駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

宝塚歌劇雪組『仮面のロマネスク/Gato Bonito!!』

2024年05月02日 | 観劇記/タイトルか行
 梅田芸術劇場メインホール、2024年4月12日15時(初日)。
 ウェスタ川越大ホール、4月27日15時。

 1830年、ナポレオン失脚後、再び王政が復活したフランス・パリ。貴族たちは目まぐるしく変動する政情に不安を抱きつつも、しばしの安逸を貪っていた。そんな貴族たちが作り上げる社交界に、ひときわ注目を集める美貌の貴公子がいた。ジャン・ピエール・ヴァルモン子爵(朝美絢)…その類い希なる才覚で、零落した家名を再興した青年貴族である。婦人たちとの艶聞が絶えないヴァルモンだったが、かつての恋人メルトゥイユ侯爵夫人(夢白あや)だけは特別な存在だった。若くして未亡人となったメルトゥイユは、高嶺の花として一目置かれる存在であり、ヴァルモンと対等に渡り合える唯一の女性だった。心に仮面をつけ、虚実取り混ぜた社交界を華麗に生き抜いてきたふたりは、あるとき気まぐれに恋のゲームを始める…
 脚本/柴田侑宏、演出/中村暁、作曲・編曲/寺田瀧雄、作曲・編曲・録音音楽指揮/吉田優子。ラクロの『危険な関係』を舞台化し、1997年初演。

 花全ツのみりおとゆきちゃん版はこちら、みりおとかのちゃん版はこちら、アホほど通った宙中日ゆひすみ版はこちら。初演も観ていますが、記録がありません。
 大空さんの意外と生真面目で不器用ですらあったヴァルモン像が私には染みついているので、発声のせいなのか私には常に芝居がかって見えるあーさのヴァルモンはだいぶ役作りの方向性が違うようにも思えましたが、ヴァルモン像としてはこれはこれでアリなんだろうな、とも思えたのでなかなかおもしろく観ました。なんせ夢白ちゃゃんとの美貌での殴り合いみたいなのがおもしろくて、ある意味この作品の真骨頂なのかもしれないしな…とも思えました。
 ただ、久々に観ると、なんとも複雑で濃厚な物語で、展開も早く場面数も多い慌ただしい舞台でもあり、全ツ向きではないのでは…とも感じなくもなかったです。別にハッピーミュージカルでなくてもいいけど(この作品だってハッピーエンドと言えなくもないのですし)、もうちょっとわかりやすくぱーっとした作品の方がウケるんじゃないのかねえ、とかね…まあでも豪華なドレスや軍服やフロックコートが観られるんだから、それだけでも十分楽しいのかもしれません。そうそう、『翼ある人びと』であっきーが着ていた黒基調のチェックのフロックコートを久々に観て、テンション上がりました。あと『バレンシアの熱い花』でまどか、そのあと乙華ちゃんもかな?が着ていたマルガリータのピンクのドレスも華純ちゃんが着ていて胸アツ…!
 ドレスと言えばなんでも着こなす夢白ちゃんはホント絶品で、さらに痩せたようでもあるのはやや心配ですが、研ぎ澄まされた美貌と華やかさとプライドの高さがメルトゥイユにぴったりで、素晴らしかったです。歌はもう少し聞かせられるようになるとなおいいんでしょうけれどね…未だ発表がありませんが、次期はここがトップコンビとなるんでしょうから、楽しみです。こういう濃厚なドラマでもいいし、すこーんとアッタマ悪いラブコメとかもやってほしいなー。あ、『銀の狼』とかは? ミレイユ似合うでしょ絶対…! 夢が広がりますね。その前にマリー・アントワネットですが…なんならジャンヌが観たかったよね(笑)。脚本が改善されていることを本当に本当に祈っています…!
 あがちんはダンスニー(縣千)。とてもよかったです。お芝居の中での位置や意味がわかっている、絶妙な塩梅で存在するダンスニーになっていたと思いました。もっとハメ外す芝居をしそうで、意外にちゃんと押さえてくるんですよねあがちんって…感心しました。
 一方、ともかちゃんのトゥールベル夫人(希良々うみ)は私にはやや期待外れでした…この役は一見地味で貞節なだけのつまらない女性に見えて、実は押し隠された色気が漂う、事実未だ本人も知らない情熱をその身の億に隠した女性で、そして実はちゃんと美人…という設定のキャラクターだと私は解釈しているのですが、ともかはなんか子供っぽいというか、芝居がとても平板に思えちゃったんですよね…あとやはり美人というには面長すぎる気もしました。まあこれは好みの問題もあるでしょうけれど…でもトゥールベルがヴァルモンに「あちらへ言ってください」と言いつつしがみついちゃうくだり、私が観たときは二回とも客席からなんとも言いがたい笑いが起きていて…いや、ある意味で笑っちゃうようなくだりではあるとも思うんだけれど、そういうふうに笑うところではないような…と私はなんかすごく居心地が悪かったので、やはりこの芝居が、作品自体がかなり難しいものなのではあるまいか、と改めて考えさせられちゃったんですよね…うぅーむ。
 さんちゃんのジェルクール伯爵(咲城けい)はとても健闘していたと思いました。『ボニクラ』以降、ちょっと芝居が足りないんだよなー、とずっと心配してきましたが、じりじりと努力を重ねている様子が見えるのも事実で、初ヒゲだったそうですしだいぶ背伸びしていたことでしょうが、ちゃんと年が上の、偉そうな、嫌味ったらしいおっさんに作れていて好感を持ちました。
 セシル(華純沙那)は華純ちゃん。彼女にトゥールベルをやらせてもよかったのでは、と思わなくもないけどなー…何故こうも段階を踏ませたがるのか? それはともかく、決してカマトトではないいじらしい少女を上手く演じていて、試練を超えて大人になって、ちゃんと帰還するダンスニーとの幸せな未来を願えそうな役作りで、これも好感を持ちました。
 しかしこの物語はコンプラがどうとかいうものではなくて、この時代のこの社会階級の人々にとって貞操とか尊厳とか信心とかは今の社会とは違うところにあるものなので、主人公がレイプ犯の物語を上演するな、というようなことには当たらないと私は思うのですが、だからといってこのお話の展開に不愉快にならないかと言われるとそれはまた別のことでもあるので、なかなか難しいものでもあるよな、とも思いました。ただ、同じ仮面をつけての戯れといっても、メルトゥイユがギリギリまでヴァルモンを拒もうとするのは、結局真実の恋だろうと男と女は対等ではなく、女の方に失うものが多かったりその他のリスクが大きかったりするので、そもそもそのシステム、状態自体に彼女はノンと言いたかったんだろうなと思うと、それは現代にも通じるなお是正されていない問題なわけで、やはり共感しましたし今なお上演される意義があるのでは…とも考えました。まあでも、同じテーマやメッセージで女性を不快にさせない展開の新しい物語を創作すればいいだけのことなので、そこは今なお生きて執筆している作家に期待するしかない、ということなのかもしれません。

 他に注目したのは、まずはブランシャール夫人(愛羽あやね)ですよ! 上級生娘役がローズモンド夫人(杏野このみ)のあんこちゃんくらいしかいないのでどうするんだろうと思っていたら、まさかの新公学年くらいじゃありませんでしたっけ? でもこれがしっとりおちついたいい声を作ってしっかり台詞をしゃべっていて、演技もいい! 驚きました。
 ソフィ(夢陽まり)もすごく良くて、朝の公園場面とかホントこの役が良くないと成立しないと私は思っているんですがホントちゃんとしてて、でもテチエンヌ夫人と二役までしていてこれもすごく良くて、ホント感心しました。新公でもここまで役が回っていないと思うので、ホントたいしたものだし生徒にはいい経験になるし、楽しいことでしょう!
 ジュリー(音綺みあ)もしっかりしていたし可愛かったし、ラストのカゲソロは絶品でした。我らがすわんはリーザ(麻花すわん)でこれもよかったし、貴族女でも可愛くて目立っていました。アゾラン(聖海由侑)はせーみくんで、これも達者でした。しかし彼がジュリーとリーザでまとめて…みたくニヤつく台詞はカットでしたね、これがコンプラ違反か?(笑)
 ジェルクールの部下は風立にきくんと水月胡蝶くん、私は今まで把握できていなかったくらいの下級生かと思いますが、しかし台詞がしっかりしていました。
 ロベール(真那春人)はまなはる、ヴィクトワール(千早真央)はこれで退団の千早ちゃん、もったいない…手堅かったです。法院長(透真かずき)はりーしゃ、ルブラン司祭(桜路薫)はおーじくん、これも手堅い。マリナ(紗香にいな)も可愛かったです。ベルロッシュ(麻斗海伶)はぴんとこなかったかな…ただ花束持って出てきただけで「ああ、大ちゃんの役…!」ってなりましたよね(笑)。召使い3人組はまだまだ下級生感があったかな、でも各地のアドリブをやってがんばっていてよかったです。

 ところで大ラスってふたりがくるくる踊り回る中、幕…じゃありませんでしたっけ? 今回はメルトゥイユを抱き寄せたヴァルモンの顔を見せて幕…でしたが…うぅーむくるくる版の方が良くないか…? ぱっと出してきて確かめられる映像の手持ちがなく、記憶違いだったらすみません。


 ショー・パッショナブルは作・演出藤井大介。
 初演感想はこちら
 いい感じに忘れて観ましたが(笑)、楽しかったー! やっぱダイスケのショーはいいな、天才だな!と思いました。アル中なら早くちゃんと治療して戻ってきてください、健康第一です。待ってます!
 冒頭のメニナスは細面が音綺みあちゃん、丸顔が桜菜みのりちゃん。可愛い! 本公演ではまだ識別が厳しいかもしれませんが、覚えていきたい!
 プロローグはアゲアゲで楽しく、続くピアノの場面はあがちんとすわんに。ピンクのお衣装で跳ね回るすわん可愛いよすわん! 背中と脚がもう一段階痩せるとベストだけど…ふたりとも素晴らしいダンサーっぷりを堪能させてくれました。ここがロケットになる変わった構成ですよね。
 タンゴ場面はよくあるタイプのものだったけど、ボンベイが色っぽくてサイコーでした。そして中詰めのとっぱしになるのかな?なさんちゃんメインクーンがはっちゃけててよかった! オラオラできてた、ドカーンとしてた! いいよいいよ! しかしここのメインクーン女のお衣装のエッチさはホントどぎまぎしますよね…! でも客席降りもあるからお尻ガン見ですよすみません…ここのフロートパレードみたいな中詰めが大好き! ハバナの夢白ちゃんもサイコー!!
 昔のショーの再演らしいシンガプーラはマイク持ったともかの熱唱でまなはると千早ちゃんがバリバリ踊る場面で、とても良き。こんな餞別もらえること、あまりないよー! からの「黒猫のタンゴ」場面も毎回楽しかったです。
 サバンナあがちんも素晴らしかったなー! ウェストが絞れていてシルエットが美しいのもよかった。ここの女装猫(オイ)は本公演では複数人いたかと思いますが、ひとりで保つよ、あーさとの映りも良くてホントよかったです!
 そしてりーしゃが歌い、さんちゃんと華純ちゃんで踊る場面も美しくてよかった…からのベンガルもよくある場面だけど、見応えありました。
 エトワールはともか、良き。
 客席降りも客席登場もあってアドリブトークもあって、これは楽しい全ツ興行になっていたかと思います。あーさも真ん中ホント問題なくて、次代も楽しみになりました。連休の愛知まで、どうぞご安全に…!










コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする