸った『コルドバ』みたいなタイプの芝居とは違うので、どうしてもちょっとクルクルパタパタしちゃうところはあるんだけれど、これは回数を重ねるとより緩急がついてくるでしょうし、ファンがリピートするならもっと深いところまで楽しんでいけるんじゃないでしょうか。でも、ミーハーにさらっと楽しむこともできる、十分な出来の作品だとも思うのです。

 組子の布陣は、いわゆる敵方のラスボスが愛ちゃん、その娘がひっとん。配下の悪役7人衆がせおっち以下、かなえちゃん、ひーろー、あかちゃん、ぴー、かりんちゃん、さりおとわかりやすく男役スターメンツ。彼らを仇と挑む堀一族の女たちがはるこ、おとねちゃん、あんるちゃん、りらたん、いーちゃん、澪乃桜季ちゃんに小桜ほのかの華も実もある娘役陣7人。彼女たちの仇討ちをこっちゃん十兵衛が助太刀というか武芸指南する…という構造です。
 悪役たちのバカ殿がオレキザキ(『マノン』からの落差よ…! イヤしかしMVPかと)、堀一族を後援する尼たちに白妙なっちゃん、くらっち。悪役に使役される三兄弟に俺たちのルリハナ、星咲希ちゃんに綾音美蘭ちゃんと新進娘役を揃え、その姉が都優奈ちゃんでもちろんソロあり。華雪りら、水乃ゆりたんも中盤以降に出てくるちょっといい役どころを任されていて、堀の女たちの夫や兄弟には新進男役たちが居並ぶ感じ?(このあたりあまりくわしくなくてすみません) みっきぃ沢庵のところの見習い坊主がかのんくん。適材適所というか、グループ芝居も多いんだけれど、まとまっていて観やすいとも言えるかと思いました。まあ、わりと早々に死んじゃうあかぴーとか(亡霊?での再登場はありますが)、ずっと尼姿のくらっちとかは、ファンとしては寂しい…のかもしれません。こういうのは難しいところですよね…
 堀一族の処刑というのは史実だそうで、幕府の裁可を得た合法的なものだったそうですが、そこに不正義があったのなら幕府の方が悪い、とばかりに動く十兵衛の生き様が爽快です。最初に堀の女たちをかばうなっちゃん千姫も、武士の法、男たちの理はそれはそれとして、それとは別に、女の義を通したい、みたいなことを言うのですが、十兵衛はそっち側についてくれるのです。もちろん堅苦しいことが嫌いな反骨精神のためだけかもしれないし、事実やたらおもしろがって力を貸すのですが、でも本当は意気に感じている…というか正義は、そして情実は女たちの側にある、と考えてくれているんですよね。
 この、女性の話を聞いてくれる、尊重してくれるヒーローを描いてくれる大野先生に、「わかってくれてるよねえぇ…!」と私は思うのでした。大野先生も十兵衛もちゃんとしたフェミニストなんですよ! 私たち女が望んでいることは、女が望んでいることは何かをまず尋ねてくれること…みたいな言葉があるじゃないですか、アレですよアレ。十兵衛は、女の話だからと頭ごなしに馬鹿にしたり耳を傾けなかったり、しません。かたや、女の顔や身体しか見ず、利用し弄ぶことしか考えていない愚劣な男ども…という構図に、この物語はなるのでした。
 女の手による仇討ちだからって、色仕掛けで…みたいな発想にみじんもならないのがまた爽快です。女たちは武芸で仇に挑もうとする。もちろん体力、筋力、いろいろ不利なことは承知の上です。でも軍学があれば、そして決死の覚悟で修練し協力し一致団結すれば…
 ユーモラスな描写も多く、どシリアスすぎに展開するわけではないのが救いですが、それでも結局は刃傷沙汰になるので、陰惨ではあるかと思います。組子がずぶずぶ差され斬られて死ぬのを観たくない…という層もあるかもしれません。『婆娑羅』の、あたら子供にやらせんでも…ほどではないにせよ、男の理に泣かされた女が同じ土俵で戦い勝つことが正しいのか、という気もしなくもないです。
 でも、理想ばかり説いていても届かないときは仕方ない、実力行使でやるっきゃない…というようなことを大野先生は訴えているようにも思えます。正義を行使しない政権に対して、今できること、すべきこととは…なんてことまで私は透けて考えました。泥仕合は本当は嫌です、しかし逃げられない戦いというものが人にはあるのです…!
 天海大僧正の決断もまた、それによるもののようにも思えます。原作どおりなのかしらん、だとしたら山田風太郎すごいな? それともけっこうニュアンスが違うのかしらん? そこが大野テイストなのかしらん…?
 仇討ちを果たしたのち、女たちは弔いを語ります。これがまた、とても女性的な視線だと思いました。好戦的なばかりの男どもからはこういう発想は出てきません、ひとつ勝ってもまた次の敵を求めて猛るばかりでしょう。でも女は違う、切りがついたら潔く退くのです。そしてもしも女たちみんなが尼になっちゃったら、次の世代が生まれなくて人類は死に絶えちゃうんですけれど、そういうことを男どもは本当に一瞬でも考えないんでしょうかねえ? 考えたら、もうちょっと優しく賢くなれるはずだと思うんですけれど…といって母体としてだけ大事にされるのもごめんなわけですが、それすらできない男も多いってホントどういうことなの、馬鹿なの???
 でも十兵衛さまは、「俺だけが弔える、弔うべき女がいる」みたいにゆらのことを想い、語り、幕を下ろしてくれる…かわいそうだったゆらも、それで報われた思いがすることでしょう。三兄弟の姉への優しい嘘といい、ゆらへの最期の接吻といい、十兵衛さまは徹頭徹尾、女の側に立ってくれる、優しい、良き男だったのです。そのことにホントうるうるしちゃいましたよ…美しい幕切れでした。

 というわけで男役たちは楽しそうに悪役を演じ、娘役たちには出番が多く、もちろん組子フル出場の元気さもあって、充実の作品となっていくのではないでしょうか。新公も楽しみです!


 そしてロマンチック・レビュー第21弾は『ダンディズム!』『ネオ・ダンディズム!』と来た三部作、といったところでしょうか。
 私は、いわゆるロマレビらしいお衣装の色味とかコンセプトとかある種の雰囲気、ムードみたいなものに対して一定の理解は示しているつもりですが、岡田先生の近年の作品を観ると完全新作はちょっと厳しいと感じていて、いいとこどりのコラージュ再演の方がマシだろうと思っていたので、これは大歓迎でした。ふわっとしたコラージュだとまたナゾのツギハギになるんだけど、『ダンディズム!』って枠が今回はあるわけですしね。まあそれでもやっぱりナゾツギハギでしたけどね(^^;)。
 でもいいの、なんてったって初演観てるもん、実況CD愛聴してるもん! 逆に『ネオダン』は観ていないか、印象が薄いかも…てかキャリオカと髭5人衆の「♪ダンディー、それは~」の歌があるだけで、あと「パラディソ」の歌があるだけで、ほぼ別物だしね…? 今回は初演寄りと聞いていたので、ワクテカで臨みました。
 開演前に緞帳が上がらないので、そうだコーラスから始まって幕が開いたら大階段板付き4色4列でハットにカラースーツとジャケット&スカートなんだ…!ともうハクハクとなりましたね。マイ初日はめっちゃお席が良かったこともあって、もうほぼずっとノーオペラで乙女ポーズしてました。胸の高鳴りがホントにヤバかった…! マスクの下では終始ニヤニヤしていました。
 回顧厨ですみません、完全初見の方にはどんな印象だったのかしらん…? でも、お洒落でしたよねえぇ!?
 プロローグ、私はこっとん以外ははることかりんさんを特に愛しているので、青チームにまとまっていてくれて観やすくて嬉しかったです(笑)。てかこの隊形移動! なーつーかーしーいーーー!! そしてギャーちゃんとゴンドラでキター! 赤いスーツのこっちゃんだあぁ!! ええ声で歌う「ザ・ダンディー」、ミキちゃんが入れたのと同じタイミングで入れてくれる「ハァッ!」の掛け声!!!
 そしてジュンちゃん同様ピンクでひっとんキター! ジュンちゃんならではだったあのハイトーンヴォイス、ひっとんも歌えてるじゃんキャー!!
 よく見るとスカート丈が上がっていて、そういえば先日のスカステ放送で久々に映像見たら丈が長くて今見るとダサいな、ホント世につれるなと思っていたんですよね…スカートには今回さらにスリットが入って一段薄い色が覗くようになっていて、お洒落! もちろん全体の色もちょっと渋めになっていて、材質も変わっていて、秋モード? こっくり、かつシックでしたね。
 歌をじっくり聞きたいから手拍子はこっちゃん再登場か全員揃ってミラーボールが回ってからでもいい気がしましたが、まあ手拍子で消される歌声じゃないからいいか(^^;)。
 プロローグから娘役オンリーのダブルトリオがいるのがまたイイ感じでした。スタンドマイクの幻が見えたね…!
 銀橋には全員出してもいい気もしましたが、こっちゃんのみでしたね。まあそれはそれで、かな…はー、大満足(早い)。
 最初の間奏曲は愛ちゃんの「おもい出は薄紫のとばりの向う」で、初出は『ラ・ノスタルジー』とのこと。私は知らない歌でしたが、かつてテルが着た藤色の、こういうタイプのお衣装はなんていうの? コートドレスみたいな…もちろん中はパンツなんだけれど…とにかく夢々しくゴージャスで、たっぷり空間を埋めていて、感無量でした。これでご卒業ではありますが、ホント大スターさんになったよねえ愛ちゃん…!
 次が新場面「ミッション」。いかにも謝先生らしい、レジスタンスみたいなモチーフに見えるダンス場面で、こっちゃんの歌もいいしみんなの踊りも素晴らしいけれど、ダンディズムとは遠い価値観の場面のような気も…?
 再び間奏曲、娘役ちゃん8人の「ビューティフル・ラブ」。私は歌は知っていました。シトラスっぽい大きなお帽子がカワイイ。くらっちやあまねを見ていましたが、紅咲梨乃ちゃんも可愛いな!
 そしてキター! 8分の中詰め「キャリオカ」です。最近の中詰めの定番っぽいスターの顔見せ銀橋渡りなんかはない、優雅なダンスとフォーメーション総力戦の名場面です。
 まずはこっちゃん、階段の最後の二段ほどを飛び降りる振りを踏襲してくれて嬉しい! タップ、というほどでもないか、足音響かせるところ? 大好き! そして6人口、さすがあかちゃんが素敵だわかりんさんはちょっと頼りない踊りな気がするわがんばれ! そしてピンクのドレスの娘役さんたちがズラリ、そこにブルーのドレスのはることくらっちカーワーイーイー! 愛ちゃんせおっちも加わって、ダブルデュエダン、そして特に誰も乗っていないセリが上がり(笑)、できたアーチの奥から男女がしずしずと進み出る…! 奥にこっとん、掛け声で拍手!なんだけどセリの奥すぎてライトが当たっていないのでここはちょっとタイミングを再考した方がいいかも。そしてひっとんのドレスは裾にフワフワのついたベビーピンクなんだけれど、白か初演みたいな朱色、赤がいいんじゃないかなー…
 ここでも娘役ちゃんオンリーのダブルトリオがいてとても良き。はー、幸せ!
 続いて「ゴールデン・デイズ」、『シトラス』とかでもありましたっけ? こういう士官と令嬢場面も定番ですね。まあ愛ちゃんとくらっちの役名は「プリンス」「プリンセス」だけど。てかこれまたテルのお衣装かな?な白の軍服を着た愛ちゃんの端正なことよ! ずっとやりたがっていた『うたかた』のルドルフ、もうコレで叶ったことにしていいんじゃない?というまばゆいばかりのノーブルさ…! でもあとから加わったかりんさん士官と水乃ゆりちゃんカップルばかりをついガン見…すんません。でも愛ちゃんを見るかりんさんが本当に嬉しそうで輝いていて、胸が痛くなりましたよ…
 そしてまたまたキター!「ハード・ボイルド」。リカチャーだった、せおっちとあかちゃんのタンゴから。タンゴの女はおとねちゃんとあんるちゃん、カンペキです。
 そしてこっちゃんキター! ミキちゃんのナゾのサスペンダー芸はナシ(笑)。てか声がいい、歌がうめぇ…! 男たちはA以外ストライプのスーツじゃなくなっちゃっててちょっと残念でしたが、いいのあかちゃんの腰つきしか目に入らないから…! でもこっちゃんが加わって踊り出すとホントひときわ鮮やかなんだよすげーなオイ! ああ、あのかっちょいい振りがまんま、しかしややスタイリッシュに…! はーたまらん!!
 さらにロケット、これも初演仕様で赤いダービーハットに金のジャケット。でも初演は前を留めていて中はまさか裸か!?みたいなエロスがありましたが今回は燕尾ふうで前が開いてて中のダルマがちゃんと見えて、健全…(笑)中高で男役陣には圧がありましたね。
 そこからの赤いラテンなお衣装にターバンでの「テンプテーション」で、おおおなんかまた混ぜるなキケンな感じ…? ここでデュエダン入れたりみんなで銀橋行ったりを入れるの、ちょっとなんかヘンな気もしました…まあプレ・フィナーレみたいなものなのかな…?
 最後の間奏曲はせおっちの「ラ・パッション」、これまた私は曲しか知りませんでしたが、お衣装はなんか不思議でしたね…? 何故、緑…初演がかりんちょさん雪組だったから…??
 そしてやっと『ネオダン』から、「アシナヨ」。ニュアンスの違う青のお衣装のトップトリオが大階段で歌い踊る…愛ちゃんには惜別の、美しい場面でした。こっとんは『ロミジュリ』フィナーレのデュエダンみたいな超倍速ダンスバトルももちろんこなすんだけれど、こういうたっぷりした振りも本当に上手くて絶品ですね。2回後ろに飛ぶようなステップの、本当に軽やかで美しいことよ…!
 エトワールはくらっち、以下小桜ちゃんとかりんさん、あかぴー、肩ショール羽のせおっち、大羽根の愛ちゃん、大羽根のひっとん、ナイアガラはないもののなんか後ろが三重になっている3D大羽根のこっちゃん! そして何故かここで初めて歌われる主題歌、何故かメロウなメロディー…組子は白燕尾と白いドレスでシャンシャンがピンクのブーケで、新郎新婦のようでした。はー、癒やされた…!
 こっちゃんのシャープさと愛ちゃんのノーブルさの対比が良く聞いた、おもしろいバランスのレビューだと思います。ちょっとまったり感じるお若いファンもいるかもな、とも思わなくもないですが、愛される作品になるといいなあと思います。繰り返しますが私は満足です。


 いい演目だと日帰りダブルでもキツいとも思わない、幸せなことですね…!
 そして東京ではかのちゃんハピバ祭りだったとか。良きかな良きかな!!
 では、おやすみなさいませ。




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