駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

黒娜さかき『青春♂ソバット』(小学館IKKI COMIX全4巻)再読

2014年09月06日 | 愛蔵コミック・コラム/著者名か行
 清く正しい童貞・有田青年と深く濃ゆ~いゲイ・白洲くんの嬉し恥ずかし青春譜。

 完結巻購入時の感想はこちら。当時はなんかぴんと来ないまま、それでも愛蔵していたんですね。
 て、久々に再読したのですが、なんかすごく萌えました。そしてするりとハマった。
 そして「私が読みたいユリは、このユリ版だ!」とひらめきました(笑)。

 有田はノンケです。白洲にキスされたときも、それを加藤さんに見られて、白洲のことを好きらしい加藤さんの心情を思いやるような、優しく気のいい好青年です。
 好青年だから、白洲がゲイだと知っても、まして自分を口説いたんだと理解しても、引いたり気持ち悪いとか思ったりしない。それはそれとして、友達として普通につきあう分にはいいヤツじゃん、とか思ってしまえる心のしなやかさを持っている。
 でも白洲はゲイなので、口説いてフラれたのなら有田と普通の友達づきあいをする気はない。だから距離を置こうとする。なのに有田はあくまで友達として懐いてくる。
 白洲はゲイで有田のことが本当に好きだから、ノンケの有田を尊重してただの友達でいようとする。
 有田はノンケだけど白洲のことが本当に好きだから、そして童貞で性的なことに興味があるから、キスくらいならいいよとか触るだけならいいよとか言ってすり寄っていく。
 白洲には今もこれまでも彼氏がいたしいるし性体験はある。ネコだが正式(?)な挿入はされたことがないようで、だから有田と性的にじゃれてもそれはほとんどマスターベーションの延長に過ぎないようにも見える。
 同性同士の挿入のない性行為に私があいまいなロマンを感じるのはまさにこの点なんですね。女性同士だとどちらもペニスを持っていないからそもそも挿入・被挿入(?)ができないわけですが、男性同士だとできてしまう。でも私はホントのところはわからないけれど男性にとって被挿入というのはかなりハードルが高いのではないかと思っていて、ノンケがあっさりここを乗り越えちゃう展開のBLってちょっと嘘くさいのではないかと思っているのです。ゲイでもみんながみんな挿入行為をしているわけではないのではないかとも思っています。
 だからって男女の挿入行為だけがセックスだ、と言いたいわけではないのですが、しかしそういう凸凹感(?)がない場合、他人なんだけど形としてはあくまで自分と同じタイプの肉体を持った相手を愛撫する場合、それってすごくハードルが低いと言うか、ちょっとうっかりしたら愛とかなんとかとかがなくても乗り越えちゃえそうな、ホント自慰の延長でできちゃえそうな行為に私には思えて、そのあいまいさ、はかなさ、あやうさ、いい加減さに何故かすごくときめくのですよ。ロマンを感じると言うか、興味があると言うか。愛ではなく好奇心や単なる性欲だけでやってしまいそうな。
 でも自慰って当然自分のことが好きで自分を喜ばせるためにするわけで、自分と同じくらい相手を好きじゃないと自慰の延長のノリで相手の肉体に手を出したりしないだろうし、でも自慰ってする自分が楽しいからするようなところもあるから相手は自分じゃなくてもいいというか、相手が自分じゃなかったら自慰じゃないんだけど、でも要するに行為としてはほぼ同じことをするだけだったら自分と同じくらい好きな相手にするんでも同じじゃん、というか、でもそれって要するに挿入がないだけで立派なセックスだよね、とか。
 でも自分と同じくらい相手のことを好き、なんてあるかな、それってちょっとすごいよね、それって立派な愛だよね、と思う一方で、好きなんて気持ちはとてもあいまいであやういものだし…とかとかいろいろ考えてしまうのです。
 で、この有田と白洲は、有田はあいかわらずノンケのまま、白洲はあいかわらずゲイでネコのままで、友達とも恋人ともセフレともカテゴライズできないまま、あるいはしないまま、でもお互い他に誰かを作ることもなく、10年後も、20年後も、つきあっていてお互いの誕生日を祝ったりなんかしている。
 そういうことが、いかにも嘘くさいイージーなBLよりはリアリティがあるような、でも恋愛というか人間関係のあり方としてとてもロマンチックででもファンタジックでもあるような、そんな不思議な感じがして、それで私はこの作品が好きなのでした。
 そして、話が最初に戻りますが、こういうユリ、つまりこれの女性キャラクター同士版を読んでみたいな、と思ったのでした。たとえば私が志村貴子『青い花』に求めて得られなかったと思ったのは、たとえばそういう部分だったのです。
 女の子同士で、友達で、仲良しで。でも一方はストレートで処女で、もう一方はレズビアンで性経験がある。性指向と性経験に差があって、でも同性で好意があって、そうしたらふたりの間に横たわるハードルってけっこう低いんじゃないの?みたいな。でも乗り越えていいの? それって愛? ただの好奇心? 同情? マグロでいるだけなら誰でもできるしね? でもそれでいいの? そんなことがしたかったの? それが欲しかったもの? …みたいな話を、読みたい。ものすごく個人的な嗜好ですみません。
 でもそこに、こんなにも女子が好きなのに(笑)異性にしか性欲が持てず異性としか性経験がない自分にとってのドリームとファンタジーがある気がするんですよねー。
 まあとりあえずユリに関してはジャンルとしてもまだまだ開拓中なのだろうし、実際はかなりニッチな業界なのだろうなとも思うのですがね…まあ要するにまずはもっといろいろ読んでみたいということですかね。
 …ヘンなまとめになってしまった。これは書評じゃないだろう日記だろう。でもまあいいか。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 最相葉月『セラピスト』(新... | トップ | ディナーショーが好きです »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

愛蔵コミック・コラム/著者名か行」カテゴリの最新記事