駒子の備忘録

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『天河』原作&「歌劇」座談会の予習しました! ~澄輝日記9.1

2018年03月05日 | 澄輝日記
 次回宙組大劇場公演『天は赤い河のほとり/シトラスの風-Sunrise-』の、お芝居の原作コミックスを再読しました。ちなみに読んだのは文庫版全16巻で、もともとの新書版全28巻は今は電子版でのみ流通していて、あとはレンタルコミックとか漫画喫茶とかにあるのみなのかな?
 さらにちなみに、私の少女漫画雑誌購入遍歴は「りぼん」(集英社)から「LaLa」(白泉社)、さらに「Winngs」(新書館)へ、というものでしたので、「別冊少女コミック」(現「Betsucomi」)の渡辺多恵子とか吉田秋生のコミックスは買っていたのですが雑誌としては読んだことがなく、「少女コミック」(現「Sho-Comi」)も素通りで来ました。
 でものちに主に仕事で読んで思ったのですが、たとえば少女漫画評論っていわゆる24年組の文学性について語られるものがせいぜいなんだけれど、このあたりのたとえば北川みゆき、すぎ恵美子、新條まゆ、水波風南、池山田剛の革新性についてはもっと語られてもいいと思うし(個人的に渡瀬悠宇はまた違う枠組みかなと思っています。それで言うと篠原千絵も)、一過性のジャンルとして見過ごされがちだけれどある時期の女子中高生の心をつかんで離さない作品群の影響力つにいてはもっと研究されていいのではないかと個人的には思っています。売れた部数だけで言えば少女漫画最大のタイトルっておそらく『花より男子』なんじゃないかと思うんだけど(巻数も長いし)、このあたりについてもきちんと考察されていないしまして正当に評価されていない気がするんですよね。
 でもそうした世間的な評価とは別に、多くの女子の心に残っている作品というものは確かにあって、『天河』もそうした一作だと思います。そしてこの作家がすごいのは、「イヤやはり『闇のパープル・アイ』だろう」「イヤ『海の闇、月の影』だろう」というオールド・ファンも今なお多いこと、そして最新作『夢の雫、黄金の鳥籠』に至るまでほぼ外れがなく、常に新規読者を獲得し続けているということです。こうした息の長い少女漫画家さんは今の時代に何人かいますが、この人はある種独特な存在かと思います。
 個人的に言えば『天河』は、たとえば自分が幼い日に出会った『ポーの一族』なんかとはやはり思い入れが違うし、特に好きなタイプの作品ではありません。月2回刊誌の連載として毎回おもしろく読ませることに特化したタイプの作品でもあるし、いわゆる逆ハーレムという少女ドリームあるあるの展開を見せつつも本質的には作家の興味や萌えはラブにはなくてむしろストーリーテリングだったりスペクタクルな方にあるので、テイストとしてはよほど少年漫画に近いし、そこが私にはいかにも大味に思えるからです。個人的に萌えキャラも特にいないしなー、強いて言えばルサファ?
 漫画として、たとえばこれは舞台では表現が変わってしまったところですが、『ポーの一族』で幼いエドガーが出会ったばかりのシーラに心惹かれて、けれど彼女が男爵と結婚するというのを聞いて「ああ…/ああそう…/……そうなの」となるくだりがあるのですが(ちなみに『小鳥の巣』での「失恋するまでの時間ときたら…/…一秒とかかんないこと」も素晴らしい!)、『天河』はそれを「あたしが側室っていうのは表向きだけ/そうよ それだけの関係よ/なのにどうしてこんなに胸が痛いの!?」ってネームを書いちゃう漫画なのです。しかも1コマでやる。そういうところが、私個人としては好みの漫画ではない点のひとつなのです。
 でも、今回改めて配役を念頭に再読してみれば、それはそれでおもしろくワクワク読んじゃったワケです。今回はそんなお話です。
 そうだ、タイムスリップものということで漫画にくわしくない人がよく「『王家の紋章』みたいな?」とか言いますが、これまた全然タイプの違う作品です。『王家』は偉大なるグルグル漫画で、私はもう作者逝去により未完、まで描き続けてくれればそれでいいとすら思っている作品なのですが(その対極が『ガラスの仮面』。作家が死ぬ前に絶対に完結させてほしい!)、こちらのヒロインはけっこう頻繁に現代に戻ってくるしそれがミソでもあるし、完結しなくていいと言っておいてアレなんですが完結するとしたら現代に戻って終わるべきだと私は考えているからです。キャロルの兄がメンフィスとそっくりだというギミックはなんらか回収されるべきだと私は思っているので、生まれ変わりオチでもなんでもいいから、現代で結ばれてハッピーエンド、となるべきだろうと思っているのです。
 けれど『天河』では、ユーリは結局一度も元の世界には戻りません。物語中盤で戻らないことを自ら決意し、「わたしの生きる天はここにあった/いつかこの赤い土に還ろう/わたしの生きる天は この赤い河のほとり/そしてこの赤い大地!!」と宣言して突き進み、そのとおりに終わる物語です。それがタイトルになっている作品なのです。ヒロインがタイムスリップしてオリエントだのエジプトだのが舞台でヒーローが近隣諸国としょっちゅう戦争していてそれが恋のライバルでもあって…という構造は同じだとしても、本質的な部分が大きく違うと思うし、少女漫画として言えばラブに対するスタンスもかなり違うので、簡単に混同されたくないな、とこの話になるたび私はわりといちいち青筋立てて説明するのでした。ファンか!(笑)

 では、配役に関しての感想を。
 原作漫画の主人公はユーリですが、もちろん宝塚歌劇ではカイルを主役にしてきます。ヒッタイト帝国の第三皇子にして皇太子、カイルをゆりかちゃん。
 漫画はユーリがあれこれがんばって活躍する形になっているので、カイルの見せ場をきちんと作るのは意外に大変かもしれませんが、なーこたんがちゃんとがんばってくれることでしょう。何よりゆりかちゃんのニンとして、バーンと王子としてカッコよく存在していておいしいとこだけさらっていけばいいと思うので、なんの心配もしていません。ユーリとの楽しいラブコメパートも期待しています。ムリに脱がなくていいからね(笑)。
 ヒロインは現代日本の女子中学生で、皇妃(のちに皇太后)ナキアの魔術で古代ヒッタイトに呼び寄せられてしまう鈴木夕梨、ことユーリ。宝塚歌劇の娘役らしい「完璧な可憐な女の子」というタイプではなく、おてんばでおっちょこちょいででも正義感が強くて着飾ることは苦手で…というタイプのキャラクター。まどかにゃんは見た目は可愛らしいけど強い女の子がハマるタイプだと思うので、これまたぴったりっぽそうですね。
 特に厳密ではないけれど、女子高生にして年齢は16歳か18歳くらいまで上げてくるかもしれません。まあそれでも原作にある妊娠・流産ネタは入れないとは思うけど。
 彼女はもちろん最初は混乱し困惑し日本に帰りたがるわけですが、カイルとナキアの争いに巻き込まれていくうちにいろいろあって(笑)カイルとの間に愛が芽生え、帰らないことを決意し、皇帝として立つカイルに並び立つ正妃タワナアンナになって完、というのがおおまかなお話の流れなので、あとはなーこたんが上手くエピソードを取捨選択して、生徒たちを生かしつつ山あり谷ありのストーリーに仕立て上げてくれることでしょう。「歌劇」の座談会などによれば、カイルが新たな国を作ろうとするところを、ゆりかちゃんが新たな組を作っていくことにかけようしているようです。楽しみですね!
 新生宙組の新二番手スター、キキちゃんはヒッタイトの敵国エジプトの将軍ラムセス役。王様や王子様ではないところがミソで、現場のやり手として一見チャラいようでやるときはやる実力派、というキャラクターですね。ユーリを気に入ってちょっかいをかけるので、三角関係要素も当然あります。こちらも楽しみ!
 私はキキちゃんにはノー興味なのですが(と言ってのけた生徒さんにのちに惹かれることも多いのだからやめろと思いつつ、防御線のように言わずにはいられませんすみません)、ゆりかちゃんとの並びはハマっていていいですよね。歌もいいしね、新戦力として頼もしいです。
 三番手の愛ちゃんはヒッタイトの隣国ミタンニの王太子、「黒太子」の通り名もあるマッティワザ。戦争したり協定を結んだりいろいろあるのでどうするのかな?という印象ですが、立ち回りがあるようなのでやはりカイルと戦うのかな? 原作では壮年にも見えますが、若く作ってくるのでしょうね。そして愛ちゃんは大の原作ファンだそうな! スーパーバイザーとしても活躍していただきたいです。
 四番手(ともはや言えるでしょう)のずんちゃんはカイルの弟ザナンザ。腹違いですが一緒に育った仲良しで腹心、カイルより優しくてマイルドなイメージのキャラクターですね。これまたユーリに惹かれるわけで、こちらも楽しみです。先日「Sho-Comi」に掲載された久々の番外編はザナンザのエピソードでした。

 カイルを廃し、自分が産んだ息子を帝位につけようとする皇妃ナキアがせーこちゃん。なーこたんの萌えキャラだそうです(笑)。彼女に仕えいろいろ暗躍する神官ウルヒがマギー。これが退団公演ですね、おもしろいポジションになることでしょう。ナキアとウルヒには子役も置かれているので、ふたりの幼き日の出会いのエピソードも語られるのでしょうね。
 カイルの側近では、従者キックリがりんきら、書記官で乳兄弟のイル・バーニがさお。ルサファりく、カッシュそら、ミッタンナムワあーちゃん、シュバスもえこあたりとわちゃわちゃと、出番はまあまああるけどグルーブ芝居、となりそうな気もします。キックリは語り部役にも回るようですね。
 ユーリの侍女になるのがハディじゅりちゃん、リュイ水音志保ちゃん、シャラ花宮沙羅ちゃん。じゅりちゃんは新公ヒロインですね、こちらも楽しみ!
 カイルの兄弟皇子たちがモンチ、かなこ、まりな。ユーリの現代での彼氏がわんた、妹が天瀬はつひちゃんですが、さてどこまで出番があるかな…?

 そして我らがあっきー(笑)は研13にしてなんと初の女役、愛ちゃんマッティワザの姉にしてエジプト皇太后ネフェルティティです。その子役が夢白あやちゃんで、こってぃ扮する少年時代のマッティワザと回想場面をやるのでしょうね。
 集合日のお稽古出待ちに行ったお友達によれば中の人は女役にプンスコだったそうですが(笑)、その後ご機嫌は直ったのかしら…少なくとも「歌劇」の「えと文」(今回も絵はないが)最新回がほぼ8割がた女役話だったので、もはや前向きに切り替えたのだろうと思っています。というか周りの男役がみんな女役経験者でお稽古スカートを貸してくれるってのがまず可愛いし、今回のまかあきエピソードもホントいいと思いませんか奥さん!?(誰?)「綺麗な入れ方はゆりかちゃんに違いない」って…! てかすっしぃや同期のりんきら、まっぶーはもちろん、せーこきゃのんエビちゃんのお姉さま方も「ゆりか」と呼び捨てにしてそうなのにあっきーは絶対に「ゆりかちゃん」ですよね…! 萌える…!!(笑)
 なーこたんは「顔で選んだ」と言ったとか言わないとかって話ですが、座談会では「存在感の違いを出すにはやはり男役さんが、というか、澄輝さんがいいなと思って」「スラッとした威圧感みたいなものがうまく出るかなと思う」と語ってくださっているので、もはや期待するしかありません。全員登場のプロローグ以外は二場面くらいしかもしかしたら出番がないんだとしても、ワンポイントでも印象的な役にはなりそうですし、しなきゃダメ! カイルの近習のグループ芝居にいるよりよかった、と思わせてほしいです。そういうのはもうけっこうやってきたからね。念願の悪役への足がかりとして、まずは美しい悪女を演じてみせて、爪痕を残していただきたいです!!
 愛ちゃんよりはまどかにゃんとの絡みがあるのかな?という印象でもあり、私は本当に本当に楽しみにしています。綺麗なのはわかっていますが不慣れなことは心配なので、エジプト先輩のエビちゃんにメイクも教わって、なんとしてもがんばっていただきたい! お衣装も楽しみです!!
 ちなみに今に伝わるネフェルティティの彫像を作る彫刻家トトメス役がまっぷーなので、このエピソードもちらりとでも入るのでしょう。名前の意味が「やってきた美女」でしたっけ? ひゃータイヘン!
 新公は誰がやるのかな、普通に娘役さんだろうけど。そのあたりも楽しみです!

 ところで全然関係ないけど、「えと文」の写真で持っている半紙に書かれた字、こういうときにもんがまえが略字ってあんまないだろう…(^^;)
 まあでも、毎回真面目にギッシリ書いちゃったんだろうなってのが愛しい連載でした。トップ娘役さん人とゆりちゃん、あっきーって人選は謎でしたが、姫枠ってことかな?(^^;)
 初日まで二週間を切りました。なーこたんも台湾公演で忙しいのでしょうが、お稽古の指導よろしくお願いいたします。楽しみしかない!!!





 

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2 コメント

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Unknown (あー)
2018-03-10 09:27:56
こんにちは。いつも楽しく拝読しています。

『天河』いよいよ来週初日ですね。
原作は未読です。文庫でも16巻の長編が1時間半の舞台作品になるのならば、そのストーリーを純粋に楽しもうかと思いつつも少し不安でしたので、こちらの記事で登場人物の把握をさせて頂きました。トリセツを読むより口頭でポイント説明をして頂くとすぐ理解出来るように、相関図がスッと頭に入ってイメージも膨らみました。生徒の名前や愛称で繋がっているので本当に解り易かったです。少女漫画の説明も興味深かったです。

お稽古スカートのくだりは本当に微笑ましいですよね。エジプトが似合うあっきーさんの女役が本当に楽しみです。
お役に立てたなら嬉しいです! (あーさんへ)
2018-03-13 16:02:15
自分自身の頭の整理のためだけに書いたというか、
このあたりの生徒と役のキャラ、設定さえ押さえておけば
ストーリーも舞台全体も把握しやすいかな、と思って書いたのですが、
お役に立ったならよかったです!
原作漫画は、長いけれど大味でもあるので(^^;)、その気になったらわりとすぐ読めるかもしれませんが、
舞台では絶対にそのままやるわけはないですもんね。
ともあれ初日が楽しみです、その日曜夜には語っていると思います。
よかったらまたいらしてくださいませ!

●駒子●

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